輪廻決戦・〖この魔力を以て、その運命を屠る〗No.1 運命の者達
白い館の扉を静かに開ける。
ガコンッ‥‥ギイィ‥‥
‥‥白い館の中は二階建てになっており、中世の時代の貴族の屋敷の用な造りになっていた。そして、入り口近くには二階へと続く階段があった。
その階段の一番上の手摺に人の気配があった。
「お前ら侵入者か? それとも新しい混ざりの実験体か? あー? おい?!」
灰色の髪色に茶色の肌をした少年が階段の手摺に座り、俺達を眺めていた。
「あ、貴方は! あの時の!」
「んー? あー、何だよ。お前、狭間で棄てたと思ったら生きてたのか?」
アイリスが声を荒げながら怒るっている。目の前の少年と何かあったんだろうか?
「アイツと知り合いなのか? アイリス」
「ぜ、全然、知りませんよ。あんな人! 私が森の中で薬草を採取していたら。いきなり現れて、変な空間に引きずり込まれたんです! あの灰色髪の人に!」
「グヘェ‥‥俺の名はカルマ。〖悪童合成師〗のカルマだ。グヘェ‥‥その女は将来、〖恋人〗や〖審判〗を殺すきっかけになる娘を宿すと、義母さんは言っていた。だから、現況であるお前は邪魔になるんだとよ。だから潔く死んでくれ。グヘェグヘェグヘェ」
「そうですね。ならばその隣に立つ。カンナギの血筋の方にと死んでもらいましょう。カルマ、そうすれば剣技大陸はもっと戦乱に荒れますからね」
兄貴だと? どうみても女性にしか見えないが? それにあの顔立ちどこかで見た事がある様な?
「グヘェ、セブンの兄貴。降りて来たのかい?」
「えぇ、御姉様が【カルマちゃん一人だと心配だから、私達も上に行きましょう。セブンちゃん】と言ってね。無事で良かったですよ。カルマ」
「グヘェ!! 当たり前だろう」
カルマとセブンとか言う奴等が会話が一瞬止まる。
「「ヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシ!!!‥‥運命の再会! 無事で何よりよおおぉぉ!!」」
‥‥奴等はお互いの頭を撫出会いながら、頬擦りし合っていた。
「‥‥相変わらず。意味の分からないやり取りをするのだな。セブン‥‥いや、ナナシよ」
「んー? その声は私の元親友にして戦友の‥‥カンナギ・アルベルト君?‥‥私を見棄てて殺した。カンナギ・アルベルト君ですか? 人殺しの?」
「見捨てた? アルベルトがアイツを?」
「違う。ワシは見捨ても殺してもいない。ナナシはそもそも〖時の渡り人〗。この世界のどこにも存在する筈がないのだ‥‥お前、ナナシの身体の一部で何をした?」
「‥‥おや? 早バレ過ぎませんかね? もう少しで仲間割れでも起こしてくれると思いましたが。カンナギ・アルベルト。貴方は私の顔を見た途端に、私を追い掛け、こんな歪みの世界まで追って来た。それ程に大事ですか? この顔の本当の持ち主に? ヒヒヒ!!」
「‥‥あぁ、大切だな。ナナシは大切なワシ‥‥いや、今は止めておこう‥‥今はお前を倒し、元居た時代に戻る事が最優先だ。さすれば、ナナシともまた、会える」
「キヒィ、恋で脳が焼かれた方は騙されやすくて助かりまねえ。想い人の顔で簡単に釣れるんですから。ですが帰らせまんよ。歪んだ歴史にする為にもね」
「やれるものならやってみろ‥‥カミ、スカサハ、アイリス。セブンの相手はワシがする。良いか?」
アルベルトはそう言うと俺達一人一人をゆっくりと目を合わせた。
「いや、それは構わないが、どうしたんだ? 何かセブンとか言う奴が現れた後から様子が変だぞ、アルベルト」
「だろうな‥‥ワシの心は今、大いに乱されている。ナナシに似た顔のアイツを見た事でな。あっちの時代が心配になってしまったんだ。早く帰りナナシに会いたくなった‥‥多分だが、あのセブンやカルマとか言う奴等を倒せば、奴等に連れて来られた者達は元の時代に帰れると思うが‥‥カミ、スカサハはどう見る?」
「あれ? 私には聞かないんですか?」
アイリスが少し怒り気味に抗議するが、今は敵と遭遇しているのでそんなの無視する。
「次元の狭間を開けた原因がアイツ等にあるのなら、十分可能性はあると思う」
「同意‥‥私もカミ君と同じ意見よ」
「‥‥そうか。ならば、お前達ともここでお別れになるか‥‥短い間の旅だったが、貴殿等からは色々と学ばせてもらった。感謝する」
アルベルトはそう告げると。俺達にお辞儀をした。
「‥‥なんだよ。いきなり、まだ別れるなんて決まってないだろうに」
「いや、決まった。これからのセブンとの闘いでのワシのは、全ての力を使い勝利を必ず掴む。さすればワシは一足先に自分の時代に戻る事になるだろう」
このアルベルトの目は‥‥あぁ、そうか。アルベルトにもあっちで待っている仲間がいるんだな‥‥ちゃんと。
何が王は孤高だよ。お前には大切に思う仲間や想い人がちゃんと居るじゃないか。
良かった‥‥それをこのタイミングで教えてくれて、知れて良かったよ。アルベルト!
