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魔道船を経由して


『ティアマト地方 アレス灯台』


「じゃあ、ハルピュイア。この魔道具の中にエドワードの薬は入れといたから。それとこれがアイツから聞き出した薬の配合表だ。もし材料が欲しくなったら転移メッセージを送ってくれ」


「いや、ちょっと待て、セツナ。何故、そんなに順場万端なのだ」

「……そうね。私、さっき召喚されたばかりの筈なのに、こんな用意が良いなんて。ビックリしていんるだけど」


「ある程度の事は〖夢渡り〗の時、ロロギアから聞いていたんだ。それにエドワードには嫌がらせで薬は大量に作らせて余っていたから丁度良かったよ」


「上の人達が必死で探している薬がこんなにあるなんて……あの娘達が見たら卒倒するレベルよ」


「そんなの魔法大陸(エウロペ)も同じじゃ……この小瓶一つでどれ程の価値があると思っておるのだ。こんな物が世の中に出回ったら、奪い合いに発展し、下手したら国同士の戦争に発展しかねないぞ。セツナよ」


「そこら辺はちゃんと考えてるよ。ハルピュイアに渡した薬は、役目を終えたら〖黄金の宝物庫〗に転移するように細工してあるし、ハルピュイアが一度手に取らないと小瓶の蓋は開かない様にしてある」


「ええ、感じるは〖契約印〗が、でも、ありがとう。契約者 カミナリ君。これで私の主人は元に戻れるわ」


「そうか。それは良かった。そうだ! 上の眷属達に会ったら伝えておいてほしい事があるんだ。ハルピュイア」


「伝えたい事? 何かしら?」


「エドワードの薬を飲ませる時は、リクって奴に飲ませてもらえ、てな……そして、どうか幸せになってくれ。ルルエラ様の眷属さんと……これは契約だ」


「フフフ……それは素晴らしい契約ね。ちゃんと責任をもって伝えておくわ。ありがとう……それじゃあ、私は北へ行くわね」


「北? 死の大地か?」


「いいえ、上へ変える前にギルフォードに会いに行くのよ……久しぶりに会いたくなってしまったの」


「ほう。遠距離恋愛とはのう……ロマンチックじゃな」


 エスフィールは何故かうんうん頷いている。いったい何に共感しているのだろうか?


「契約者さん。薬のお礼に貴方にはこれを…」


「ん? これ?」


 ハルピュイアは俺にオカリナみたいな。楽器を手渡した。


「それはとても貴重な物だから無くさないでね。それを吹けば私と通じて〖スサーの街〗に渡れるわ……未踏の場所。そうね。最低でも三ヶ所は行ける様になる凄い物なの……私が渡せる最大の恩返しよ。では、またどこかで会いましょう。私達を救ってくれた解放者さん。さようなら」


「……霧の様に消えてしまったのう。あんな魔法、魔法大陸(エウロペ)では見た事ないぞ」


「ああ……上の世界の魔法なんだろう。それにしてもこの楽器は……確かに破格だ。エドワードの薬を全て渡しても釣り合わない位のな」


「……そのオカリナがか? 全然、そうには思えんぞ」


「まあ、そのうち使う機会があれば分かるよ。使う事が無い方が良いがな……それよりも俺達も魔道船〖ユピテル〗へ向かおう。エスフィール、転移魔法〖縮転〗」シュン!


「な、なんじゃ、そんないきなり! セツ…」シュン!


 その後、魔道船〖ユピテル〗に無事に着いた俺は、ハルピュイアが渡してきたとんでもない物を〖最果ての孤島〗の金庫に厳重にしまい込んだ。


 それは何故かというとだ。こんな物が〖神々の黄昏(ラグナログ)〗の誰かにでも渡ってしまえば、世界は破滅する事になるからだ。


 なんせ、このオカリナの様な楽器があれば、人類未踏の大陸である、天空大陸、暗黒大陸、幻想大陸に行けるなんて誰にも知られるわけにはいかないからな……



〖魔道船 ユピテル〗


シュン!

「……良し着いたな……やっぱり。エドワードが設置した簡易転移魔法陣から出て来れるんだな」


シュン!

