神地鳴神・怪悪大戦 No.6 蝿と蜘蛛 悪魔と木綿
〖怪悪大戦前夜〗
「〖鳴神〗〖青龍〗亡き後は、本島の西の地に〖怪異〗の国を建国するぞ。大蜘蛛、一反木綿よ」
「ガハハハ! それが総大将の…いや我等が〖怪異〗の神代からの願い。明日、叶えましょう。悲願を」
「真に真に同意です。やり遂げましょう。滑瓢様」
「ああ……忠誠高き腹心達よ。明日は鳴神と神獣共に格別なる死を与え、屠ってやれ」
「「御意!!」」
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「……昨夜の総大将との誓い……それが部外者の神共に邪魔され、俺の身体を研究対象にするだと?…ガハハハ!! 笑わせるなよ。部外者共……列島大陸の〖怪異〗を舐めすぎだ!! 蜘蛛操術……〖大蜘蛛 八牛〗」
大蜘蛛の身体が変化する。肥大化していき、身体に植え付けられていた蝿の卵が青色の炎に燃えていく。
「これは?……せっかく植え付けた我が子達が燃えていく?」
「無精卵だろうが……暗黒の大蝿。百八万の〖怪異〗大軍勢が寄せ集めの軍と見誤ったか? 侮り過ぎではないか? その百八万の中にも強者が入る事を教えてやる。蜘蛛操術 〖火蜘蛛の糸〗」
「ギギギギ……」「ギチギチ……」「ギャあああ!!!」
〖列神・ベルゼ〗の配下である蟲達が燃えていく。勿論、ベルゼの配下筆頭である〖ベルゼビュート〗も例外なく燃え、黒焦げと化していく。
「見ろ! 大蜘蛛様が真のお姿で戦い始めたぞ。俺達も応戦だ!」
「おお、突然、沸いて現れた蟲共などに負けるか」
「殺せ。殺せ。同胞達を殺した蟲共を殺せ!!」
「ガハハハ! 俺が少し本気を出せばこんなものだ。部下達も冷静さを取り戻したか。おい。大蝿、さっきは良くも俺の身体に汚いものを植え付けてくれたな」
「ギギギギ……身体が熱い、苦しい……」
「そうか。ならば消し炭になれ、蜘蛛操術〖青火の糸蜘蛛〗」
「ガァァア!!……ベルゼ様!! 申し訳ありま……」シュンッ!
「大蜘蛛が突然、消えた? なんだ? どうなってやがる?」
「大切な駒だから。帰らせた……列島大陸の戦闘レベルを見誤っていたぞ。低級で十分に蹂躙が可能と思っていたが、よもや、返り討ちに合わせるとは……素晴らしい」
〖列神・ベルゼ〗は不気味に微笑んだ。大蜘蛛の奮起により、序盤の劣勢が覆り〖怪異〗達の反撃が始まろうとし、約四十万にも及ぶ総攻撃が開始される直前に、〖列神・ベルゼ〗の喜びが最高潮へと至る。
「貴様か……最初に現れた蟲共の半分は俺が燃やした。後は各個撃破し、俺達、〖怪異〗は別大陸の神を撃ち取ったと世間に知らしめる所だぞ」
「……実験体はお前だけで良い。他は始末しておけば、ディアブロが回収するだろう」
「何? 貴様、この状況で何を言っている……」
「ああ……帰ってからの実験が楽しみだ……〖蝿王死海〗」
大蜘蛛とその配下四十万の〖怪異〗が消える。蟲の……あらゆる非道な蟲の世界に消える……彼等はその世界で〖触餌〗にされ、阿鼻叫喚の叫び声を上げながら、大蜘蛛以外は全て絶命した。
〖落雷桜の花島〗
「真に真に、この悪魔共は……滑瓢様が神代から現代にかけて集めた北の雪国の〖怪異〗達をこれ程に減らしますか」
「フフフ……五十万は魔力残滓にさせて頂きましたね。素晴らしい。魔力の濃度も濃く。これなら〖暗黒大陸〗数年分の食料になりますね」
「真に真に……貴方方は残虐な神だ。大蜘蛛とその配下の気配も消えるとは、後続も含めた百八万の軍勢が、残り三十万にも満たないとは……」
「それも時期に十万を切りますよ。何たって今回の戦いは〖ベルセルク〗殿が暴れに暴れ、ベルゼ殿も、私もこの遊びを楽しんでおりますからね。最後はレヴィアタン様が何か大きい事をするでしょう。ですから……貴方もそろそろ死んで頂きませんか?」
「馬鹿な質問で……真に真に他大陸の神々は図々しい、絹秘術……〖虚服〗」
灰色の布が〖悪神 ディアブロ〗に向かって行く。だが、それは悪手だった。悪意の塊のディアブロの気持ちを高ぶらせ、高揚させるだけの起爆剤にしかならなかった。
「奇妙な布ですか……フフフ……そうですね。そろそろ、貴方も屠って魔力残滓に……暗黒大陸の糧になってもらいましょうか……悪神魔法〖悪魔〗境界……ようこそ。悪辣で非道な私の世界へ」
「これは……真に真に……不快な世界が広がりますか。滑瓢様。一反木綿は逝きますが、刺し違えでも、不快な世界で悪神に一子報います」ズズズ………
総大将 滑瓢の側近、一反木綿率いる、二十五万の軍勢は、悪辣な世界に閉じ込められた。そして、悪辣な世界に住まう第一級悪魔達と壮絶な戦いを繰り広げられ、全滅した。
〖列神・ベルゼ〗の暴走と〖悪神・ディアブロ〗の高揚により、〖怪異〗の大軍百八万の軍勢は二十八万まで数を急激に減らした。
そして……
「クアアアア!! 殺せ! セルドラ、アガラ、ドラガラ、ハハハハハハ!!」
〖傲神・ベルセルク〗と巨悪族の快楽戦闘により、列島大陸の〖七原龍〗に反旗を翻した〖怪異〗の軍勢は容赦なく倒され。その数を五万以下まで減らすのだった。