再会と相対
〖曼陀羅寺〗
「ラグエルの独奏で〖塔〗だけは倒せたか。その代償にルシファーを連れてかれるとは、これからどうするか」
俺は塔だった残骸を見ながら独り言を言っていると。二人の人物が近付いて来た。
「お久しぶりです。セツナ…さん? ですよね? 何だか、少しお若くなられましたか?」
〖列島大陸 和国が将軍 不知火 焔〗
「……焔か。久しぶりだな。擬装魔道具は君に効かないんだな……これは〖女神の祝福〗だよ」
「女神の祝福ですか?……」
「あー、こっちで言う〖七龍の守護〗だったかな」
「……成る程。お身体がお若くなられたのはそのせいですか。私よりもお若くなってしまうなんて驚きました」
「ああ、俺、自身も驚いているよ。昔みたいな全盛期の力も失ったしな」
「……昔の力を失った? セツナさんが?」
「お話し中に申し訳ありません。私の……いや、この晴明の自己紹介をさせて頂いてもよろしいですか?」
そう発言したのは焔の隣に立っていた観勒……いや、晴明さんだった。
「……貴方は〖塔〗に身体を乗っ取られていた西の覇者ですか?」
「はい……観勒殿のお陰で甦る事が出来た者です。そして、そこに倒れている七綾姫の……滝夜叉の保護者だった者です」
「はぁ、保護者ですか。あの骨使いの……」
俺は床に眠っている七綾姫の方を見つめていると……
「おーい! セツナ! 無事なのか? 返事をせい!」
「刹那殿……済まぬ。拙者……何者かに身体を乗っ取られお主達に迷惑をかけてしまったでこざる。拙者……焔様に合わせる顔が無いでごさるよ。済まぬでごさる。刹那殿」
「……いい加減落ち込むのを止めよ。タテミヤ。五月蝿くてかなわんぞ。それに次の戦いの時に挽回すれば良いだけの話だ」
「ユナ殿……お主、天女でござるか? こんな拙者に同情し励ましてくれるなど」
「アホ。誰が同情するか。発破をかけているだけじゃ、アホミヤ」
遠くからエスフィールとタテミヤの声が聴こえて来る……何? 俺が居ない間にタテミヤの奴。何、エスフィールといつの間に仲良くなってんの? 死にたいの?
「……あのセツナさん」
トンットンッ……とっ焔がニコニコ笑顔で俺の左肩を軽く叩き……
「ん?……なんだよ。焔、俺は今、色々と考える事があってだな。ルシファーやエスフィールの事を……グォ?!」
ドスッ! とっ俺に腹パンを喰らわせて来た。その凄まじい威力のせいで俺は床へと倒れ込んだ。
「ガハァ?!……な、何するんだ。焔……お前、もしかしてさっきの奴に操られてるのか?」
「ルシファーさんに、エスフィールさんですか?……私と少し離れている間に、どれだけの方々を誑かしたんですか? 答えなさい。セツナさん……さあ、応えて下さい。セツナさん」
〖属性 ヤンデレ〗
「……くそ。何で俺はいつもいつもこんな目に合わないといけないんだ」
焔は俺の身体に股がり何かを詠唱し始めた。この娘、何をする気だ? つうか着物が乱れて色々と危ない格好になってるぞ焔の奴。
「さあ、あの遠くからやってくる金髪美少女との関係を応えて下さい。セツナさん」
シュン!
「観勒のおじちゃん……」
シュン!
「……戦いは終わったの? 兄弟子」
……そして、新たな幼女と少女が〖黄金の宝物庫〗から出てきた。
「また、新しい女の子ですか? セツナさん」
「……焔。お前、数年前と何も変わってないな。先ずは落ち着いて俺の話を聞いてくれ。先ずはルシファーを助けに東の地に行きたいんだよ」
「はい?……貴方は私を救いに列島大陸に来てくれたんですよね? なのに私と再会した途端に別の女の子ですか?……何ですかそれ? 裏切りですか? 私にあんな事やこんな事をしたくせにですか?」
「……それはもう済んだ事だろが」
「一緒許しませんよ。責任はちゃんと取って頂きますから」
焔はそう言って俺の手足を縛りあげ始める。こいつ、こんな状況なのに何をする気だ?
「……兄弟子。その娘に何しての?」
「こやつが焔か……ウリエルから貰った本には確か、ヤンデレとか載っておったのう」
そして、サーシャとエスフィールは俺と焔のやり取りを静かに見守っていた。
「……観勒のおじちゃん。どこに居るの? 居るんでしょう?」
鈴がそう叫びはしまめた。するとボッ……とっ、鈴の前に黒い炎が現れた。
(鈴殿)
「観勒のおじちゃん……何で〖曼陀羅寺〗に近付いてたの? あんなに私にはあそこには近づくなって、呪われて取り込まれるって言ってたのに……」
(そうしなければ、今頃、鈴殿の村は焼かれてしまいましたからな……節操はここへと参らなければなりませんでした。まあ、そのお陰で鈴殿を護れましたし、晴明殿は甦り、〖塔〗は倒されましたし、めでたしめでたしですな)
「……それで観勒のおじちゃんが消えちゃったら……犠牲になっちゃったら駄目じゃない……何でそんなに嬉しそうな顔で消え様としてるの……呪詛の王のくせに」
(……いやいや、鈴殿。節操は呪詛の王ではないですぞ……節操は呪いで人を……人を救いたいただの魔力残滓……そして、貴女を最後に救いたかった愚かな悪霊ですな……ええ、最後に西の地を……貴女を……鈴殿を救えて……この悪霊〖観勒〗は……嬉しかったですぞ)シュン……
俺達の直ぐ近くで悪霊〖観勒〗が消えていく……一人の少女にお礼を……鈴に思いを伝えて静かに消えて行った。
「観勒のおじちゃん……馬鹿……自分を犠牲にして皆を救って……自分だけ消えてたら意味ないじゃない……バカ……」
そして、鈴は静かに涙を流していた。
「観勒殿……貴方に甦らせて頂いたこの命をもって、必ず〖帝〗に一子報いよう……帝が最後にかけた呪いにより意識を奪われた滝夜叉を目覚めさせる為にもね」
晴明さんはそう告げると意識を失ったままの七綾姫を抱き抱えたのだった。
『天照の神地 不知火城跡』
「燃えた跡地……黒焦げの城……こんな何も無い場所で待っていろなんて、最低な男ね。【皇帝】は……貴女もそう思わない? 西からの追跡者さん」
「……良いから。戻りますよ。堕天使の方。あの子の元へ」
「無理よ。そういう契約だもの。私はここで西から来る子達を待ち構えないといけないもの」
「そうですか。では実力行使でいかせて頂きましょう。このブリュンヒルデの実力で」
〖戦乙女 ブリュンヒルデ〗参戦