呪詛決戦・〖呪術の王は姫を憶い〗 No.3 骨の上に
〖西の地 榊の首塚〗
カラン……カラン……カラン……
「母様、父様、そのうち来る~、私を迎えにそのうち来る~」
カラン……カラン……カラン……
底は首塚だった。身元が分からず死んだ者達が身体を焼かれ、骨と化し、埋葬される前に数日放置される場所。
私はその首塚に突如、現れた荒らし魔の退治を将軍家から仰せ使った。
「少女よ。底で何をしている? 何故、一人でこんな〖禁則地〗に来ているんだ?」
純粋無垢な表情だった。そんな幼い少女が人の髑髏を手に持ちながら音を奏でたり、砕いたりしている。
「貴女は誰?」
「私は●●だ。親はどうした?」
「親はいないよ~、顔も知らない~、姫だから~」
その娘は精気が無く虚ろな目をしている。このまま此処に居たら、そのうち〖禁則地〗の主に喰われ殺されるだろう。
「…依頼は中断だな。来い。娘、ここから出るぞ。お前をこれから私と共に西の地へと行くぞ」
「西の地? ここよりもそれは楽しい場所?」
「ああ、楽しいだろうな。西の地の果ては荒れた場所。強者が潰し合う場所だ」
「そう。それなら屍体が沢山落ちてそう……じゃあ、付いて行く……」
〖曼陀羅寺 鳥居〗
「ガシャ元に戻りなさい。陰遁術〖髑髏再起〗」
「ケラケラケラケラ」
ラベルに切り刻まれた巨体髑髏の身体が元の巨体な骨身体に戻っていく。
「変幻自在とは、凄まじい魔法を使うのじゃな。お主は……列島大陸の魔法は物理干渉の魔法が主体なのか?」
「あら? 列島大陸の魔法……呪法にご興味があるんですか? 以外ですね。罵声しか出来ない方かと思いましたが」
「これでも西の大陸では一国の王であるからな。知らない事は素直に学び、取り入れるのが私の主義でのう」
「その若さで一国の王ですか。それはそれは……貴女の国の国民はさぞかし可哀想なのでしょうね。和国の中央の地は呪法が発展した地、呪いの王の教えによって広がったんですよ。陰遁術〖骨突き〗」
ガブリエルが相手してる髑髏達の骨の破片が七綾姫の魔法により動き出し、私に向かって飛んでくる。
「無駄じゃ! 陰湿姫よ。緑魔法〖樹丸廊〗ラベル。お主はあの巨体髑髏を倒せ、私はあの姫を止める」
私は周囲に樹木をはやし、飛んでくる骨の破片を防いでいく。
「ハッ! 畏まりした。魔王。神代魔法(緑)〖緑翼撃〗」
ラベルの翼が大きく広がっていく。そして、緑色の魔力を纏い空へと舞い上がる。
「……あの獣の力はあの魔王以上。拳に魔力を込めなさい。ガシャ! 陰遁術〖髑髏打ち〗」
「ゲラゲラゲラゲラ!!」
巨体髑髏はラベルを捕まえようと両手を近付けていく。
「遅いわ! 東の大陸の魔獣の成れの果てが! 過酷な修行の成果を喰らうがいい。〖翼斬〗」
ドガンンンッ!
巨大髑髏とラベルの衝突で、周囲の河川が激しく揺れる。
「嘘?……ガシャは和国の西の地を代表する〖五大怪異〗の一体。それと互角の攻撃が出きるなんて、西の大陸の魔獣というのは皆、あれ程に強いのですか?」
「ラベルは私が小さい頃から一緒に特別な魔法の訓練を受けた幻獣じゃ。そして、ただの幻獣種ではない、始まりの大森林の英雄〖サテュロス〗の眷属〖フェンリル〗の血を引く幻獣。お主のそんな骨に負けるわけなかろう」
「……本当に上から目線の偉そうなご高説。貴女、東の地のあの腹黒狐と似ていますね。陰遁術〖白骨剣〗」
「ほう。骨を剣として生成し宙に浮かせるか、それを私に向けて放ち傷を負われるのか? 単純な思考じゃのう」
「私は戦闘は余り得意ではないですからね。ですが観勒様の為なら、何でもする……私に感情をくれたあの人為に」
「感情をくれた? どういう事じゃ」
「……敵である貴女には関係ない独り言ですよ。そろそろ本気でやり合いましょう。陰遁術〖骨の舞い 一楽〗」
雰囲気が変わった?……いったい何をするつもりじゃ?