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旅は順調につき館へ至る


 意外な事にセカンドとか名乗る猪の化物の襲来以降、アルベルトの態度が軟化し始めた。


 俺達と過ごすのが苦にならなくなり始めたからだろうか?


 北を目指すここ数日の旅でも、スカサハやアイリスに積極的話し掛けていたしな。


 まぁ、あの二人はアルベルトを警戒して、あまり上手くお互い話せていなかったけど。


〖四日前〗


「修行‥‥影晶(けいしょう)魔法〖千の赤晶〗」


「わわわ! 来ます! カミさーん!」


「架空の仮説しか書いていなかったとはいえ、無属性魔法の理論は読んだんだろ?  なら、後は自分の中の魔力回路と頭の中の無属性魔法の知識を紐付けてだな」


「‥‥どんな変態にして天才だ。そんな事を言われても普通の者には理解できんぞ。カミ。魔法少‥‥いや、アイリスよ」


パキンッ!

「ヒイィ! は、はい‥‥何ですか? アルベルトさん」


アイリスは一瞬、びっくとしたが、草原の時の様にアルベルトに物怖じせずに話返せた様だ。


「自分の中の自分を疑うな。自分だけは最後まで自分を信用してやれ、そうすれば、お前の魔法はお前に応えよう」


「自分を疑うなですか‥‥わ、分かりました‥‥私は魔法を‥‥使いたい。魔法を使って一人前になりたい。だから‥‥自分を信じるから出で! 無属性魔法!! 〖アンチ・マジック〗」


「継続‥‥影晶(けいしょう)魔法〖赤の結‥‥」パキンッ!‥‥パンッ!


「な? スカサハの魔法が崩れていく?」


「ふっ‥‥どうやら上手く出せた様だな。無属性魔法とやらは、これで更に確率が上がったな」


「確率? この世界からの脱出の為か?」


「あぁ、まぁ、そんな所だな」


俺とアルベルトがそんな会話をしている頃、アイリスとスカサハというと。


「祝福‥‥おめでとう。アイリス。魔法、出せたわね」


「‥‥スカサハ御姉様。私‥‥私‥‥うわあぁんん! 私、魔法が使えました! やっと、やっと。自分自身の力だけで、自分を信じて私だけの魔法があぁぁ!!」


「努力‥‥アイリスは頑張ったわ」


そして、その後もアイリスの無属性魔法の修行は続き‥‥


「〖無天の消失〗‥‥おぉ、俺もだんだん慣れてきて規模は小さいけど。使え始めたぞ。アイリス‥‥痛っ! 何すんだ?」


「何でちゃっかり貴方まで少しだけ使える様になっちゃってるんですか? バカなんですか? 変態、何ですか? 貴方は? ウエェェン! スカサハ御姉様!!」


「天才‥‥流石、規格外の勇者」

「未確認魔法の使い手が何で一人から二人に増えるんだ? カミよ」



三日前〖トリシューラの洞窟〗


三日前に通ったトリシューラの洞窟はとても幻想的だった。


「凄いな。全て、魔石で出来ているのか? こんな‥‥場所が魔法世界(アリーナ)のどこかにあるなんて、想像できないな」


剣技大陸(アルトネ)から北の大陸にその場所があるとは聴いた事はあるな。何でも〖氷姫帝・イヒカ〗が治めていると、氷雪大陸の出身の友は言っていたな」


「〖氷姫帝・イヒカ〗? それって七氷帝の‥‥」


「あぁ、未開の地多き氷雪大陸の神の一神だ」



二日前〖夕闇の渓谷〗


「ギャシャアア!!」「キエエエ!!」「ギギギ!!」「ゴギギゴア!!」「ギコギゴギャ!!」


「異形‥‥影晶魔法〖影の晶針〗‥‥北に近付くにつれ、怪物達の数が増えているわ」


「〖桜花・秈〗‥‥それに最初にワシ達が居た草原や森の時とは違い、言葉を話す者達も少なくなってると思わんか? スカサハよ」


「合意‥‥最初の合成獣と名乗っていた人達は、まだ、会話が成り立っていたけど‥‥」


「ギガウエ‥‥ダガセ‥‥」ザシュンッ!


