呪詛決戦・〖呪術の王は姫を憶い〗 No.12 塔
〖曼陀羅寺 宮内入口〗
「は、離して下さい! 私はあの人を助けに行きたいのです」
「七綾。貴様、待てと言っているのが聞けんのか? お主の身体は私との戦いで心身共に限界を超えていているのだぞ。緑魔法〖緑縛の吊〗」
私はそう言って、七綾の身体を枝葉で縛りあげた。
「いや! 離して下さい! 私はあの人に……セイメイ様に……」
「あー、やっぱり来てたんだね。いやー、困るよ。君達。今、凄く良い場面なんだからさ。横やりは入れないでほしいね。もしかしたらもう一人の方まで出てきて来るかもしれないんだからね」
私が七綾を縛りあげている間にタテミヤがやって来てそんな事を言い始める。
「タテミヤ……お主、何を分からない事を言っておる……お主、タテミヤではないな? 何者だ?」
「……初見で僕の正体を気づいたのかい? やるねえ、君。流石、〖救国の担い手〗君が選んで列島大陸に連れて来た事だけはあるね……それとも君のその赤い眼で見破れたのかな? 魔法族の娘さん」
「お主……何故、私が魔法族だと分かった? 普通、列島大陸の者達からしたら私など、ただの異邦人にしか見えない筈だが」
「僕は色々と見えるのさ。それよりも君達は暫く僕が足止めさせてもらおうか。こちらもだいぶ人数が減ってきてね。正直、困っているんだ。全く。〖救国の担い手〗君とカンナギの姫とやらの活躍で僕達まで動く事になろうとはね。予想外だったよ。風遁術〖風燐〗」
タテミヤはそう告げると私達に向かって、突風を起こし襲いかかって来た。
「……闇魔法〖暗宿〗」
ドガアアアンン!!
「おや? まさか僕の攻撃を受け切るとはね。流石、〖代理人〗が本拠地を置く魔法大陸住人だね。練度が違う……これは僧侶君が追い詰められるまでの良い暇潰しになりそうだね」
「五月蝿いぞ、他人に乗り移った卑怯者よ。自身は安全な場所で過ごし、高みの見物とは許せぬ。覚悟せい」
「神話の時代も知らない子が良く吠えるね……良いよ。少し遊んであげようか」
◇◇◇◇◇
「節操が、私が、俺がお前を倒す……『旋式遁甲』……〖秋分〗……大アルカナ 起動……『稲妻』」
亞空間の空に落葉が空から落ち始め、雷が鳴り始める。そして、俺達の視界と動きを封じる為に襲いかかって来る。
「俺の雷とはな……受けてたってやる。天雷魔法〖秋雷〗」
「雷だけではないわ。彼は……〖塔〗はそこに大アルカナの力を乗せているもの。『ルキフェル・タスク』・〖金星の翼〗」
俺とルシファーは観勒の攻撃を相殺する様に同時に攻撃を放った。
「オォォオ! 邪魔をするな。〖節制〗殿おおぉ! 貴殿は、お前はこちら側だろう。『旋式遁甲』……〖寒露〗 大アルカナ 起動……『神罰』よおぉ!」
季節が急激に変わる。観勒の奇門遁甲のせいなのだろう。亞空間は寒くなり、稲妻が先程より、激しく鳴り始めた。
「攻撃が出鱈目になってきてるな……天雷魔法 〖雪雷〗」
「それだけ彼が追い詰められるということね……〖ルキフェル・タスク〗・〖金星の光〗」
奇門遁甲と大アルカナ〖塔〗の力と天雷と金星を司る天使の力が激しくぶつかり合う。
「オォォオ!! 認めん。認めませんぞオォォオ!! 節操は生き残り……俺は生き残り帝の為に!! 『旋式遁甲』……〖立冬〗……大アルカナ 起動 〖脆き塔〗」
「冬から始まり。春、夏、秋……まさかあの奇門遁甲は季節を表しているのか? 天雷魔法・〖爆雷〗」
「それは不味いわ。あんな不気味な存在に大規模な術式なんてやられたら。この土地にどんな悪影響かわ出るか分からない……破壊するわね。『ルキフェル・タスク』・『金星の槍』」
観勒の身体が黒く変色し、塔……タワーの様な姿へと変わっていく。俺は奴に〖爆雷〗の凄まじい攻撃を仕掛た。
そして、ルシファーは……〖塔〗の頭上に魔法陣を展開し、そこから金色の巨大な槍を召喚、〖観勒(塔)〗目掛けて一直線に落下させる。
「グオォオ!! 大アルカナのNo.の数字が多少違うだけでここまでの差があるか? これ程までの力をどうしたら身に付けられるのです? 『旋式遁甲』……〖立冬〗……大アルカナ 起動 〖バベルの塔〗」
「奇門遁甲の〖時盤〗と大アルカナの〖塔〗の力を完成させる事で、何かする筈だったんだろうが考えが甘かったな。これで終わりだ。呪詛の王にして西の覇者殿。天雷魔法 神代・回帰……〖神雷〗」
「そうね。〖ルキフェル・タスク〗……『イザヤ・エゼキエル』」
極大の雷の柱が塔化した観勒へと避雷する。そして、更なる追撃……ルシファーの神秘が込められた金星の力が〖塔〗全体へと注がれていく。
「オォォオ!! オォォオ!! 『旋式遁甲』……大ゆ……大アルカナ 起動……落雷のと……帝……俺は……〖塔〗はこれで建てられるのだろう? アンタの言葉を信じて俺……この〖アシヤ〗は遂に……」
観勒……いや、塔化した化物はそう呟くと完全に身動きが止まり。意識を失ったのだった。