「ナ! 貴様! いきなり転移魔法は……ここは魔道船ユピテルの船主か?」


 エスフィールは俺の背中に手を掴むと周辺を見渡し始めた。


「ああ、どうやら上手く来れた様だな。簡易転移魔法陣があったらから、以前みたいなバラバラで転移する事もなくなったみたいだ」


「ほう。それはお主の魔力操作が以前よりも、格段に成長しているという事……セツナ。あれを見てみよ」


「ん? 何だよ。褒めていてくれと思ったら、後ろを向かせるなんて……」


 エスフィールは俺の身体をグルっと後ろに向かせた。


「いやー、ここは天国ね。セレス! 毎日がバカンスよ」


「ええ、アリス御姉様。ユナ御姉様が勇者様とどこかへ行ってしまった時はビックリしましたが、担当したいる一日分の仕事を終えれば、休んで良いなんて最高です」


「ユグドラシル~、そろそろ、自分の地方に帰りなさいよ~」


「何を言っているですか。ティアマト~、私の地方の子達は皆、強いんですよ~、だから大丈夫です。それよりも今はこの平和を楽しみましょう~」


「そうね~、七聖―女神―が集まるなんてなかなかないもんね~」


「とか言って、私、もう一月位ここに滞在してます~」


「そうね~、ここ良いわよね。何でも揃ってるし、娯楽も多いしさぁ~」


「ええ、最高です~」


「皆さん~! ジュースを作ってきました~、いかがですか~?」


 ガリア帝国の姫達、七聖―女神―の二柱が水着姿でくつろいでいた。そして、水着メイド姿のソフィアさん(現在の)が給仕している。


 ……それだけじゃない。俺とエスフィールが居ない間に船内にはプール、出店等が作られ、外の砂浜には色々な建物が建てられていた。


「なんじゃこりゃあ……皆だらけきってやがる。それにあのホテルみたいな建物はなんなんだ?」


「ティアマト地方を始め、ユグドラシル地方、アテナ地方、フレイヤ地方に潜伏していた〖神々の黄昏(ラグナログ)〗が居なくなり、四つの地方は平和になったからのう。ティアマト様とユグドラシル様の発案でティアマト地方を観光地にすると言っておったが……まさか少し魔法世界(アリーナ)を離れていただけで、ここまで発展させておったとは驚いたのう」


「いや。これは観光地というか……最早、魔道船〖ユピテル〗を中心とした新しい大都市だろう。それで良いのか、古の最高神ティアマトとユグドラシル様さ……」


「本人達が楽しそうにしておるのだから、良いのではないか? それよりもどうするのだ? ティアマト様達はだらけきって、私達が帰って来た事にまだ気づいておらぬぞ。セツナ」


「ああ、取りあえず。帰って来た挨拶を……」


(……弟子……兄弟子……気づいて兄弟子! こっちに来てえぇぇ)


「ん?……この声はサーシャか? 何であんな隅っこで隠れる様にしてるんだ?」


「とてつもなく不安そうな顔をしておるな……心配じゃし、先ずはサーシャに声をかけた方が良いのではないか? セツナ」


「そうだな。あっちで楽しそうにしているティアマト様達とは、明らかに雰囲気が違うし行ってみよう」


 俺とエスフィールは何かに怯えているサーシャの元へと移動した。


「よう。サーシャ、久しぶり。元気にしていたか?」

「留守を任せてしまって済まんなかったのう。サーシャ」


 俺達が軽いノリで挨拶すると……


「……良かった……兄弟子…ユナさん…戻って来てくれて……ガラ先生が……ガラ先生が……」


 ガラ先生の名前を連呼しながら、びくびくと怯えていた。


「どうした? 何でそんなに怯えているんだ? それにガラ先生がどうしたんだよ……」


「……ガラ先生が……幻獣の楽園から私達を迎えに来たゴリラ聖女……じゃなくてエリス様に捕まって、ボコボコにされてるの」


「は? エリス……だと?」


 エリス……だと?……あのゴリラが遂にこのティアマト地方に現れたる 不味い。それは不味い! もし、俺が宿敵あった筈の魔王様と一緒に居る所を見られたら、半殺しにされてしまう。


 なんせ、エリスの口癖は……


(勇者様の宿敵の魔王はぶっ殺しましょう。そうですよ? 勇者様)


 だぞ!


「なんじゃ、あの暴力聖女も遂に現れおったのか? 良かったのう。セツナ、これでティアマト地方の守りは、より強力に……」


「サーシャ! 今回は君に決めた! 今から急いで列島大陸(イザナギ)に行くぞ! 逃げる準備は万端か?」


「……いつでも行ける……だから早く逃げないと。兄弟子」


「だな!」


「お主ら、何をコントみたいな事をしておるのだ? どれ、セツナのかつての仲間に私も挨拶を」


 エスフィールがそう告げて、船内を見渡し始めた瞬間。


ドサアアァァ!

「ゴハッ! だから知らないんです。エリス様」

「ギャラハット君。ちょっと! 私の子供に何て事をするんですか? 貴方は!」


「それは幻獣の楽園になかなか帰って来ず、遊び呆けていたからです……それと勇者の居場所をなかなか吐いてくれない為ですよ。ガラさんのお母様」


 ……ボロボロのガラ先生と、〖異界 不思議の国〗で対峙した最初のマザーグースの姿に似たエルフの少女が現れ……その数秒後、白ビキニの美しい美女が堂々とした姿で現れた。


「そ、そんな理由で私の大切なギャラハット君を傷つけないで下さい!」

「マ……マ……」ドサッ……


ガラ先生はそう告げると静かに意識を失った。


 不味い、あれは本物だ。本物の白い悪魔。聖女エリスじゃないか!


「……意識を失ってしまいましたか。では、蘇生魔法で治癒を施して、再び問いただしましょう……てっ! サーシャさん。こんな所に居たのですか?やっと見つけてましたよ……隣の可愛らしい男の子と女の子は誰ですか?」


「……あ、兄弟子……見つかっちゃった……殺される……私達……殺されちゃう……」


「……だから違う大陸に逃げるんだろう。それに聖女がここに滞在してくれるなら好都合だ。護ってもらっておこう。じゃあなゴリラ聖女よ。またどこがで……転移魔法〖水陸転移神〗」シュン!


なんじゃ? 皆に挨拶しないで旅立つのか? セツナ……」シュン!


「……オオオォォ…生き延びれたあぁあ……さようならガラ先生……」シュン!


「……消えてしまいましたわね。あの子達はいったい……ガラさん。そろそろ起きて下さい。そして、あの子達の事を教えて下さい」

「ゴハッ!……」

「だ、だから、回復させながら、拳を振るわないで下さい! ギャラハット君が、私の子供から離れない!!」


 こうして、サーシャを仲間にした。俺とエスフィールは聖女エリスから逃げるかの様に、列島大陸(イザナギ)へと転移魔法で飛んだのだった。


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