「この渓谷の化物は片言か魔獣の様な叫び声しかあげんな‥‥」


 俺の魔力を回復を急ぐ為に、この数日間の戦いはアルベルトとスカサハが引き受けてくれていた。

 そして、容赦なく俺達に向かってくる怪物達を全て屍に変え、骸の山を移動する道中で幾度も作っていた。


 つうか、この二人が本当に強い。俺が何もしていなくても、敵が現れれば、即座に反応し殲滅行動に移るんだ。流石、〖死の大地〗出身者と魔法世界(アリーナ)の歴史に名を残した男だ。面構えが違う。


 一方、俺とアイリスはというと。


「み、見て下さい。カミさん! 無属性魔法の派生技が出来るようになりました! やりましたよー!」


「おー、凄いな。俺なんて無属性魔法の各種系統を地球の仮説書で調べて、系統化して使うしかまだ、出来ていないぞ。アイリスは天才だな。凄いぞ‥‥」


「‥‥それって私よりもずっと先に行ってるって事ですよね?‥‥うわあぁんん!! スカサハ御姉様!!     カミさんがぁぁ!!」


アイリスは何故か連日の様に悔し涙を浮かべて泣きじゃくるんだが、何でだろうか?



一日前〖悪運の橋〗


「ギギギ‥‥我はファーストなり。ここは絶体に渡らせんぞ。侵入‥‥」


「‥‥話が長い。無防備過ぎだな。鈍足のファスト。真っ二つになれ。カンナギ剣術〖零・千華〗」


スパンッ!!


「しゃ‥‥だ‥‥ち‥‥?!」ドスンッ!!!


「うわぁ‥‥一撃かよ。容赦ないな。アルベルト」


「鈍足のファストは剣技大陸(アルトネ)で数千ものカンナギ兵を殺している。何故だか分かるか?カミよ」


「数千人?‥‥いや、分からんが」


「コイツは一度、動き始めれば、手が付けられないくらいに速く動き回る。鈍足と言いつつな。だから、最初の強力な一撃で確実に仕留めた」


「成る程だから、コイツと相対した瞬間には、攻撃の準備をしていたって事か」


「まぁ、そういう事だ。それよりも見えてきたな。ワシ等の目的となる場所が‥‥」



そして、現在〖運命の館〗前


「白色‥‥全体の建物が全て白ね」


「‥‥あの気持ち悪い顔の彫刻は何なんでしょうか?」


「思ってたよりも、小さい建物だな。本当にここにフォルトゥナとか言う奴が居るのか? アルベルト」


「‥‥あぁ、居る。確実にだ。そして、奴さえ倒せば、この歪みの世界〖アグナの廃棄炉(スクルータ)〗の歪みも直り、各々の時代に帰路出来ると〖剣神〗様は行っていた」


「〖剣神〗様って確か、レイカさんの‥‥」


「レイカさん? 誰だそれは?」


 おっと不味い‥‥もしもアルベルトとレイカさんに何かしらの血縁関係にあるとすると。この発言は非常に不味い。

 もしも、アルベルトにレイカさんの情報を話でもすれば魔法世界(アリーナ)の歴史が変わってしまうかもしれない。


「あっ!いや‥‥アルベルトの持つ剣〖嶺花(れいか)の水刀〗って凄い綺麗だよなって話だよ。流石、カンナギ・アルベルト。使う武器も一流だよな」


「おぉ、何だ。刀の事か‥‥そうだろう。そうだろう。この〖嶺花(れいか)の水刀〗はワシの相棒でな‥‥やはり、カミはワシと気が合うな。ハハハ」


 なんか上手く誤魔化せたし、褒められてしまった。


「よし‥‥中に入ろうか。皆、油断しないでくれ」


俺はそう言って、館の扉を開けた。



〖地下廊〗


「御姉様。侵入者です」


「えぇー! ちょっと! 早くないかしらん? セカンドちゃんとファーストちゃんは何してるの? 担い手ちゃん達を殺す様に仕向けたわよねぇ?」


「二体共。カンナギ・アルベルトに直ぐに殺されたらしいです。斥候(せっこう)させていた合成獣がそう報告してきました」


「‥‥やっぱり。一番厄介なのは担い手ちゃんじゃなくて、あのカンナギの姫君の親の方なのね。めんどくさいわぁ~! しょうがないから殺すしかないわね‥‥ウフ!」




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