呪詛決戦・〖呪術の王は姫を憶い〗 No.1 七綾姫の挨拶
『曼陀羅寺』
「ケラケラケラケラケラケラ!! アハハハハハハハ!!!」
「おいおい……何だあれ? 青龍川の中から巨大な髑髏の〖怪異〗なのか?」
「神成殿。あれは和国の〖五大怪異〗の一体【餓者髑髏】でござる」
「餓者髑髏? あの有名な巨大髑髏のか? そんなのが何でこんな青龍様の神地に出てくるんだよ?」
「……数百年前に鳴神様に討伐され、青龍川の底、河床に封印されていたと将軍様から聞いていたでござるが。これ程大きいとは」
大きさは三百か四百メートル位はあるだろうか。人形の骨が不気味な笑みを浮かべている。気持ち悪い笑みを浮かべて俺達を見ている。
「まあ、まあ、【餓者髑髏】の大きさに圧倒されてるでしょうか? 流石、主君である将軍を置いて逃げ隠れしていた事はありますね。忍者さん」
「将軍ち置いて逃げ隠れしていた? タテミヤが?」
「違う! 〖西の賢者〗殿が祖国に帰られた後、一方的にお主達、帝側が将軍様との契約を破り、〖灰神楽の神地〗である火之神城に兵を向けて来たのではないでござるか」
「フフフ、そうですね。それで部下を逃がした後は将軍本人は帝様に破れ。殺されない為にこの曼陀羅寺の奥に逃げ込んで、天戸の部屋に逃げ込んだ敗者ですものね」
「何? 焔がこの曼陀羅寺に居るのか? それに敗者ってどういう事何だ? タテミヤ」
「神成殿。拙者達は一度負けているんでござるよ……帝都側に騙され、焔将軍様の城は……火之神城は落とされてしまったのでござる」
「そうそう、そうですね。そして、そんな焔将軍が逃げ込んだのがここでして、急遽、教祖様は曼陀羅寺を拠点にして、西の地の攻略を始める事になってですよ。黒龍の地なんて今頃、メチャクチャにされてるんでしょうね」
七綾姫はそう告げると妖艶な笑みを浮かべた。
「お主。何故、それ程に楽しそうにしておるのだ? 同じ国に住む者同士で争って何がそんなに嬉しいのだ?」
「……金髪に赤色の目? 貴女、列島大陸の方ではないですね。まさか、外国の方ですか?」
「うむ。魔王をしておる。宜しくのう。七綾姫とやら」
「魔王? 貴女みたいな。お若くて可愛らしい方が?魔王ですか? フフフ、またまたご冗談を……面白い方。なら、その魔王様を最初に殺して差し上げましょうね。ガシャ、やってしまいなさい」
「ケラケラケラケラ!」
餓者髑髏が七綾姫の命令により動き出し、左手を天高く振り上げる。
「クソ! 来るぞ二人共。ここは一斉に餓者髑髏に攻撃をするぞ」
「ウ、ウム、了解でござ…」
「いや、あの程度の相手であれば私だけで十分じゃ。緑魔法〖緑撃〗」
ドガァン!
「ガァ?……ケラケラ?」
「は? ガシャの左手が砕けた?」
「脆い相方じゃな。やはり、見せかけだけじゃったか……セツナよ。先に曼陀羅寺に行って良いぞ。じゃから焔将軍とやらを早く助けに行くのじゃ」
「エスフィール、分かった。君を信じよう。だが君一人だけではやはり心配だ……来てくれ。ガブリエル!」
シュン!
「ハイハイ~! お呼びかな? 主君」
俺の呼び掛けに応えて〖黄金の宝物庫〗の中からガブリエルが現れた。
「ガブリエル。俺とタテミヤは曼陀羅寺に突入する。だから、エスフィールの戦闘をサポートしてやってくれないか?」
「サポート……あー、ハイハイ。了解です。主君、よろしくね~! 魔王君」
「お、おお、宜しく頼む。ガブリエル殿……(随分とノリが軽い天使族じゃな)」
「神成殿。曼陀羅寺周辺の川の中だけ、黒く変色し始めましたぞ」
「変色?」何、言ってんんだ。タテミヤ、ここは青龍様の神域の一部だろう。そんなわけ……」
「「「「「ケラケラケラケラケラケラ!!」」」」」
「人サイズの骨の群れが川岸から上がって来てる?」
あの黒い変色したモノは黒い骨の群れだった。その群れが俺達に向かって行軍してくる。
「フフフ、よくも私のガシャを傷付けてくれましたね。数で潰されて死になさい。魔王様」
「……誰が死ぬか。緑魔法〖吸緑〗」
「「「「ケラケラケラケラ?!……」」」」ガシャン……
「……私の骨達が止まった?」
「魔力を吸い取らせてもらった。そして、それを私に還元させてもらうぞ。七綾姫よ。いい加減、自分の力で戦ったらどうなのだ?」
「くっ!」
「あれ~? 主君。ボク、魔王君のサポート必要かい?」
「……ああ、必ず必要になる。エスフィール! じゃあ、先に行くからな。油断するなよ。行くぞ、タテミヤ。〖縮転移〗」シュン!
「感謝する。エスフィール殿」シュン!
俺とタテミヤは転移魔法で曼陀羅寺内へと侵入した。
「うむ。お主も気をつけよ……あの社の本殿にはあの姫よりも呪いが強い者がおるからのう」
「……最悪ですね。これでは教祖様に怒らせてしまいます」
「いや、そうはなるまい」
「はい? それはどういう事です。魔王さん」
「うむ。なんせ、お主もその教祖様とやらも私とセツナに倒される予定じゃから、お主と教祖様が会う事もない。だから怒られる事もないぞ。良かったのう。七綾姫」
「……イライラする言い方。潰してあげますよ。魔王さん」
「はぁ~! バッチバッチだね。ではボクは周りの骨達の掃除を始めよっと…」
魔王、天使と姫同士の戦いが始まる。