呪詛決戦・〖呪術の王は姫を憶い〗 No.6 聖典の円舞曲
「この列島大陸にその歌を再び響かせろ。ラグエル……〖天使の歌姫〗」
「ええ、マスター……────」
ダンッ━━━━魔法世界のあらゆる楽器を持った楽団がラグエルの後方に現れる。それは天使歌姫〖ラグエル〗が率いる楽団。
聖典の円舞曲が開かれる。
「set………Standby……」
「「「「La La La………」」」」
ラグエルの合図で合唱が始まる。観弥を魅了し、葬り去る合唱が。
「「「「La La La!!!!」」」」
「……これは面妖な者達でござるな。列島大陸ではまず見ない服装や楽器の数々」
「おおぉぉ!! させませぬぞ。その展開される異様な合唱。節操が操る呪詛師達で相殺し、貴殿等には節操の呪いの遁甲術を味わって頂き……ゴホッ?!……何ですかな? これは……口から血が?」
「……やっと気づいたか。歓勒。抵抗するなら早めに始めた方が良いぞ。何せ、ラグエルの攻撃はお前の全身に行き渡るからな」
「La La La───♪︎」
「観勒殿の目や鼻からも血が? 神成殿。これはいったい? どうして拙者達は何ともないでごさるに、観勒殿だけ苦しんでいるのでごさるか?」
「……〖ラグエルの書・(陽)〗は敵対対象の聴覚、味覚、嗅覚、視覚、触覚、第六感の全てに、影響を与える事ができる。〖歌唱共鳴〗でな……それを敵対対象である観勒に放っているだ」
「何と……生きる者が持つ五感全てと、第六感。人の運命まで握るという事でごさるか? あの歌い手殿は」
「ああ……〖七つの秘宝〗の中でもエクスと並ぶ程の力を宿した最高峰の秘宝だよ。」
最初に〖ラグエルの書〗を見つけたのは、勇者時代、単独行動で来ていたヘファイストス地方の蜃気楼のオアシスにあった地下神殿だった。
そこはとても小さな神殿で、祠の近くには〖ラグエルの書〗と古い置き手紙が無造作に置かれていた。
見た目は白と黒の色の装飾がされた綺麗な聖典だった。そして、その近くに置いてあった置き手紙を俺は確認するとこう書いてあった。
《ここに辿り着きし者に託す。これは天のマキナと地の私が共同で編み出した。偽典にして聖典なり、願うとすれば、この書を正しき心を持った者が手にする事を切に願う。 七聖―女神―ヘファイストス》
七聖―女神―ヘファイストス神の所有物。それを知った俺はこの〖ラグエルの書〗を静かに手に取り。蜃気楼のオアシスが、盗賊や魔獣達に荒らされない様に認識阻害の魔法を幾重にもかけてその場を後にした。
「〖ラグエルの書〗は他の〖七つの秘宝〗達よりも、強力過ぎてな。こういう亞空間でしか余り使えないから助かったよ。観勒……焔を解放しろ」
「La La La───」
「「「「La La La───」」」」
「おおおぉぉ!! この合唱は……脳にまで響き渡るとは……地下の呪詛師達よ。節操に力を貸しなさい。『旋式遁甲』……〖大寒〗」
曼陀羅寺の宮内の環境が再び変わり始める。肌寒い程の寒さから、極寒の温度へと気温が変わり始めた。
「対象し始めたか。ラグエル……俺達を護れ……〖守護歌唱」
(えぇ……)
「Aaaaaa───♪」
「曲調が優しくなった?……身体が軽くなっていくでごさるな」
「ああ、ラグエルの守歌〖守護歌唱〗は、味方対象全ての身体の五感を支配する絶対守護歌唱で守護され、あらゆる環境から俺達を守るバフを与え、敵対対象には更なる精神汚染を引き起こす」
「Aaaaaa───♪♪」
「「「「Aaaaaa───♪♪♪」」」」
ラグエルと共に楽団も一層激しく、歌唱と楽器を奏で始める。
「ガハッ!……節操の身体が外部の音響壊されていく?……こんな攻撃見た事がありませんぞ。遁甲の……環境の支配が意味をなさぬなど、許される事ではないのです! ましてや節操は西の地を支配したかつての覇者。敗北などあってはならぬのです! ええ、あり得ないのですぞおおおぉぉ! 『旋式遁甲』 〖啓蟄〗!!!」
ズズズ………「ギシギシギシギシ……」
「あれは……百足か?」
「……あれは? 火之神城を焼き付くした蟲……」
観勒が突如として展開した呪詛の魔法陣より巨体な蟲が出現した……