戦乙女と堕天使の相違 No.3 ヴァルキュリアーの連鎖
「……この地は火之神城と言うですね。懐かしいです」
「懐かしい? 何故、そんな事を言うのかしら? 貴女、こんな魔法世界の極東なんかに来る事なんて……」
「あの方と共に黒龍動乱期のおりに来た事があります。まあ、貴女は確か興味が無く、ラファエルとガブリエル言う方達に任せて眠っていたんですよね」
「……だからどうしたというの? あの時の私の力……金星の力はこの列島大陸では制限されていたわ。あの子もあの時は休んでいて良いと言ってくれていたわ」
「あの方はお優しいですからね。傲慢で怠惰な貴女に配慮したのですね」
「……貴女、さっきから私に挑発を繰り返しているようだけど、何なのかしら? 言いたい事があるのなら、さっさと本音を言ったらどうかしら?」
「……そうですか。では……私はどうやら貴女が余り好きではないので、徹底的に壊し、あの方の元へと連れて帰ります。そして、この闘いで大アルカナの〖抑制〗を放棄させてさしあげましょう」
「何、戦闘中に馬鹿な事を言っているの?」
「神明魔法〖私の愛馬〗」
……神明魔法の陣……ルーンの魔法陣から白馬が姿を現し、ブリュンヒルデの元へと馳せ参じる。
「ヒイィーン!!」
「白馬の天馬?……それにその白馬の甲冑は……」
驚愕に震え始める。〖反転〗し、堕天使へと変えられたルシファー、彼女はその天馬〖ニーヴルングス〗がただの馬では無い事を、元主たる神成 刹那から聞かされていた。
〖魔法大陸 ソロモン山脈地帯洞窟〗
外は大雪が降る中、洞窟の中、一人の青年と天使が会話をしている。
(私達以外に天使を仲間にしている?……何かしら? 何故、そんな事を私にだけ伝えるのかしら?)
(いや、何か以前、列島大陸で久しぶりに会った時に、〖七聖―女神―の杖〗について色々と聞かれたんだよ。君達と出会ったのはどこだとか、入手したのは後は何を一緒にやっていたんだとかな)
(……貴方はその聞かれた事に対してちゃんと応えてしまったのかしら?……多分だけどそれは私達と貴方との細かい制約を聞き出していたのよ……不味いわね)
(いや、何も話して無いぞ。天上の……天界関係のいざこざは俺も余り関わりたくないしな。それにその質問してきた人は俺が応えられないと言ったら直ぐに聞くのを諦めてくれたしな……ただなぁ)
(……ただ?)
(可笑しな質問はされたな)
(……可笑しな質問? 何かしら?)
(ああ……その天使達の中に神座に座って、不思議な雰囲気の人は居るかとかな……)
(神座?……それって明らかに私の事を指している。その天使……戦乙女は私を気にしている?)
▽▽▽▽▽
「……この状況、この地、この時……貴女、全てを予見していたわね? 確か貴女はサルビアの大英雄・オーディン様に連なる者。そして、貴女は元大アルカナ〖正義〗……私の〖抑制〗と対峙する為にこの舞台を整えたというのかしら?」
「それだけが理由ではありませんが。まあ、今回は大アルカナを減らす事に専念しましょう。そして、今回は槍の神明を……戦乙女の〖槍の戦い(ゲイラホズ)〗で…神明・回帰……〖巫女予言の戦乙女達〗」
ブリュンヒルデを中心に戦乙女達が現れる。各々が持つ最上の武器を手に持ち、〖抑制〗ルシファーを見つめる。
「御姉様……来ました」
「今回の救済者はあの方ですか?」
「黒に染まってますね……助けないと」
「我々の力で」
「ブリュンヒルデ御姉様の為に……」
「治す……」
「高位の天界人がこんなに?……いえ、この子達はヴァルハラの……伝説の楽園の戦乙女の天使?……あの子は七聖―女神―の杖の私達以外に、どれ程の子達に力を契約しているというの?」
「沢山いらっしゃいますよ……あの方の寵愛を独り占めしたい堕天使に落ちた困った天使〖ルシファー〗さん。始めましょう。大アルカナの喪失を……神明魔法〖負債〗の剣」
「はあぁぁ!!」
「一人一人が彼女級の強さがある……神代魔法(金)〖黒凛〗」
黒き輝く翼が剣となり、スクルドの剣を受け止める。
「次は〖揺らすもの(スコルグ)〗」
「貴女を救済致します。癒しをっ!」
「次は大鉈?……神代魔法(金)〖金星の剣よ〗」
ガキンッ!!
「〖戦〗! 〖争い(ヒルド)〗!」
「「了解!!」」
「……二対の双剣? それも二人……神代魔法(金)〖金黒の翼凛〗」
三人の戦乙女達が一斉に襲いかかり、ルシファーはそれに気を取られる。
「〖杖振る者〗。動きを封じて下さい」
「はい。ブリュンヒルデ御姉様……〖エギル〗」
「ぐっ……神代魔法(金)〖輪転の金星〗」
藍色の鞭がしなり、ルシファーが座る神座を抑え、それに対抗する様にルシファーはおのが力を解放し、神代の〖金星〗の力を増幅させる。
「堕天使の〖反転〗に止めを……槍スコグル」
「はい……」
………ザスッ!
「がぁ……私の黒翼に槍が……これでは【堕天使】が維持できない……私は……このままでは」
「ええ、負けますね……ですから出しなさい。貴女の…〖抑制〗ルシファーの大アルカナを」
「……貴女は最初からそれが狙いで……くっ……そうね。使ってあげるわ……この無意味な大アルカナを……貴女に歯向かう為にっ!」