動乱の朝が来た
〖地球・神成家〗
眠い、凄く疲れている。毎日、毎日のあれで身体も心も鍛えられてはいるが、やはり疲れるものは疲れるんだ……
ジリリリ!!……ジリリリ!! ガチャ!
「……まだ、寝させてくれ」
カチッ! ジリリリ!!……ジリリリ!! ガチャ!
「……まだまだ寝させてくれ……怠惰にいこう」
「いや、起きよ! セツナ。学校に遅刻するぞ」
「うるさい。エスフィールは……いつもうるさいんだ……ZzzZzz」
「貴様……叩き起こしてやれ。ルア、アナ」
「ウィー!」「カハハハ、任せろ! ユナ」
「……そうだ。今日はこのまま休んで修行の続きを……うわぁ!」
「ウィー! 起きろ。神成!」「セツ! 新しい朝が来たぞ!」
ドガッ!ポコッ!ドガッ!バキッ!
ドスンッ!
「痛てぇ~、何するんだ。ルア! アナスタシア!」
「何をするんだ! ではないは、このアホ! 魔法世界から帰って来てからというもの、堕落し始めおって。学校では生徒会にも入っのだから、もっとシャキッとせぬか! それから、早く私が作った朝食を食べて、学校に一緒に行くのだ」
「……エスフィール。朝から騒がしいぞ。そんなに怒ってるとストレスが溜まって行く一方……ごがぁ?!」バタンッ……
俺の脳天にエスフィールの手刀が直撃し、俺は床へとぶっ倒れた。
「ウィー、神成。逝ったー!」
「カハハハ!短い人生だったな。セツ」
……コ、コイツ。朝から俺に暴力を振るいやがって覚えてろよ。
「なんじゃ、その反抗的な眼は? 良いから早く学校に行くぞ。可憐も待ち合わせ場所で待っておるのだ。急ぐのだ」
「……はいはい。了解しました。魔王様」
「うむ。素直で宜しいぞ。勇者殿」
〖神成家 リビング〗
カチャカチャ……
「オムレツに…搾りたてのオレンジジュース…作り立てのポテトサラダ……メチャクチャ手が込んだ料理がこんなに沢山。朝から頑張り過ぎじゃないか?」
「食は健康の基本じゃ、ちゃんとバランス良く作り、食べねばならん。それにルアとアナも手伝ってくれたから、それ程、頑張っておらんぞ」
「成る程……つうか、エスフィール。少し会わなかった間に、料理の腕メチャクチャ上がってないか?」
「剣技大陸で暮らしていた時、毎日の様に作っておったからのう。それと私はこの家のメイドさんなので、できて当たり前じゃ」
「へー、じゃあ、アレイさんの家に居たのか」
「うむ。黄金の輝きの様な楽しい日々であったな。レイカやアレイ殿達と過ごした日々は……」
「……そうか」
「うむ……」
エスフィールは時々、剣技大陸の事を思い出しては、ボーッとしたり、寂しそうな顔で遠くを見つめる事が増えた気がする。
魔法世界に戻れば、魔道船〖ユピテル〗で、いつでも会う事は出来るんだろうが……彼女は剣技大陸で暮らした日々こそが、黄金の輝きと例える程の楽しい日々だったということなんだろう。
「しかし、セツナよ。話は変わるがのう。あの時は本当に驚いたのだぞ。魔道船〖ユピテル〗の船主でレイカとエドワードが作った転移魔法陣からお主がで出来た時は皆、驚いておったのだ」
「あー、あれなぁ。皆には本当に心配かけたよな。悪かったな」
「いや、お主が無事ならそれで良いのじゃ。良く無事で帰って来てくれた……本当に良かったぞ」
「そうか。エスフィールは心配してくれたのか、ありがとう……」
あの後……ソフィアさんが居た部屋の扉を開けた後。何故か、俺は魔道船〖ユピテル〗の船主に立っていた。
どうやら、エドワードに渡していた簡易転移魔法陣を、アイツがセットしてくれていたらしい。
俺が現れた時には、もう、剣技大陸に帰ってしまったらしい。
何でもエスフィールから聞いた話では、〖神々の黄昏〗の悪海賊エクシスに襲撃を受けたが、何とか勝ち。倒したらしい。まさか俺が〖異界・不思議の国〗や〖アグナの廃棄炉〗を旅をしている時に、そんな事になっていとは、思わなかったな。
