行く前の準備は
〖黄金の宝物庫 極神の部屋〗
「これはどうだ? 黑衣装束 〖黑麼〗」
「駄目ね。〖黑〗の力が強すぎて力がバラけてるわ。全然、制御できていないわね」
極神・レヴィアタンが俺が放った〖黑衣〗を見てダメ出しする。
「マジか? 結構親密に動かしているつもりなんだけどな」
「〖色〗の二重がけなんて聴いたことも見たこと無いからあれだけど。濃すぎるわね。それで余計に〖黑〗の操作を難しくしているわ」
「そうか…じゃあ次にこっちを見てくれ、無属性魔法〖無辿〗」
ズズズ……
「〖黑〗と魔力を消したのね……何度か見せてもらったけれど、そっちは修行次第かしらね。でも、何でわざわざ、私の部屋で修業するの? こういう事は大蛇さんの方が適任だと思うわよ」
「いや、駄目なんだ。最近の大蛇は呑んだくれに戻ってしまったし、この二つの新しい力は余り外では、人に見せたく無いんだ」
「それで私の部屋って事? ついでに私に色々な戦い方を教えてもうと?」
シュパンッ!
「ああ、頼むよ。レヴィアタン先生。」
パキンッ!
「それは良いのだけど。やっぱり問題なのはその体よね。成長仕切っていないのに、かなり負担をかけているんじゃないのかしら?」
「負担? いや、そんな感覚はないんだけどな?」
「……アテナの〖女神の祝福〗で毎回、体を調整しているから、その恩恵かしらね?魔法世界と地球では、時間の流れが刻一刻と変わるのを利用して身体への負担を軽減しているとか?」
レヴィアタンはそう告げて、俺への攻撃を止めた。彼女は一度考え始めるといつもこうなる。神話の時代から長くそうして、自分で考え、吟味し、ちゃんとした答えを見つけるのは神の立場として、当然の義務らしい。どこぞの幼女として地球を楽しんでいるアナスタシアと、呑んだくれにとかした黒龍に見せてやりたいもんである。
つうか、アイツら最近、地球での生活に慣れて来て、だらけ始めてんだよな。だからこうして、地球に戻って来てからは、極神のレヴィアタン先生に師事しているのだ。
そして、彼女はとても優しく的確にアドバイスや戦い方を教えてくれる。暗黒大陸の海の支配者なのに凄く優しいんだ。ぶっちゃけ母の様に見えてきてしまう。
「あら? ごめんなさい。私、また考え事をしていたわね…てっ、顔汚れているわよ。拭きなさい」
「んぉ……ありがとう……何かレヴィアタンってお母さんってさあ、暗黒大陸の神様なのに優しいよな? 面倒見が良いし」
「……突然、褒めても何もでないわよ」
「いや、ただ、そう思ったからさ」
「それは多分、私長く生きてきて、暗黒大陸に住む子達を育て、見守って来たからね。私は母なる海〖レヴィアタン〗。それが私の義務だもの」
レヴィアタンはそう言うと胸元に手を置いて小さく頷いた。
「義務? レヴィアタンにはもしかしてあっちで何か任されているのか? まさか〖暗黒大陸〗に変えるのか? 魔法大陸の〖神々の黄昏か?ラグナログ〗の奴等もだいぶ減ってきたしさあ」
「……いえ、帰らないわ。当分ね。貴方の事も心配だし、〖死の大地〗に隠れ潜む〖婦人〗にも会わないといけないもの」
「婦人?」
「こちらの話よ。それにしても貴方、少し変わったわね?」
「変わった? 何が? まあ、確かに身体は地球に戻って来て、多少は若返ったかもしれん」
「身体の事じゃないわよ。心の方よ……この〖黄金の宝物庫〗が数週間の間、外界と交わらなくなった時にでも何かあったのかしら? 私に師事を仰ぐ程の何かが?」
「……いや、それは……」
俺が〖異界〗や〖廃棄〗での世界での事を思い出し、変な表情をすると……
「まだ、言いたくないのね。ごめんなさい」
「何してんだ? レヴィアタン?」
レヴィアタンは俺の頭を手をやると強く抱き締めた。
「まだ、聞くタイミングでは無かったわね……貴方は少し頑張り過ぎ、そして、抱え過ぎなの……アリーナ様が貴方、一人に負担をかけすぎているせいね」
「いや、俺は全然、頑張ってなんていないぞ。俺や仲間に降りかかる火の粉を振り払ってるだけだからな」
「良いのよ。そんな言い訳をしなくて、そんな貴方が頑張っている姿を見るから、アナスタシアや大蛇はここに残っているの……私達をもっと信頼して頼りなさい。貴方を選んだ私達、神々をね」
「レヴィアタン……」
「この〖黄金の宝物倉〗が閉ざされている時に、貴方が誰と会って、誰とお別れして、どうして心にそわな深い傷を負ったのかは、まだ話してくれなくて良いわ。それ意外の事……貴方が悩んでいる事を、この私の部屋では話して良いのよ。私は決して口外しない……」
「……ああ、ありがとう。母なる海の支配者……レヴィアタン」
レヴィアタンは俺の頭を優しく撫でてくれた。そして、その後、数時間にも渡って俺が抱える悩むについて彼女に話し、彼女は俺の話を真剣に聞いてくれたのだった。
◇◇◇◇◇
「そう……貴方も色々と大変だったわね……今日は貴方の思っている事、悩んでいる事を聞けて良かったわ……決めたわ。私、〖神々の黄昏〗の驚異が終わるまでは貴方を支えると決めたわ……貴方はそれ程までに尊いのだもの……さあ、戦い方をの練習を再開しましょう。貴方が今よりも強くなる為に…」
彼女はそう告げると俺の頭をもう一度、優しく撫でた。