幻創決戦・〖國終りて、甦生しは勇ある者〗No.32 再会と復讐
〖ラティニウス〗から少し離れた〖リグ地区〗
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「‥‥‥‥何だ?あの化物は?肉の塊が叫んでいる」
「ギャラハット君。それよりも早く、現代のアテナ様の眷属の元へ行ってやれ‥‥‥そして、再会を果たして来い。俺の様に後悔しない様にな‥‥」シュンッ!
「あっ!シグアさん‥‥‥ちょっと!てっ‥‥消えてしまった。何故、あの人はこんな場所に転移させたんだ?転移するなら刹那が居るあそこだと思うんだけど‥‥‥‥誰か倒れている?」
「‥‥‥‥‥」
「私と同じ髪色の銀髪?」
「‥‥‥‥ここはどこ?私は確か‥‥‥病で死んだはず‥‥‥アナタは‥‥‥?」
「私と同じ‥‥‥顔立ち?」
「‥‥‥あら?分離に成功させたんですか?‥‥‥やりますね。あの子は」
私は彼女を抱き抱えながら、困惑していると、突然、白い服を着た少女が現れた。
「‥‥‥君はいったい?どこから現れたんだ?」
「んー?少し見させてもらいますよ‥‥‥これは珍しいですね。〖反魂〗している‥‥‥魔獣達と数万の死の混沌で奇跡でも起きましたか。これは神代以来の〖奇跡の蘇生〗ですね」
「〖反魂〗‥‥‥〖奇跡の蘇生〗ですか?」
「えぇ、ですがこの奇跡は秘匿にしておきましょう。私と貴方だけの秘匿にね‥‥‥‥よろしく頼むわ。ユグドラシルの盾‥‥‥ではまた別の国で会いましょう。セルビアの騎士」
「君は‥‥いったい?‥‥‥てっ!もう居ない?」
「‥‥‥アナタ‥‥‥名前は?」
「‥‥‥私‥‥‥いや、ボクの名前は‥‥‥ギャラハット‥‥です」
「ギャラハット?‥‥‥‥その‥‥‥お父様の名前は?」
「‥‥‥ランスロット‥‥‥妖精国のランスロットです」
「‥‥‥‥そうですか‥‥‥貴方はあの人の子供で‥‥‥それで貴方は‥‥‥私の‥‥‥」
妖精屍は蘇生した。そして問う、あの日、生き別れた我が子の名前を、あの日、死に別れたこの子顔を優しく見つめた。
これは赤の女王との戦いの最中に起きた〖秘匿〗すべき神なる奇跡‥‥‥世に語られる事の無い、母子の奇跡の再会だった。
◇◇◇◇◇
「ハハハハハハハハハ!!!そうか。組成するのか‥‥‥それは奇跡だな。そうか、そうか、こんな混沌としたガリア帝国にも、素敵な事が起こるのか‥‥‥‥俺では無理だった事が起きた。家族の再会に祝福を願うぞ。ギャラハット君‥‥‥俺はあれへの復讐を終えて去る。被害を出さない為に悪意ある者達意外のガリア帝国の民は全て転移させた。これから始めるは命を対価にした、復讐の転移‥‥‥〖マザーグース〗にとジル・ガリアに‥‥‥復讐を‥‥‥転移魔法‥‥‥神話・回帰‥‥‥〖無転の狭間に死を〗」
〖ラティニウス〗
「‥‥‥始めたか。ロウトル・シグア‥‥‥勇者・カミナリ」
「ん?何ですか?ウェルキン元帥。〖黒衣〗の二重掛けが思ったよりも難しいんで、今、話しかけられると‥‥‥」
「〖色〗や〖纏〗は〖加神なる力〗で制御するのだ。覚えておけ‥‥‥」
「〖加神なる力〗?それって神‥‥‥」
「貴殿が行方不明にならなけば、後々は私の後継者として育てていたのだがな。貴殿には、貴殿の物語‥‥‥人生の道があるのだな‥‥‥この魔道具をガリア皇帝陛下に渡してくれ」
ウェルキン元帥はそう告げるとクリスタルの箱を俺に手渡して来た。
「‥‥‥何ですか?この箱は?」
「陛下への手紙と‥‥‥各部下達への感謝の印を入れてある。それとこれは貴殿に‥‥‥私の遺産は全て、アテナ神殿に居る娘に渡してくれ。頼む‥‥‥ではな。勇者・カミナリ。最後の会話が貴殿で会えた事に感謝する。これまでのガリア帝国に対しての力添えに敬意を‥‥‥去らば!」
「あっ!ちょっと!ウェルキン元帥!!どこに行くんだ!!そっちは〖マザーグース〗のっ!てっ!行ってしまった‥‥‥」
思えば人に長き険しい人生だった。〖マザーグース〗に‥‥‥あの魔女に両親を殺され、捕らえられ、命令され、使われ、悲惨たる人生が始まり。苦しみの人生だった。
だが、それもガリア帝国に入り、ガリア皇帝陛下に会えた事で全てが変わった。絶望の人生に奇跡が起きた。
陛下に頼られ、共にガリア帝国のあらゆる問題に取り組んだ。
部下ができた。いつも厳しく接してしまう。本当は言いたくない事ばかりだ。だがこれも国の為と割りきるしか無い。本当は優しく接してやりたい、そんな事ばかり考えていた。
友ができた。バルバッハ‥‥‥お前はいつも私を支えてくれた。酒の席では真摯に私の話を聞いていてくれたな。
部下も優秀な者達ばかりだった。ガリア帝国の時代を担う。若者達。野心家のエマ、頭が良いが馬鹿な思考のアクスレナル、私の次代を担わせようと沢山の試練を与えたランスロット、皇族という枷を言い訳にせずに真っ直ぐに軍人として功績をあげるセレナ姫様。
四人共。幼少の頃から見守っていた。まるで我が子の様に思えたな‥‥‥思い残す事は一つだけ‥‥‥〖マザーグース〗に見つからないように婚姻し、産み、アテナ神殿に預けた我が子の○○○‥‥‥君が幸せに暮らせる様にこの混沌としたガリア帝国を終わらせよう。
「これがガリア帝国最強の一撃と知れ‥‥‥ガリア劒術・終極‥‥‥‥〖白滅の無天劒〗」
◇◇◇◇◇
‥‥‥‥俺が見たものは見たきょうがくの光景は二つだった。一つは〖マザーグース〗の身体が激しく歪んで行く様子を見つめる、黒いフードを被った男。
そして、もう一つは極大の白の一太刀が〖マザーグース〗の肉塊を消滅させる白の騎士の光景だった。
その現象が終わった時、フードの男と白の騎士の姿は何処にも存在していなかった。