恢復決戦 No.0 向来の果ての未来へ
カツン……カツン……カツン……
白い世界に居た。
真っ白な世界だ。
上下左右どの方向を見ても、白、白、白。
雪原の中にでもいるのか?
スカサハは何処に行ったんだ?
ちゃんと手を繋いでいた筈だ。
確りと。
彼女を探さなくては。
……ただ歩く。ひたすら歩く。
彼女を探してひたすら、ひたすらに……
何もない白い世界を他方もなく歩く。
「本当に何も無い、誰も居ない、俺しか居ない世界」
……独り言を言った後にまた、歩き始める。
疲れがで出来ても歩く。スカサハを、仲間を探す為に歩く。
でも居ない。誰も居ない。何も世界。
そう思っていた。
そう思っていたら、目の前に突然、白い扉が現れる。
「? 白い扉? 何でいきなり現れたんだ? いや、それよりも。あの扉の向こうにいるかもしらないな。スカサハが……」
縋そして、俺は藁をも縋る思いで、白い扉のドアノブに手を掛け、勢い良く開け放った。
◇◇◇◇◇
ガチャ……キイィ……
〖叡知の部屋〗
「ワァァ~! 本当に来てくれました~! いらっしゃいませです~、セツナ様~」
「……ソフィアさん? 何で、ソフィアさんがここに居るんだ?」
「はい~、私、どうやら〖神々の黄昏〗の一味さんの一人だったみたいです~」
「は? 今、何て言ったんだ?」
「はい~、ですから、私、〖神々の黄昏〗の一味さんの一人だったみたいです~」
……わけが分からない。白い世界に突然、白い扉が現れて、扉を開けたらソフィアさんが居て。そして、ソフィアさんは〖神々の黄昏〗の一員だった?
どういう事だ?
「それがですね~、もし、〖神々の黄昏〗さん達がもし、負けちゃいそうになった時に、セツナ様を〖アグナの廃棄炉〗に落として、それでも現代に戻って来るようだったら、未来に飛ばす役目が私だったみたいです~」
「ソフィアさんが俺を未来に飛ばす役目……ですか」
「はい~、そして、この世界が未来の魔法世界何ですよ~」
いや、未来何ですよ~って言われても、何も無いんだが。
「はい、何も無くなっちゃいました。〖神々の黄昏〗の方達は、セツナ様が戻って来ないと分かると、ユグドラシル、ヘファイストス、ヘスティア、フレイヤ、ティアマトの各地方に一人一人赴いて、各国の主要な王様や実力者を皆、殺してしまったんです」
「各国の主要な王様や実力者を皆、殺しただと?」
俺はそれを聞いて怒りが込み上げて来た。俺が今までの旅で知り合って来た人達が未来で殺されただと?
「そんな事、許されるかよ……お前らの仲間を倒してきたのは俺なんだぞ。殺るなら俺を狙えよ! 何で無関係な人達を殺すんだよ!」
俺は怒りと共に悲しみが込み上げて来て……泣いた。
「……それからは惨劇でした。ユグドラシル地方ではセルビア国の王族は全員殺され、地下空洞の〖妖精国〗へと進入し、そこから〖魔窟〗を経由して、暗黒大陸に上陸して制圧。〖死の大地〗では、〖天の機門〗が開けられてしまい、天空大陸は落とされました。そして、剣技大陸は各他方で反乱が起きて戦乱状態に、列島大陸は将軍が追放され、神々が跋扈する魔島と化してしまいました。唯一無事だったのは氷雪大陸と幻想大陸だけでした。ですが、それも時間の経過と共に進行され、堕ちました……」
……ソフィアさんから聞いた俺が居なくなった後の魔法世界は、俺が想像していた以上に悲惨な状況になってしまった様だ。
「そんな……アルディスも死んだのか?……その全てが終わった後の結果が、この白い世界って事か?」
「はい……」
「〖神々の黄昏〗の奴等はこの世界を破壊した後、何処に行ったんだ?」
「……私を監視役に残して、別の世界に行きました。その世界も崩壊させると言って」
「そうか。地球、以外にも別世界があるのか……そして、そこでまた、ここと同じ事を繰り返す……だと?!」
怒りが込み上げる。心の底から沸き上がる。
「セツナ様……」
「あぁ、いや、ソフィアさんには怒ってないよ……ソフィアさんは、俺の監視役で……何も知らなかったんだろう……それでここに一人取り残されて……一人で……」
そのソフィアさんの扱いにも腹が立つ。
「……セツナ様。取り戻したいですか? 未来を」
「……は? 今、何て言ったんだ?」
「取り戻したいですか? この世界……魔法世界の未来を……それが出来るとしたら、取り戻してくれますか? 私の……私達の未来を、いいえ、私も協力しないといけませんね……こんな未来にしない為に……」
彼女はそう告げると、白い床に目を伏せた。
「ソフィアさん?……あぁ、取り戻せるなら、取り戻したい……エスフィールを……アルディスを……ソフィア……君を救いだしたい……必ず」
「……セツナ様……そうですか……そうですよね。私が今後、知っているセツナ様なら、そう言うと思っていました………大アルカナNo.22……起動……〖叡知〗……再帰の光を……」
「……ソフィアさん。君、身体が消えて……」
「セツナ様……貴方にばかり負担を押し付けてしまってごめんなさい……現代の私に会ったらお伝え下さい。貴女は間違っていたけど、最後の選択は間違わなかったと………それでは……さようなら……私の大切なセツナ様……」
「お、おい……何処に行くんだ! ソフィアさん……ソフィア!!」
「この世界の未来を絶対に取り戻して下さいね……」
ソフィアは最後にそう告げると、黄色の粒子となって消えていってしまった。
「……わけわかんねぇよ……いきなり、白い世界だの……ソフィアさんが〖神々の黄昏〗の一人だッだの……君がいきなり消えるのもさぁ……ここに居る未来の君が犠牲になって良いなんて事があって良いのかよ?……それをアイツら〖神々の黄昏〗は何も感じないのか?……一人の女の子がこの世から消えたんだぞ」
俺は心の底から怒り……虚しくなり、決意する。
「帰る……帰って君の仇を必ず撃つよ。必ず! 全ての〖神々の黄昏〗を倒す! 仲間達と共に、現代の君と共に必ず! 未来の君の為に倒してみせるよ……だから、見守っていてくれ……今後の俺の戦いを……魔法世界を救う俺や仲間達の戦いをな」
……俺はそう告げて、最初に入って来た扉のドアノブに再び手をかけゆっくりと開く。
「……またいつか、君と生き返らせる方法を見つけて、必ずここに戻って来るよ。未来のソフィア……だから、その時は御礼をさせてくれ。俺を助けてくれた恩人、ソフィア……本当にありがとう」
キイィィ……ガチャ……
そうして俺は白い扉を静かに閉め。元の現代の魔法世界へと帰還した。
ソフィアが教えてくれた、魔法世界の最悪の未来を回避する為に、一人の未来の少女を取り戻す為に、俺は決意を新たに元の場所へと帰還する。勇者として帰還する。真の戦いを制す為に戻る。
俺は必ず残りの〖神々の黄昏〗を倒すと胸に誓った。
向来の果ての未来へ
終
第四部〖忘却想起・向来編〗』終了……
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