「アルベルト‥‥別れる前にこれを渡しておくよ。今回の旅の報酬‥‥いや、俺達とお前の仲間の証だな」
俺はそう告げて、〖最果ての孤島〗に保管していた魔道具を入れた腕輪をアルベルトに渡した。
「‥‥カミ。これは?」
「確か魔法大陸は剣技大陸の西に位置してるよな‥‥そうだな西の魔法使いからの‥‥〖西の賢者〗からの贈り物って所だ。アルベルト‥‥お前とこの世界で出会えて良かった。これまでの旅を共にできて良かったよ‥‥だから、勝って来い、勝って元の時代にちゃんと帰るんだぞ。親友!」
俺は静かにアルベルトの右肩に手を置いた。
「カミ‥‥よ。お前、今、ワシの事を‥‥」
「あ、あの!私達は?‥‥もが?」
「静寂‥‥今は静かにしていなさい。アイリス」
「(は、はい‥‥)」
アルベルトは一瞬、驚いた顔をしたが、それは一瞬だった。次の瞬間からいつものふてぶてしい顔付きに戻る。
「‥‥というわけだ。呑気にワシ達のやり取りを鑑賞していて良かったのか?セブンとカルマとやら」
「グヘェ‥‥ずびぃー、感動の場面は邪魔するなって、義母さんから教育されてるからな。ずびぃー」
「右に同じですよ‥‥ゲフン、ゲフン‥‥ねぇ?御姉様」
御姉様?‥‥セブンの奴は何を言ってるいるんだ? ここにはカルマとか言う奴しか‥‥
(そーオーねー! 私も感動しちゃったわよぉ! 担い手ちゃんとカンナギちゃんのやり取りには‥‥でも許さないわぁ~! だって、こっちもかなりの仲間を倒されてるですものねぇ!!神明魔法〖螺旋の定め〗)
「‥‥! 下から来るぞ!避けろ! 黑衣装束〖黑暗幕〗」
「強力‥‥アイリス。私の手を掴みなさい」
「は、はい。スカサハ御姉様」
「この魔道具とやら、しっかと受けとたぞ。カミ! ではな!」バッ!
俺がそう叫ぶと同時に、白い館の床から虹色の光が飛び出してきて、俺達を襲った。
スカサハ、アイリス、アルベルトに黑衣を纏わせ、下から来た攻撃の衝撃から仲間を守り、スカサハはアイリスを自身の身体に抱き寄せ、アイリスを守る。そして、アルベルトは‥‥
ガキンッ!!
「待たせたな! ナナシの偽顔‥‥その顔、切り割いてやろう」
「キヒィ! 良い面構えですね。カンナギ・アルベルト」
「グヘェ‥‥じゃあ、俺はあの女二人を捕まえて、合成しに行って来るかな。グヘェグヘェグヘェ!!」
〖白い館の一階〗
「あら? ヤダー!四人共無事なんて、私、ちょっとショックなんだけどぉお!」
「出たな。オカマ男‥‥いや、フォルトゥナ!‥‥お前を倒して元の時代に帰らせてもらうぞ」
「ウフン‥‥〖神秘〗も〖神煌具〗も神々の助けも得られないのに、私に勝てると思っているの? 担い手ちゃん。その思い上がり、貴方が敗北する運命になっちゃんじゃな~い?」
〖神々(ラグナログ)の黄昏〗 大アルカナNo.10〖運命〗 『アグナの廃棄炉の番人 フォルトゥナ』
今後の運命を決める戦いが今、始まる。