呪詛決戦・〖呪術の王は姫を憶い〗 No.8 無闇の剣の新たな主
数週間前の〖ティアマト地方 魔道船ユピテル〗
「なあ、エドワード。この剣について聞きたいんだけどさ」
「……何ですかな? 神成氏。僕は今、貴方せいで薬造りで忙しいんですが」
「それはお前のせいだろう。何せ数百人分の衣食住を提供しろとか言い始めるんだからさ。その為の費用の〖ユグドラの万能薬〗を量産させてるだけだろう」
「くぅーー! そうですな。僕が悪いですな」
「それよりもこれについて何か知らないか? 確かお前、〖無闇の力〗を使えたよな? 無闇の武器【闇星剣】って言うんだけどさ」
「……無闇の武器? 何故、そんな物を神成氏が持っているのですかな?」
「〖神々の黄昏〗の〖皇帝〗と戦った時に奪…手に入れたんだ。」
「〖皇帝〗ですか……大アルカナの〖主格〗級の者を倒したのですか。少し見せて頂いてもよろしいですかな?」
「ああ、良いぞ。ほれ」
俺はエドワードに【闇星剣】の剣と鞘を手渡した。
「ふむ……この剣は〖無闇〗と〖星〗の力を宿しておりますな」
「〖無闇〗と〖星〗の力?……そういえば、アトスの奴もそんな力を使ってたな」
「そうですか……神成氏はその方を最後に倒されたのですかな?」
「ん? ああ、死闘の末なんとかな。過去に戻れたのはラッキーだった」
「過去?……良く分かりませんが。どうやら所有権は〖皇帝〗と言う方から神成氏に【譲渡】されて下りますな」
「【譲渡】? 何だそりゃあ」
「〖無闇〗を使う為の条件の一つですな。この【闇星剣】とやらは、神成氏を現在の主と認めて入る様ですな。戦闘で使う時があれば使ってみてはいかがですかな? 〖無闇〗を……」
「主と認めているか……まあ、その時が来たら試しに使ってみるかな……」
「まあ、〖無闇〗は本来、正しき者が使うべき力ですからな。神成氏が使えば何の代償も支払わず使いこなせましょう」
「……代償?」
エドワードはそう説明してこの話を終えた。
〖曼陀羅寺〗
「……凄まじい威力だな。この【闇星剣】は流石、あのアトスの愛剣だった事はある」
「グオオォォ!!……その剣は貴殿の様な者が、軽はずみに扱って良い物でありませぬぞ……それはあの御方の所有物。我々、〖神々の黄昏〗へと返還して頂きたいですな……」
観勒はそう告げると血だらけの左手で、俺が持つ【闇星剣】を奪い取ろうと迫って来た。
「〖神々の黄昏〗の大切な物か……それじゃあ。いっそう渡したく無くなったよ。聖魔法〖白天〗」
指に聖魔法を圧縮した光の光球を造り出し、迫ってくる。観勒の左手へと撃ち出した。すると観勒の左肩から手にかけて聖魔法の力によって、焼きただれ落ちてしまった。
「ガアァァァ!! 節操の腕が……両腕があああああ! お、己……よくも節操の両腕を……」
「お前等はそれだけやられる事をして来たし、未来でもやらかすんだろうが……それが自分達がやられる側になった途端にいつもいつも騒ぎ立てる。お前達は今までいったい何万人の人達を不幸にしてきたんだ?……いや、俺も人の事は言えないか。お前等みたいな悪人を何人も倒して来たんだしな」
「……己……己……節操の身体を良くも。良くも……この身体はもう駄目ですな……新しい身体を……そうですとも……あの姫の身体に入り再起を図れば良いのですぞ。あの予備を使えば節操には次が……」
「あると思うなよ。ラグエルの合唱は続いている。終わりの合唱はな……お前はここで確実に倒させてもらう。魔法世界の未来の為にもな」
「……地の利はまだまだ節操にあります。『旋式遁甲』……〖芒種〗……現れなさい〖屍式〗達……目の前の怪物を倒し、あの御方の無闇剣を取り返すのですぞ」
「ゴオオオオ!!」「グオオオオ!!」
確勒はいきなり二枚の札を取り出したかと思うと、それを勢い良く噛んだ。そして、その札が二体の身体が腐腐った鬼へと変化していく。
「赤鬼と青鬼……それがお前の奥の手か?」
「ええ、えええ! これで貴殿をなぶり殺しますぞおぉ! 異邦者殿!」
「そうか。なら俺も更に味方を喚ばせてもらうとするよ。観勒……」
俺はそう告げ、新たな天使を召喚した。