それから、俺が〖アグナの廃棄炉〗に落とされた事は、エスフィールを始めとした仲間達には何も話していない……〖神々の黄昏〗に負ければ、魔法世界が滅びるという恐ろしい事実は、まだ伝えるべきではないと思ったからだ。
いや、あの旅で負ってしまった心の傷が癒えるまでは、言いたくないだけか……つまり俺のただのエゴだな。
そして、スカサハはやはりどこにも居なかった。白い世界にも、魔道船〖ユピテル〗にも。
まるで始めから居なかったかの様に、居なくなってしまっていた。いや、〖アグナの廃棄炉〗での四人の黄金の様な旅はあった。あったんだ。だから、彼女も、スカサハも必ず魔法大陸のどこかに戻ってきいる筈だ。必ずな。
〖アグナの廃棄炉〗の四人の旅は幻でも何でもない、アルベルトもアイリスもスカサハもちゃん居た。その証拠に、俺は新たに無属性魔法が使える様になったんだ。あの旅にちゃんと意味はあった。ちゃんと俺の成長に繋がったんだ。
だが、仲間の前ではまだ、無属性魔法は使わない。取り戻し、進化した〖黑衣〗もだ。
この二つの新しい力は今後、余り使わないと決めてある。密かに鍛え、極限まで鍛え。いつか来るであろう〖神々の黄昏〗との大規模な戦いの切り札として使用する。それもこれも、確実にアイツを殲滅し、確実に勝つ為に密かに鍛えあげる。
……しかし、いきなり三人もの〖神々の黄昏〗が倒されたのか……そろそろ動き出すのかもれないな。大アルカナ〖教皇〗トルギアス・アトスよりも高位の〖主格〗達が。
〖聖豊中学・校門前〗
キーンコーンカーンコーンー!
「ウィー、神成。ユナママ! 小学校行ってくりゅー!」
「カハハハ!楽しんでくるぞぉ!」
「おー、ちゃんと勉強してこい。金髪幼女と銀髪神様」
「放課後に迎えに行くからのう~」
ルアとアナスタシアが聖豊中学に隣接する聖豊小学校の校門へと向かって行く。
「あー、やっと来ましたか。神成君、ユナさん。遅刻ギリギリですよ! 神成副会長」
「いやいや、これでも間に合う様に早く家を出たんだぞ。可憐生徒会長。なぁ、エスフィール書記」
ポカッ!
エスフィールが俺の脳天を軽くチョップする。
「遅刻しそうになってた者が何を抜かしておる。アホウ」
「誰がアホウだ。俺は勇者だ」
「……ではアホ勇者だのう。お主は」
「……あの朝から私の前でイチャイチャしないでくれませんか? お二人共……全く。魔法世界から戻って来てからは特にイチャイチャして」
可憐ちゃんが俺とエスフィールを交互に見て呆れて果てていた。
『魔法世界・列島大陸』崩壊した『星読の谷』
「おや、底に眠っていたのかい。今、助けてあげるよう。僧侶君」
スパンッ!ドガアァァン!!
「……おや? おや、おや、あれは久しぶりに見る雪空ですな。そして、その空に浮かぶは節操の主様ではありませんか」
「観勒君。〖女王〗〖海賊〗〖運命〗君達が一気に居なくなったんだ」
「おおぉぉ! それは何とも悲しい出来事が! 節操が眠っている間にその様な事が起こるとは、節操、悲しくなりましたぞ」
「うん。僕もだよ……だから、少し、列島大陸の攻略を急ぐ事になってしまってね。だから、君を起こしに来たんだ」
「おぉぉ! ならば節操のお力を貴方の為に振るいましょう!……この呪術の力を」
『〖神々の黄昏〗・大アルカナNo.16
〖塔〗・西国の覇者 観勒』
「うん……期待してるよ。観勒君、それでは共に戻ろうか。僕達の帝都にね……そして、そろそろ終わらせようか。将軍君との戦争をね」
『〖神々の黄昏〗・大アルカナNo.4 〖皇帝〗・『和国の帝 ヤマトタケル』
〖和国動乱編〗開幕……
明けましておめでとうございます。
今年も〖最終決戦でしたが何故か魔王と一緒に元の世界に帰還しました〗をよろしくお願いいたします。
この物語も約6割まで書き終わりました。
いよいよ、このお話も折り返しですね。最後まで書きあげる様に頑張りたいと思います。
今年もよろしくお願いいたします。