呪詛決戦・〖呪術の王は姫を憶い〗 No.2 魔王と姫の応酬
「一瞬で消えてしまうなんて? あの魔法師は何をしたんですか? 魔王さん」
「何故、お主に教えねばいけぬのだ? 髑髏姫」
「髑髏姫? それは私の事ですか……なんて嬉しい呼び方でしょう」
「挑発したつもりが何故、嬉しがるのじゃ?……居るだけで可笑しくなる神域にずっと居て可笑しくなったか?」
「海外の人の価値観で比較しないでもらいたいですね。ガシャ……潰しなさい」
「ケラケラケラケラ!」
巨大髑髏が私に向かって右手を振り上げる。
「やはり遅いのう。緑魔法〖茨の縛り〗」
私は魔法陣から大量の蔦を召還し、巨大髑髏の巨大な身体を縛りあげる。
「ケラケラ……ケラ?」
「木遁術……いえ、海外の魔法ですか。厄介な相手ですね。陰遁術〖殻者の醃〗」
「巨大髑髏の身体が変形していく? 何をする気じゃ?」
「貴女を貫きます。魔王さん、ガシャ! 落ちて下さい」
「ゲラゲラゲラゲラ!」
巨大髑髏の体が槍の様に変形し、私に向かって落ちてくる。
「……厄介な。攻撃をするのう。一対二では、流石に時間がかかってしまうか。緑魔法『召喚術・ヒポグリフ』」
召喚魔法陣が展開され、その中から私の契約者が大陸を超えて現れる。
「来い。私の翼よ」
シュン!
「はっ! 魔王様の僕、ラベルが此処に」
『幻獣の楽園 ヒポグリフ 〖ラベル〗』
「いきなり喚び出してしまって、済まぬ。ラベル」
「滅相もございません。魔王様、お久しぶりでございます。本当にまた会えて嬉しゅうございます」
ラベルがいきなり嬉し泣き始めた……何じゃ? 何でいきなり泣くのだ? 〖幻獣の楽園〗で何かあったのかのう?
「久しぶりじゃと? 確かこっちの世界でラベルに会ったのは、こちらの時間でら四ヶ月前くらいであろう? それよりもお主は上から落ちてくる巨大髑髏の相手を頼む。私はあの髑髏姫の相手をせねばならぬからな」
「はっ! 畏まりました。神代魔法(緑)〖翼獣斬魔〗」
スパンッ!
「ゲラゲラゲラゲラ……?」
ラベルが放った斬撃が当たり、槍状になった巨大髑髏の体が細切れにされていく。
「は?……ガシャが切り刻まれた?」
髑髏姫も驚いた表情を浮かべていた。
「ラベル。お主、以前会った時よりも数倍強くなっておらぬか?」
「はっ! 我が長たるフェンリル様と聖女エリス様の虐た……特訓により、このラベル、以前よりも屈強になることが出来ました」
「…何故、涙をうべなから言うのじゃ。しかし、ここでも聖女殿か。まさかラベルまで世話になっていたとはのう。魔道船〖ユピテル〗では挨拶ができなかったし、魔法大陸に戻ったら感謝を言葉を述べなければいけないのう」
「いえ! それはお止め下さい魔王様。そんな事をすれば、魔王様もこのラベルも殺されてしまいますので」
ラベルが身体を震わせながらそんな事を言っている。セツナやサーシャといい、聖女殿に怯え過ぎではないか?
「ゲラゲラ……」ガシャン!!
細切れと化した巨大髑髏は曼陀羅寺周辺の河川へや地面へと落ちていく。
「私のガシャによくもこんな仕打ちをするなんて、許せません」
「ならば、そろそろ自分で動いたらよいではないか。姫殿。まさかお主、自身が弱いなどという落ちではあるまいよな」
「……何ですって?」
〖青龍川 周辺〗
「うわー、魔王さん。メチャクチャ煽るなぁ。まあ、確かに川から現れる骨君達も数が多いだけでこんな簡単に倒せるんだよね! 神代魔法(天)〖綠聖拳〗」
ドガンッ!
「「「「ケラケラ……」」」」
「弱……」
〖曼陀羅寺 宮内〗
宮内に侵入した俺とタテミヤだったが、中に入って驚いていた。中はかなり広く複雑に入り組んでいたからである。
「それでタテミヤ。焔はどこに逃げ込んでるんだよ」
「うむ。この宮内の際奥に……」
「オオォォ!! これはこれは、こんな夕刻も終わり、夜更ける時刻に、節操の寺へと入られては困りますぞう。忍者 タテミヤ殿」
「お主は……観勒殿」
突然、俺達の前に現れた男はタテミヤから観勒と呼ばれた。姿は日本の平安時代の陰陽師が着る様な着物を着て、鉄の扇子を左手に持ちながら俺達を見ていた。
「火之神城からむざむざと逃げたしたお方が良く戻って来れましたな。節操、その愚かな姿に拍手を致しますぞ」
「黙れ。裏切り者……」
「裏切り者?」
「観勒殿は……こやつは……焔将軍の相談役として仕えておきながら、突然、帝側に寝返った裏切り者でござる」
「いやいや、それは違いますなぁ。タテミヤ殿、節操は最初から帝様の従者……貴殿達が節操を味方と勝手に思い込んだだけの事ですぞ。ハハハハ!!」
「くっ! お主……」
「オオォォ!! その悲痛な顔が見たかったのです。そして、その隣はかつて西の黒龍を倒して下さった〖西の賢者〗殿ですかな? 少し、来るのが遅いようで、今頃、〖黒龍の巣〗は落ち、〖鳴神の地〗は節操達に……ごァ?!」
バキッ!
「神成殿?! 何を?!」
俺は無言で観勒とか言う奴を神気を込めた拳で殴った。
「説明はいい、良いからかかって来い。〖神々の黄昏〗……月は異界に入るとなれば、お前は〖塔〗の大アルカナだよな?……お前達に対してストレスを抱えていたんだ。憂さ晴らしに倒されろ」
「オオォォ!! 貴殿はあぁぁ! いきなり何をしますか!! 呪い殺しますぞぉぉ!!」
〖大アルカナ 塔 呪詛の王 観勒〗




