輪廻決戦・〖この魔力を以て、その運命を屠る〗No.3 影の世界と虚無の世界
「グヘェ、ここは魔法世界から不要と判断されて、棄てられた奴等が集まる廃棄炉。だから、色々、情報を持った奴等も自然と集まる。だから、お前等は義母さんの邪魔なんだ。義母さんは俺を拾ってくれた恩人。そんな人の為ならなぁ‥‥俺は何でもするんだぜぇ。それが家族って奴だもんなぁ! 獣混魔法〖暴虐混獣〗」
「驚愕‥‥悪童カルマの身体が肥大化している」
「スカサハ御姉様。あの人の身体、可笑しくありませんか? 色々な所の部位の形が骨や牙や皮膚が違う様な。それに失くなった筈の右腕も新しく生えて来るなんて」
「〖魔窟〗は‥‥暗黒大陸はデタラメな場所なのよ。他大陸との交流は殆んどないの。でも〖法〗は確りしていると聴くわ。それを守れないと彼みたいに追い出される様ね」
「グヘェグヘェグヘェ。あぁ、厳しい、あそこは俺にとっては厳しかったぞぉ。雑魚を痛ぶるれねえし、合成獣の実験もさせてくれねぇ、だからよおぅ‥‥他の奴等を痛ぶって実験が出来ねえなら様。ヤルしかねえよなぁ? 自分自身の身体で実験をよおぅ‥‥〖死騎の剣筋〗」
悪童カルマの左腕の肉塊が剣の形へと変化する。なんておぞましい魔力を帯びているのかしら。
あんな不気味な力で斬られたら、どうなるか分からないわ。
‥‥あれは多分、暗黒大陸の種族の力を自身の身体で再現しているのね。
「安心‥‥カミ君とアルベルトはここにはもう居ないのね。アイリスはこの戦いが終われば元の時代に帰ってしまう‥‥なら、ここで見せても魔法大陸の人達にはバレないわね」
「どうしまますか? スカサハ御姉様。あの人、私達に剣を振り上げてるんですけど」
「グヘェ、取りあえずお前等は切り刻んで、細切れにしてから合成してやるよぉ!」
「発動‥‥〖影と結晶魔法〗‥‥『紫影の世界』」
世界が広がる。
構築される。
神話魔法の〖具現化〗の力を纏う、神話魔法と現代魔法の表裏一体を併せ持つ、特異な複合魔法。
〖影と結晶魔法〗はスカサハが〖死の大地〗意外では決して使用しない魔法である。
かつて神話時代の〖聖の大地〗の一部を模倣して創り上げた偽りの世界。
それがスカサハの神話魔法〖紫影の世界〗。
「グヘェ‥‥何だ? この魔法は? 一面宝石の世界? 義母さんと俺達の家はどこに行った?」
「解答‥‥ここは神話時代に栄えた影の土地。かつては聖なる地とされ、彼等に奪われた聖なる地。その聖なる影の土地は悪を拒絶するわ。〖影の晶剣〗」
私は結晶で巨大な剣を創り出し、悪童カルマへと振り下ろす。
「グヘェ、これだから本当の力を最後まで隠して戦う奴とは殺り合いたくねぇんだよな。可笑しな事を平気で始めやがるからよぉ! 真っ二つに成りやがれ! 影の姫」
ガキンッ!
