神地鳴神・怪悪大戦 No.7 決裂と消滅
〖神代時代 列島大陸 雷氷島〗
「お前が北国の〖怪異〗の王 滑瓢か?」
「そういうお前は……神話時代から生きる雷龍殿か。何様だ?」
「列島大陸平和にするべく盟を結びたい。列島大陸が神ではなく、人族や氏族が治める。平和の世になる様に協力してほしいのだ」
「人族や氏族?……その平和の世の中には〖怪異〗は含まれないのか?」
「神代の時代はもうじき終わる。人の時代がやって来る。そんな時、神々(ワレワレ)や怪異達は驚異となる。だから〖天界〗へと移り住み、平和な日々を送る事が……」
「俺達。怪異が平和に暮らす?……グハハハハハ!! 面白い冗談だ。〖七原龍 鳴神〗と言う神は冗談が途方もなく好きらしいな………誰が従うか。〖天界〗なんぞに連れて行きたくば。力づくで従わせ、連れていけ。極悪の七原龍」
「交渉は決裂か……ならば。その言葉に従おう。〖雷雨〗」
「最初からそうしろ。悪行ばかりの七原龍よ。〖氷室〗」
スバンッ!! パキンッ!! バリバリッ!!
それから我と滑瓢は神代から現代に至るまで、幾度となく刃を交え、戦いを繰り広げていった。
▽▽▽▽▽
〖神地 雷鳴 花蕾列島〗
「お隣の大陸からの助っ人さん達はよう。なんつう戦い方をするんだ。なあ、鵺様よう」
「暗黒大陸の『始祖・神集九煌』の神々は、独自の世界を構築出来る。そそんな方々が、列島大陸の濃い〖魔力〗と〖神秘〗を利用したんだ」
「列島大陸は他の大陸の神様達からしたら天国みたいに過ごしやすいからな」
「ああ、〖七原龍〗様達に弾かれた烏合の衆は一部以外は塵芥だったか……だが、〖七終神〗様方の攻撃から残った者達は本物の強者……それがまだ数万残って入るならばこの戦いはどっちに転ぶか分からないな」
「……だな」
蓬莱様と鵺様は小型の鼬と兎になり、俺が被るフードの中でモゾモゾしながら話している。
「戦いが始まってどの位、経った?」
「半日程よ。鳴神とあの灰色髪の怪異さんとの闘いが始まってね」
「……そんな半日で〖怪異〗側がこんなに数を減らすのか?」
「〖暗黒大陸〗の〖七終神〗達は、皆、暴力と悪意の神々だもの。列島大陸のつま弾きの人達になんて負けないわ。それは私もそうなのだけどね……極神魔法 〖極神黒海領域〗」
━━━深海の常闇が広がる。〖極神 レヴィアタン〗を中心に深海の闇が、生き残っていた高位の〖怪異〗達を沈めていく。
「総大将!! 今、助太刀に……」ズズズ……
「海の烏賊に……呑まれ……」トプンッ!
「アマエビ族の私が、こんな意味の分からない闇の海なんかに……」ドボッ!
「………こりゃあ。〖暗黒大陸〗の力を舐めず来たね。西に帰ったら報告しなくてはな。この〖鍛師〗がな」シュンッ!
レヴィアタンによって沈められて行く者達の中で、刀と鎚を持った者が人知れず消えた。怪異だが、怪異では無い何かは大戦のどさくさに自由を得たのだ……
〖雷氷島〗
パキンッ!………バリバリ!!
「グハハハハハ!! 八百万居た〖怪異〗共を屠るとはな。暗黒大陸とやらの神々は〖七原龍〗と違って有能らしいな。鳴神!! 〖氷蝕の帳〗━━〖五の型 氷河嚨〗」
「……全てはお前の思惑通りか? 滑瓢!! 雷龍魔法〖号雷撃〗」
氷室と春雷の爆発を巻き起こしながら、闘いは繰り広げられる。
「……ゴホッ!………これは俺の血か?……これは帝様から賜った法が限界を超えたか……」
(もう。そんなに君は長くは生きられないよ。神代から、ずっと無理な闘いを繰り広げていた代償だね)
(……神話時代を生きた方々は〖延命の法〗があると聞きましたが。それは帝様も出来るのですかな?)
