戦乙女と堕天使の相違 No.4 大アルカナ〖抑制〗の抵抗
〖神々の黄昏〗の企みでは、〖救国の担い手〗から奪われた〖抑制〗と〖世界〗を奪い返す事が急務とされた。
その責務を任された【皇帝】は列島大陸各地へと配下の〖怪異〗や〖呪詛〗を解き放った。
そして、和国全土を動乱の世へと変え、極西の大陸である〖魔法大陸〗に隠れ潜んでいる救国の担い手を誘き寄せようとし、その企みは叶い、救国の担い手は仲間を引き連れやって来た。
【皇帝】はその気配を直ぐに察知し、配下の〖塔〗に曼陀羅寺へと彼等を導くように命を出し、彼等との激しい戦闘へと突入、長い年月の間、行方不明とされていた〖抑制〗を堕天使化させ、〖神々の黄昏〗へと復帰させる事に成功した。
したが……〖神々の黄昏〗……いや、【皇帝】の唯一の誤算は救国の担い手が、神成 刹那の仲間の中に元〖神々の黄昏〗が居る事を知らなかった事で、その企みの全てが夢潰える瞬間が来るという事だろう。
「大アルカナ発動……〖抑制〗……犠牲は〖反転〗と〖堕天使〗を……それ以外の力はまだ保持するわ。大アルカナ起動……〖優れし母神〗」
〖抑制〗ルシファーが天に手をかざした。すると火之神城跡地に神々しい黒き天使の女性を形をした魔力残滓が現れる。
「ついに出しましたか。ではこちらもそれ相応の対応に移りましょう。貴女達は下がっていて下さい。神明魔法〖私の物語〗」
「「「「「「ハイッ!」」」」」」
ブリュンヒルデの一言でバリュキュア達は闘いの場から少し離れた場所へと移動を始めた。これからブリュンヒルデが引き起こす。高位魔法に巻き込まれない為に。
「知っていますか。ルシファー……〖劇場型神明魔法〗はあらゆる力や可能性を最大限に活かせる神明魔法の到達点の一つだと」
「そんなもの知らないわ。それよりも私に倒されなさい。ブリュンヒルデ。〖抱擁〗」
ルシファーが〖優れし母神〗をブリュンヒルデへと向かわせる。
「冷静して必死ですね。ルシファー、神明詠唱『シグルドリーヴァの言葉』」
白色の槍を持ち、甲冑を纏ったブリュンヒルデと良く似た者がルーンの魔法陣から会われ、〖優れし母神〗を一刀両断する。
「……私の大アルカナが一撃?……あり得ない。大アルカナ起動……〖大天使〗」
続いて〖抑制〗ルシファーが出現させたのは、右翼が黄金色、左翼が黒翼の天使の翼だった。
その翼は現れると同時にブリュンヒルデへと襲いかかる。
「自立型の大アルカナですか。その〖大天使〗でかつての〖抑制〗は数多の人を傷つけていたんですよ。その翼は危険です……無力化しないといけません。神明詠唱『ブリュンヒルドの冥府への旅』」
ブリュンヒルデの詠唱が終わると、〖大天使〗の翼の前に黒い渦が現れる。そして、その黒い渦は〖大天使〗の翼を呑み込み。呑み込み終えると同時に消滅した。
「……そんな。私の〖大天使〗まで通用しないなんてあり得ない。大アルカナ……起動……〖天界の女王 ルキフェイル〗」
ルシファーの身体が金星の色……黄金の色へと変わっていく。それは大規模大アルカナの合図である。彼女はブリュンヒルデ呑みを対象に自身最大級の攻撃の準備を始めた。
「自身の身体を犠牲にした大アルカナの妙技ですか。ですがさせません。貴女に欠損などさせれば、私があの方に怒られてしまいますからね。神明詠唱『シヴァルドとブリニルド』」
ブリュンヒルデの三度目の詠唱により、白銀の剣と黄金の剣が天から降ってくる。
その二つ剣は〖抑制〗ルシファーに突き刺さるが、斬れなどしなかった。その剣は剥奪の剣……大アルカナの行使の力を滅する神聖な剣である。
「ガァ?!……い、痛くない?……いえ、これは不味いわ……大アルカナ……起動……〖ひらめ……」
「……させません。大アルカナは悲しき力。それを今から貴女にお教えしましょう。神明詠唱『シグルズの歌断片』」
「貴女……いつの間に私の背後に?……現れたの?」
「そんな事は今は良いのです。間に合って良かった。貴女が自身、最後の大アルカナを発動する前に止められて……さあ、貴方にこれから見せる劇場は、かつての〖抑制〗……私のシグルズ様がロキによって辱しめられたお話です」
「ロキ?……ロキってあの人の事? ブリュンヒルデ。貴女とロキの間に何かあったのかしら?」
「ええ……ここが西から遠く離れた列島大陸で良かったです。ここならば邪魔はされませんから……さあ、長い浄化の劇場を始めましょう。〖抑制〗ルシファー」
「……浄化?……貴女、何を言って……球体が閉まっていく?」
「ルシファー、貴女の大アルカナが消失している頃には、この列島大陸も何かしらの変化が来るでしょう。今はあの方を 神成殿を信じましょう。神明魔法〖計画破壊者〗」
「……これは私の意識と力が……眠らされる。これがブリュンヒルデの神明魔法……なんだか暖かいわ」
「はい。目覚めたばかりで申し訳ありませんが、これも貴女と大アルカナを切り離す為の浄化……しばしの眠りを。お休みなさい。ルシファー……」
ズズズ………
戦乙女と堕天使の闘い後に〖火之神城跡〗の上空に巨大な藍色の球体が浮かんだと、神成 刹那は後に曼陀羅寺から派遣された先遣隊の報告を受けたという。
そして、ブリュンヒルデとルシファーの闘いは一時的な休戦を迎える事になった。〖抑制〗ルシファーの浄化の為の休戦が藍色の球体の中で行われる。
その藍色の球体が割れた時、大アルカナから解放された大天使ルシファーと新なる神明魔法を操るブリュンヒルデの闘いが繰り広げれるのは、しばらく時が経過した後の話である。
戦乙女と堕天使の相違
終