「無理‥‥この空間では、私が一番強いもの」
「グヘェグヘェグヘェ、死騎の剣を真っ正面から平気で受け止めるのかよぉ。スゲェ、スゲェ、なら、これならどうだ? 暗黒大陸の亜獣の踏みつけは?‥‥〖獅獣の踏怒〗」
悪童カルマは高く跳び上がった。高く、高く、高く跳び上がり、私達の真上へと落ちてくる。
「グヘェ、さぁ? どう対象するんだ? お前等。見せてくれよ。俺に間一髪で避ける感動をよぉ。そうすれば俺は負けを認めてやっても良いんだぜぇ? グヘェグヘェグヘェ」
「スカサハ御姉様。あんな大きな身体で潰されたら、私達。死んじゃいません?」
「正解‥‥即死ね。でも大丈夫よ。アイリス。ここは私が支配する影と結晶の世界だもの、負けられないわ‥‥〖紫結晶の槍連〗」
結晶で創られた偽りの槍が悪童カルマの巨大な身体に突き刺さる。
「グヘェ?! 何も無い所から槍が現れやがった?! 面白い攻撃をするじゃねえか。影の姫! それじゃあ、俺もそれに応えてやるよ! 獣混魔法〖合獣解放〗」
「スカサハ御姉様! カルマって人の身体が分裂して複数の怪物に変化しました」
「試練‥‥なら、あれを貴女の無属性魔法で全て消滅させなさい。アイリス」
「へ? 私がやるんですか? 私はてっきりスカサハ御姉様が倒すのかと思ってました」
「拒否‥‥この闘いはアイリス。貴女、自身の魔法向き合う為の闘いなの。必要な闘い‥‥どうかその力で私を守り、助けて欲しい。アイリス」
私はアイリスの両手を握ってお願いする。彼女が今後の未来で、無属性魔法を間違った方向へと使わない様に願いながら。
「スカサハ御姉様を‥‥助けるですか?」
「明答‥‥アイリス。貴女は今後、自身が持つ魔法によって沢山の選択を迫られるでしょう。時には誤った選択もする時もある。だから、その度に思い出してほしいのよ。この闘いで貴女が、貴女の魔法が私を救ったのだと。貴女の魔法〖無属性魔法〗は人を救える立派な素晴らしく魔法だという事を」
「‥‥私の魔法が人を救える‥‥立派な魔法?」
「えぇ‥‥だから、私達に向かって来る、彼も救ってあげなさい。ラグナの輪廻から解き放ってあげるのよ」
「助ける‥‥解き放ってあげる‥‥私にはその力がある。スカサハ御姉様やあの人を自由にしてあげる力が‥‥無属性魔法‥‥〖虚無の安らぎ〗」
その色は誰にも見えない無色の魔法。その魔法が球体となり、空中落下する悪童カルマの心臓部へと至り‥‥悪童カルマの身体は〖思考の結晶〗を残して消滅していく。
「グヘェグヘェグヘェ!! すげぇ、すげぇぞ。お前等、俺は悪童とまで言われた。悪人だがよぅ。すげえ感動させてもらった‥‥感動は良い。感情が豊かになるからな‥‥それを教えてくれた義母さん感謝するぜぇ! グヘェグヘェグヘェ」
(グヘェ‥‥〖ベルゼ〗の野郎。こんな所に棄てやがって)
(あらぁ!! 貴女、迷子ちゃんなのおぉ? どうしたの? 怪我してない? お腹すいちゃった
)
(グヘェ? 誰だアンタ?‥‥)
(そうねぇ! 私は貴方の運命のお義母さんかしら?)
(お義母さんだぁ?)
(そうよぉ! さぁ、さぁ、貴方の不幸な時間は終わりよぉ! これからは毎日がハッピー! 感動の日々にしなくちゃねぇ! 忙しくなるわよぉ!)
(‥‥変なオッサンだな。アンタ‥‥グヘェ)
「グヘェ、義母さん。俺は負けちまったが‥‥最後に奴等に感動させられたぜ!! あばよう! グヘェグヘェグヘェ!!!」
シュンッ!
「‥‥笑いながら、消えて行った?」
「勝利‥‥〖思考の結晶〗を残してね‥‥これは私達に対する報酬か何かかしらね? これで少しはアイリスの帰りを遅らせられる様に‥‥それにしても」
「わぁ! 何ですか? スカサハ御姉様」
「感動‥‥良くやったわ。アイリス‥‥貴女の魔法は素晴らしい。人を守れる立派な魔法よ。頑張ったわ」
私はそう告げてアイリスを抱き締める。
「スカサハ御姉様‥‥ありがとうございます」
私の願いがアイリスにどれだけ届いたからは分からない。けど、私は信じているわ。自分の時代に帰った後のアイリスが無属性魔法を正しく使いこなして、大魔法使いにくなる事を‥‥