神地鳴神・怪悪大戦 No.5 眷属殺し
五年前〖列島大陸 神地 月詠〗
「それは誰の遺体だい?」
「……〖七原龍 月詠〗の眷属だ。寄眼の少年」
「へー、〖神眼〗を見抜くかい。流石、噂通りの怪異の総大将だね。滑瓢君」
「何しに現れた? 冷やかしか?」
「いやいや、ただのスカウトさ。それよりもその〖月詠〗の眷属の遺体はどうするつもりなんだい?」
「凍らせ。砕き、粉微塵よ……〖氷蝕の帳〗……〖破冬〗」
パキッ……パリンッ……
「ハハハ。綺麗なものだね。身体の一部も残さないで終わらせてあげるなんて」
「……得たいもしれない者に遺体を奪われない為の措置だ」
「なんだい? それは僕の事を言っているのかい? 心外だね。それよりもさっき殺した〖月詠〗の眷属を合わせたら、君が殺した〖七原龍〗の眷属は何人目なんだい?」
「〖天照〗〖鳴神〗。〖月詠〗の眷属で三人目だ」
「それは凄い。凄い! それは僕等に取って朗報だよ」
「僕等?……俺はただ〖七原龍〗共と直接やり合うよりも、その眷属を殺した方が効率が良いからやっているだけだ。次は夜一族と決め手いたが、他大陸に逃げられてしまったな」
「それはありがたいね。『始祖・神集九煌』の眷属が育てば〖神ノ使徒〗になるからね。そうなると僕等はとてもやりづらくなっていくしまうんだ」
「先程から、僕等、僕等と……俺は外から来た奴がこの〖列島大陸〗で好き放題やっているのが嫌いでな。天界の使者か分からぬが」
「僕は……●●●●●●だよ。〖怪異〗君」
「?! 何んだと……何故、それを早く言わなかった?」
「君を見定める為かな。仲間として勧誘に値するかのね」
「俺を仲間だと……従わないと言った場合はどうするつもりだ?」
「そう言われた場合は大人しく〖帝都〗に帰るさ。僕もいちいち戦って勝ったら従わるなんてめんどくさい事はしたくないからね」
「〖帝都〗に帰るだと?……確か、帝都は天王洲、瑠々林、神室の氏族達が治めているのではないのか?」
「うん。全員殺したよ」
「……全員殺しただと?」
「人族の有力者はね。今は神性持ちの子や君みたいな強い子達を、列島大陸中からスカウトして天下統一を目指してるってところかな」
「天下統一……」
「そうそう。どうだい? ワクワクするだろう? だから君もその一員になってくれないかい?」
「……その一員になれば雷纏う龍は……神は殺せるだろうか?」
「雷を纏う龍?……ああ、彼の事かい? うん。殺せるよ。だから僕がここに来たんだからね。神話時代が相手なら、同じ神話時代を生きた僕がいればなんとかなるよ」
「そうか。ならば従ってやろう。若き神話の王子殿……」
▼▼▼▼▼
〖神地 雷鳴 花蕾列島〗
ゴロゴロ……ピシャアアア!!!
「我が眷属。〖未雷〗を手にかけた眷属殺し……いや、それだけではない。〖天照〗、〖月詠〗、〖鳴神〗の歴代の眷属を執拗に殺し狙う卑怯者だったお前が、よもや我を直々に殺しに来るとはな」
「執拗になど狙っていない。〖黒龍〗〖緋龍〗の眷属は不在。〖樹龍〗は樹海に上手く隠し、〖青龍〗は天と海底を行き来きし捕まらのだ。それならば馬鹿の一つの覚えの様に〖祭壇〗で、祝詞などを上げている。お前達馬鹿な眷属の三人の内の誰かに狙いを定めるのは、必然だと思わないか?」
滑瓢は鳴神様を挑発するかの様に不適に笑った。どうやらこちらでも魔法大陸の七聖―女神―の神殿の様な場所が存在し、祝詞を上げる儀式があるらしい。
そこを狙って眷属を『始祖・神集九煌』の……〖七原龍〗の眷属を殺そうとする奴がいるなんて初めて知った。
まあ、確かに眷属が〖七原龍〗との修行を経て、強くなる前に殺す事は有効的な手段なんだろう。
現代まで生き残っている神々は絶体的な権力がある反面、『始祖・神集九煌』が、神話、神代の時に行った悪行や暴挙もあると魔法世界の歴史書には記されている。
特に神代時代は〖怪異〗の人達は〖七原龍〗、子神々、人族、神獣、呪詛者に狩られ数を減らしたと、昔、蓬莱様や鵺様は言っていた。
その恨みが眷属殺しや、今回の何十万を超す怪異の大軍勢が〖神地 鳴神〗へ襲撃してきたのも納得がいく部分ところでもある。
「滑瓢……お前は我々に対する恨みを〖七原龍〗の歴代の眷属達を殺す事で、晴らしているだけだろう。神代時代の〖怪異〗の台頭を邪魔された腹いせに」
「だからどうした? 腹いせで何が悪いか? 優秀な〖あやかし〗には〖神秘〗を与え、自身達の契約者として側つきにし、人族や呪詛者に危害を加える怪異は容赦なく弾圧してきたお前達に復讐して何が悪いのか?」
「全てが悪い……我々は神代から現代へと移るなかで、未来を人族や地上の者達に託し、天界で見守ろうと決め動いていた。それをお前達〖怪異〗共は、地上の者達の進化を邪魔し、生活を脅かす毒だった。そのせいでその都度、我々、〖七原龍〗が問題を解決し、列島大陸の平和を維持するしかなくなっていたのだろう……」
鳴神様と滑瓢との会話で判明する七原龍達が、列島大陸を支配しなければならない経緯に俺は少し驚いていた。そして、二人の会話が途切れたと思った瞬間だった。
「それが現代まで続く〖七原龍〗の列島大陸の支配になるとは、思わなかったろう? それが俺がお前に対する復讐よ。鳴神……俺はお前が神代の時代からずっと嫌いだっのさ。裏切りの友。鳴神よお!! 〖氷蝕の帳〗……〖二の型 破滅氷〗」
「……やはり。この戦争もお前の私怨が入るか。悲しき友……滑瓢……雷龍魔法〖爆雷牙〗」
氷と雷の激しいぶつかり合いが再び始まったんだ……