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西の地か東の地か


 俺達が水練の村で西の地の地図を入手してから、三日程経った。幼女に変化した(スズ)の案内で最初に立ち寄った村よりも、数倍は大きい規模の町へとやって来た。


 巨大な湖の中央に町があった。その名も〖水湖の町〗。俺も一度来た事がある『七原龍 青龍』が祭られる西の地でも最大の町。


 この町で俺達は数日滞在し、現在の列島大陸(イザナギ)についての情報収集をする事に決めた。


 そして、着ている服装も新しく買っておいた。今、着ている服は魔法大陸(エウロペ)特有の服装な為、かなり目立つ。


 旅をしている時は、認識阻害の魔法と擬装魔道具で姿や服装を変えて移動するが、町での滞在時は和国の文化に馴染む為にもこちらの和装で過ごそうとエスフィールとサーシャと話し合って決めた。


 何故、三日間もの間をこの町に滞在したのかというと、鈴との信頼関係を築く為だ。


 あの子は曼陀羅寺に近付く事をかなり嫌がっている。その事について曼陀羅寺に着く前に聞き出さなければ、曼陀羅寺で〖トウ〗と言う奴と対峙した時に直感で不味い事になるかもと思ったからだ。


 それはエスフィールとサーシャも同じ考えだった様だ。この魔法世界(アリーナ)の魔法使いの直感……第六感はかなり当たる時がある。今回はその直感を信じて鈴の話を聞いている所なんだ。


〖水湖の町 茶屋〗


「二年前に封印されていたかつての〖呪いの王 トウ〗とやらが突然、復活し〖西の賢者〗が居なくなった途端に暴れ始めたじゃと?」


「は、はい……それからは青龍様を外海に追い出して、この〖弐の神地 青龍〗の一部を支配して、次は〖壱の神地 鳴神〗を侵略しようと攻め来んで来ているんです」


「鳴神様の神地に侵略に? もしかして、君はそれを防ごうとして俺から〖印〗を示せと言ったのか? 鳴神様を助ける為に力が欲しくて」


「……そんな所です。それに侵略される最初の土地は私の故郷である鈴族が住む〖音色の里〗。なので侵略を防ぐ為にも抵抗する力が必要なんです」


「抵抗する力が必要か……だがのう。鈴よ」

「……人を騙して〖擬装真核(ぎそうしんかく)〗を奪い取ろうとしては駄目。あれは契約者同士の絆の証。それを奪おうとすれば貴女に災いが振りかかるの」


「わ、災い? そんな事、あの人は言っていなかった……何であの人は私にあんな事を言ったの?」


 鈴はそう告げると涙を流し始めた。〖七綾姫(ななあやひめ)〗に〖トウ〗……それに西の地の果ての〖黒龍の巣〗で数日前まで感じ取れていた特大の魔力……いや特大の〖怪異〗が存在していた。恐らくは西の地を支配しようと進行している奴等の仲間なんだろう。


「ふむ……セツナよ。どうするのだ? 私達の倒す相手は【皇帝】と言われるものじゃ。この三日間の間に集めた情報じゃと、【皇帝】は東の地の帝都に居ると分かった」


「だから、西の地の問題は後回しにして東の地の帝都に行った方が良いと?」


「そうじゃ。〖神々の黄昏(ラグナログ)〗の数は、大アルカナに比例しているとユグドラシル様達は言っておった。ならばその言葉を通りなら、残りの〖神々の黄昏(ラグナログ)〗はそう多くない。居場所が分かっている者。【皇帝】が帝都に居るのならば先に倒しに向かった方が良いと私は先程まで考えていたが……鈴のこんな姿を見せられたら考えが変わってしまった」


 エスフィールの考えを俺は静かに聞いる。


「じゃから先ずは西の地の問題を解決する事を優先してやりたくなった。どうせ鳴神の地とやらに進行しようとする〖トウ〗や〖七綾姫(ななあやひめ)〗とやらは〖神々の黄昏(ラグナログ)〗の関係者か大アルカナのNo.の()れかじゃろうからな」


 ……だいたい俺と同じ考えか。いちをサーシャにも曼陀羅寺、帝都のどちらに行くか聞いておかないとな。


「サーシャはどうだ? どっちに先に行けば良いと思う?」


「……私は東の地に行った方が良いと思う。この娘はまだ何か隠しているから信用できない。私の直感がそう言ってるから。私はそれに従う」


「おい! サーシャ。お主!」

「……離してユナ姉。私はそれが正しいと思ったから言っただけ」

「わ、私は曼陀羅寺に行かないのなら、東に行きます……力はもう手に入らないし」


 エスフィールがサーシャの冷たい発言を聞いて、サーシャの襟首を勢い良く掴んだ。そして、鈴は涙を流しながらブツブツと独り言を呟き始めた。


「エスフィール。落ち着け……そうか。サーシャの考えは良く分かったありがとう……」


 一見冷たい様に聞こえたサーシャの言葉。普通だったら酷い言葉だと思うかもしれないが、そうとも限らない。サーシャは未来の〖魔術院 理事長〗候補、この娘は未来を見通す力がある。鋭い直感が……


「俺とエスフィールは西の地。鈴とサーシャは東の地。ニ対ニか……」


「ならばそこに拙者の一票を加えて下され。神成殿。曼陀羅寺に侵入する一票を」


 ん? この声。以前、聞いたことがある様な……


「お前、まさか建宮(タテミヤ)か? 何でここに?」


「お主に会いにでごさる。神成殿」


 忍者〖建宮(タテミヤ) 椿(ツバキ)〗かつて、列島大陸(イザナギ)での黒龍討伐の旅で仲間の一人だった男。


「俺に会いに?……何かあったのか?」


「うむ。ありすぎて大変だったでごさるよ……神成殿。どうかお願いでござる。拙者に力を貸してくれぬか? 曼陀羅寺に……曼陀羅寺に行き、拙者の主、将軍《不知火(しらぬい) (ほむら)》様を一緒に救い出して欲しいのでごさる」


 タテミヤの突然の登場により、俺達の今後の方針が決まった。大蛇に言われた曼陀羅へと……〖呪いの王 トウ〗がいる曼陀羅寺へ行く事が決まったのだった。

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