轆轤は燃ゆる
『列島大陸 西国』曼陀羅寺
「「「「「アーラーマーリーカーラージーセーオーガーダーラーガー、ゾーセーリーカージーラー」」」」」
「祖師様…無事に【触穢】により、あちら側の〖怪異〗に穢を取り憑かせる事ができました」
「おおぉぉ! ご苦労ですぞ! 七綾姫……〖救国の担い手〗が消息を絶ったとなどは戯れ言を、世界は別にあるのですぞ……この節操が産まれた場所、地球の様なね」
「………」
「そして、地球はかつて〖神秘〗に包まれていた神域が存在するのです。現代では禁則地と呼ばれる場所が……【八幡の藪知らず】……全ての狭間を閉じても、禁則地に残る呪い……〖怪異〗に多少の呪詛を伝える事は可能。〖神聖〗なきそちらでは〖神秘〗も〖魔力〗も使えませんな。呪われて死んで下され、顔も存ぜぬ救国の担い手殿!」
『地球』
「アハハハハ! 東から結界を無理矢理通って来てみれば上質な呪力が三匹も……お前達を食えば、私は数百年は生き長らえる! アハハハハ!」
「……マジかよ。アイツ。首が長い? 轆轤首って奴や?」
「蛇みたいじゃ。キモいのじゃ」
「神成君……もしかしてこうなる事が分かっていたから、ルアさんとアナスタシアを執事さんに頼んで帰らせたんですか?」
「いや、違うけど……それより、俺達以外に人が来たらって……誰も居ない?」
「アハハハハ! 人避けの呪いだよ。禁則地から目覚めたばかりで、結界も越えたせいで弱ってんだ。九条の者にでも見つかって祓われてもごめんだからね」
ん? 九条の者? ……九条だと?
「セツナ。どうする? あんな化物がいきなり現れては予想外じゃぞ。こっちでは〖魔法〗は使えん。あんな〖怪異〗とか言う存在に抵抗は……」
「いや……〖神気〗ならどうにか……」
「アハハハハ! 何を余所見してるんだい? 餌の子達?! 轆轤術〖落頭民〗」
首無しの頭が突然、出現する。
「「「「「アハハハハ! アハハハハ! 餌、餌、餌! 数百年振りの我等の餌!」」」」」
「アハハハハ! いきなり! アンタ達!」
その首達が俺達に向かって襲いかかる。
「ひいぃぃ! 来んですけど! 生首があぁぁ!」
「セツナ! 逃げるぞ! こちら側では私達は無力じゃあ!」
「いや、だから。俺には〖神気〗が……」
その時だった、その時、俺が首に下げている首飾りが赤く光出したのは。
(外が随分と騒がしいね? 何故、こっちで〖呪い〗が暴れているんだい?……〖火転〗)
シュッ……ボッ!
「「「「「アハハハ……ア? 」アアアアァァァ!! 顔が燃え、燃え盛る!!」」」」
「ア? 何だい? アタイの頭共が燃えていくだと?」
(……何故、東の禁則地【八幡の藪知らず】に封じられていた〖怪異〗が、こんな結界だらけの土地にいるんだい?)
「お前は〖灰神楽〗…起きたのか」
俺達を守る様にして、人間の背丈位の火竜が顕れた。この地球でも己の力が使用できる〖緋龍・灰神楽〗が。
(可笑しな。気配は朝からあったんだよ。だから、半眠の状態で起きていたんだ。それが幸を労すとわね)
『始祖・神集九煌』・〖七原龍〗‥‥‥‥‥〖緋龍・灰神楽〗
「アハハハハ! 何だい? お前は? アタイは黒の剣をあのガキから奪う為に目覚めたんだよ。奪って! アタイは更なる力をつけんだよ! 髑髏術〖轆轤塚〗」
轆轤首の首が枝分かれしていく。その全ての首が灰神楽へと向かって行く。
どうやら、あの轆轤首は、この場での最大の脅威と感じ取り、集中的に灰神楽に狙いを定めたみたいだ。
(無知故の蛮行だね。鳴神なんかにそんな事をすれば、一瞬で消し炭だよ……まぁ、自分の場合は焼失させるだけだけどね。さようなら。操られた〖怪異〗……〖火之魃〗)
轆轤首が立つ地面から突然、炎柱が起こり、髑髏首の身体を燃やしていく。
「アハハハハ! なんだい? この炎は……アタイの身体が燃やされる?……この世界で……今の〖神聖〗も魔力も無き、無力な人間共の世界で消滅させられ……る?……」
轆轤首が燃えていく。燃え、灰へと変わり塵に成り消える。
「……すげぇ、一瞬で倒しちまった」
「燃えていきますね…」
「……何故、ここに…お主の首に…〖七原龍〗の一柱がおるのだ。セツナ」
エスフィールが俺を問い詰めようと近寄って来る。
(じゃれ合いは後でにしてもらうよ。金髪の女の子……今はあの〖怪異〗について話し合わなければならなくなったからね)
だが、それを灰神楽が静止した。