忘却想起の草原
失われ、忘れられていく者達がいる。
過去に棄てられ、閉じ込められてた者達が。
それは忘却から脱却し、想いを糧に想起する物語。
彼等、彼女等が多種多様な時代を超えて、〖運命〗と〖○○〗に挑む、険しい戦いのお話。
◇◇◇◇◇
ガリア帝国の戦いは激戦に次ぐ激戦だった。久しぶりに魔力の底が尽きかけるかと思う程の激闘。
今、思えばティアマト地方でのアプスとの闘いで負っていた傷もろくに直さずに、ロウトルの転移迷宮に行ったのが事が間違いだった。
もう少し万全を期して、計画的に動くべきだった。
まさかこのタイミングで〖異界・不思議の国〗を支配していた赤の女王。
大アルカナの〖力〗と対峙する事になるなんて、早すぎた‥‥‥これでは〖神々の黄昏〗の上位の奴等が動き出し始めてしまうだろう。
俺の予定では〖力〗は俺ではなく〖カンナギの姫君〗と対峙させる予定だった。
それには勿論、理由がある。俺は〖神々の黄昏〗の連中を倒し過ぎた。〖神ノ使徒〗の中でも目立ちすぎている。
だから、暫くの間は雲隠れを決め込もうと思っていた矢先に〖力〗との、大国ガリア帝国を巻き込んでのあれ程のド派手なぶつかり合い。
他の〖神々の黄昏〗の連中が、〖力〗との戦いの後、十中八九襲って来るだろうとは予想していた。
だが、まさか次元に飛ばされる何てのは、予想の範囲外にも程がありすぎる。
これから‥‥‥どうすれば良いんだ?
「がはぁ?!‥‥‥魔力切れで寝落したのか?‥‥‥そんな。魔力切れなんて起こしたの始めてだぞ」
「お早う‥‥‥それと違うわ。貴方は混乱していたから、私が眠らせてあげたの‥‥‥夢魔のハーフの私に」
「‥‥‥君は‥‥‥オカマ男との戦いの時に、魔法陣から現れた女の子?」
女の子?なのだろうか?女性と表現すべきか?‥‥‥何とも不思議な娘だ。少女とも女性とも思える。
少女が大人女性へと成長するその間際?と意味が分からない表現の仕方をしてしまう。
「‥‥‥ひ痛い‥‥‥何で俺の頬を引っハル?」
「失礼‥‥‥君、今、失礼な事を考えていたわ。私に対して凄く失礼な事を。私はこれでも少女なの」
ジト目で俺の両頬をグニィーっと引っ張てきた。夢魔は人の感情に敏感に反応すると聴いた事がある
な。
「そんな事、別に気にする事何て‥‥‥ひ痛てて!!」
「お仕置き!‥‥‥女の子は年齢に敏感なの。反省しなさい」
「わ、分かった!俺が悪かったから、頬っぺを引っ張るのを止めてくれ」
「了解‥‥‥今後はそういう風に思わない様にする事」
頬っぺたを掴んでくれた両手を離してくれた。‥‥‥ジト目で俺をに対して怒りを露にしているのは変わらないがな。
赤茶色の艶やかなロング髪、紫色と赤色のオッドアイ、黒色のフードを被った女性‥‥‥
「私は‥‥‥〖スカサハ・ウアタ〗最初以外の名前は偽名だけど。よろしく」
「そうか‥‥‥君はスカサハと言うのか。俺はカミナリだ。よろしく」
まだ、俺はこの人の事を何も知らない。だから下の名前、刹那を教えるのは止めてく事にした。
「正解‥‥‥スカさんか、スーさんと呼んで、私は‥‥‥カミ君と呼ぶから」
「カミ君?‥‥‥始めての呼ばれかただ‥‥‥それにしてもここはいったい?」
辺り一面草原が広がっていた。空は快晴の青空に、後ろにはとてつもなくデカイ大樹がそびえ立っていた。さっきまで全然気づかなかったな。
「ユグドラシル地方の〖世界樹〗‥‥‥とは形が少し違うな」
「正解‥‥‥これは多分、〖ウプサラの聖樹〗。昔、影の図書館にある本で絵を見た事があるわ」
「〖ウプサラの聖樹〗?そんな巨木の名前、始めて聞いたな‥‥‥」
「〖ウプサラの聖樹〗は〖死の大地〗の奥地にあるの、だから他地方の子が知らなくて当然なのだけど‥‥‥そんな木が何故、こんな場所にあるの?」
「いや‥‥‥分からん」
「謎‥‥‥少し辺りを調べて‥‥‥」
「キャーッ!誰か助けて下さい!こ、このしつこいですよ!ゴブリンの分際でえぇ!!ぶっ殺しますよ!!!」
俺とスーさんが小首を傾げていると、少し離れた草原から女の子の叫び声が聴こえてきた‥‥‥