(君……もしかして僕に簡単に協力すると言ったのは、それを知りたかったからかい? でも、あれはただの命の先延ばしに過ぎないよ)
(……良いのです。神代の全盛期の身体で。〖七原龍 鳴神〗と……奴との決着がつけられれば、その為に奴等〖七原龍〗の眷属を葬り挑発もしてきました。後は〖怪異〗の軍勢を率い。奴との長きに渡る優劣に決着を着けるけ、消え去るのみですから)
(それが〖怪異総大将 滑瓢〗の願いかい。その為に列島大陸中の〖怪異〗を利用するとは、面白いね……うん、良いよ。〖延命の法〗は授けよう。後は好きな様に動きなよ。その命が尽きるまでは)
(……最上の感謝を持って。〖神地 鳴神〗を我、亡き後に献上します。帝様)
「………違和感は最初からあった。現代になってからしばらくの期間。姿を消していたお前がいきなり、帝と言う者に付き従い。〖怪異〗達を纏め始めた時からな。とっくに限界だったのか……それなのに何故、神代の頃の様に我と対等に異常に闘えていたかと思えば。神話の秘術か」
「……そうまでして〖七原龍 鳴神〗に勝ちたいと願う。俺を笑うか?」
「笑わん………お前のその執念に感服の念を抱こう……滑瓢」
「そうか。ならば最後に俺の究極の技と相対しろ……〖鳴神〗……〖氷蝕の帳〗━━〖零の型 明鏡止氷〗」
「……受けて立とう。〖怪異の総大将〗よ! 雷龍魔法 原始・回帰〖豪雷龍 鳴神〗」
〖雷氷島〗に極大の氷と極大の雷がぶつかり合い。島を崩壊させていく……神代から始まった神と怪異の全ての因縁を消滅させる様に塵と化していく。
〖鳴神海域〗
「ウハハハハ!! 何だ? もう終わりか? 鳴神。良い運動をさせてもらったぜぇ! じゃあな。また祭の時は喚べよ」シュンッ!
〖蓬莱領〗
「フフフ……これだけの魔力残滓が頂けるとは、素晴らしい! これで数年は食糧不足に困らなくなりましたか。それでは列島大陸の皆、皆様。良い朝明けを……〖極神 レヴィアタン〗様。お気を付けて」シュンッ!
〖落雷桜の花島〗
「ガキィ……総大将……」
「……黙れ。実験体。向かうぞ……〖蝿の苗床〗にな。お前とはこれから長い付き合いになる。素晴らしい改造を施してやろう」シュンッ!
〖鳴神大島〗
「〖七終神〗の皆が帰って行くは」
レヴィアタンはそう告げると四方をぐるっと見渡し始めた。
「帰って行く? 暗黒大陸にか?」
「ええ、ご満悦よ。大量の魔力残滓の獲得、実験物の捕獲、快楽の殺戮を楽しんだんですもの。それに私の方もこれで終わり……」
「こんな馬鹿な……八百万も居た。怪異の軍勢が全滅する何て……」ズズズ……トプンッ……
下の深海の海では、最後の高位の怪異がなす術もなく、叫びながら沈んで行くのが見えた。
ドゴン!!……バリバリ!!
そして、それと入れ替わるかの様に、号雷が俺達の前に鳴り響いた。
「こちら終わった……此度は我を良く助けに来てくれた。神成と…極神よ……」
「鳴神……」
見つめ合う。鳴神様とレヴィアタン……この見つめ合いはそういう事だよな。
「ああ……感謝する。ただ、今は〖神々の黄昏〗の驚異を、この列島大陸から排除するの優先する。神成……お前の転移魔法でこのまま〖神地 天照〗へと、我と極神を飛ばしてくれぬか?」
「ええ、恩人の貴方の頼みなら……転移魔法〖離究〗」シュンッ!
「……それじゃあ。早く〖帝都〗と言う場所を沈めないとね」シュンッ!
「滑瓢……この我の神地で安らかに眠れ……自身の欲望に素直だった者よ……好敵手よ……真にお前は強かったぞ。ヌラリよ……」シュンッ!
神地鳴神・怪悪大戦編
終。