第三幕・邪魔唄鳥と人魚様 No.3 人魚姫の本音
「‥‥‥‥俺の攻撃が弾かれただと?何でだ?」
「ニャア。オニャエ‥‥‥五月蝿いし、強がってるわりにちっとも手応えがニャイニャア。つうか雑魚ニャア?」
「ああぁ?!俺のどこが弱いっていうんだ?」
「魔力も全然練れてニャイニャア。それにそんなに騒ぐと傷口が広がるニャゾ。さっきの攻撃にはわっちの〖魔力〗と〖神気〗を同時に練り合わせた技ニャア。もしもオニャエが魔神種ニャラ。〖神気〗が傷口から身体の中に入った瞬間、激痛が走るのニャア」
「グエェエ!!神気、神気、うるせえぞ。猫娘!!何かの食い物か?ああぁ?!俺がそんなモノ喰らって可笑しくなるわけ‥‥‥‥何だ?俺の体内の魔力回路が‥‥‥‥狂って来てやがる?」
「ニャアー、言わんこっちゃないニャア。興奮するから〖神気(毒)〗がオニャエの身体を蝕み始めたニャア‥‥‥‥威勢だけの鳥とはこれ以上闘いたく無くなったニャア‥‥‥‥」
「グエェエ!!!ゴボォ?!‥‥‥‥てめえ‥‥‥俺の身体に何を仕掛けやがった?」
「ニャから〖神気〗だニャア。外皮を被った魔神ニャロウ‥‥‥オニャエの体内には〖魔力〗意外にも〖神秘〗が交ざってるんニャロウ?だから、オニャエはわっちの〖神気〗で終わるのニャア‥‥‥‥そもそも、オニャエが入ってるその黒鳥に何をしたのニャア?その黒鳥は〖幻獣の楽園〗の幻獣の筈ニャゾ」
「‥‥‥‥邪魔唄鳥様とそのお仲間達がの中に入れ方が沢山捕まえて‥‥‥連れてきたんです。この〖不死議の國〗へと‥‥‥数年前に‥‥‥」
「ぎ、ぎざま!!クソ人魚!!俺の許可無く、何を勝手に話し始めてやが‥‥‥」
「五月蝿いニャア。今、アリエルが説明しようとしてるニャゾ。邪魔するニャヨ。〖神気・風〗・風魔法〖爪風切〗」
「グ、グオオエェエ!!!俺の自慢の嘴が酷い傷口にいぃ?!」
「‥‥‥‥続けなさい。アリエル。この際だあの邪魔唄鳥に言いたかった事を全て言ってやりなさい」
マーリンは優しい口調でアリエルにそう告げた。それにまるで〖魔術院〗で教鞭を振るっている時の口調そのままだった。
「はい。魔女‥‥‥白のマーリン様‥‥‥そう。数年前に貴女達はいきなり現れました。平和だった〖不思議の国〗に‥‥‥楽しく可笑しな場所だけど皆が手を取り合って一生懸命に働いて暮らすこの国を‥‥‥‥貴女達は壊した」
「グエェエ!!何、言ってやがるっ!!平和ボケした、てめえ等がつまらなそうに生きてるから、〖女王〗様や俺達がスリルを与えて楽しませ様と‥‥‥‥グギャアアア!!!声を出すだけで傷口から血が出てきやがるっ!!」
「それがアリエルが味わった痛みニャゾ‥‥‥〖風甲猫〗」
「グゲエエ!!も、もう止めろ。こ、これ以上は本当に絶命するっ!」
「ニャに言ってるニャア。そもそも、その黒鳥の身体はオニャエの物じゃ無いのニャア‥‥‥‥オニャエ。神代の頃に身体を失った魔神種ニャロウ?‥‥‥‥大人しく消滅スルニャヨ。〖スリア〗の魔神種」
「グエェエ?!お、お前、何でその名前を知って‥‥オエェエ!!」
「‥‥‥黒鳥は馬鹿だけど栄養価が高いからと食べていました。〖嬢王〗を‥‥‥‥ティターニア様が〖これ以上、不思議の国での破壊や殺しはお止め下さい〗と懇願しているのに、この方達は私やティターニア様の親類を笑いながら殺しました。私の最愛人も‥‥‥‥〖ブルーミーティア〗の心がある子達も、建物も、船も、全て可笑しく変えたんです。私の歌も取り上げた。恋人も、お父様も、お母様も、この人達は殺したんですっ!!!ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」
アリエルは悲壮な表情を止め、大粒の涙を流し、過呼吸になりながら。邪魔唄鳥を睨み付け言葉を浴びせる。
「‥‥‥‥‥うん‥‥‥どんどん吐き出しなさい‥‥‥‥大丈夫。この魔種にはもう抵抗する力は残っていないよ‥‥‥‥最後に聞かせあげるんだ。それがきっと言の葉となって彼を〖奈落〗へと誘うからね」
「‥‥‥‥‥こんな事を言っても無駄だと分かっていますっ!そもそも私に貴女達に抗える力が無かったのが悪かっただけですが‥‥‥‥ですが最後に言わせて下さいっ!!邪魔唄鳥様‥‥‥‥返して下さい‥‥‥‥私の家族を‥‥‥恋人を‥‥‥‥友達を‥‥‥‥貴女達が喜びながら殺してきた〖ブルーミーティア〗の全ての住人を返してっ!!返してよっ!私の全てをっ!今、直ぐに元に戻して‥‥‥‥ウゥゥ‥‥‥ウアアアア!」
「ウニャア‥‥‥‥ウリエル‥‥‥」
「隠していた本音を少しは吐き出せたみたいだね。気休めにしかならない事なんて分かっているんだけどね‥‥‥‥消滅する前に君に聞かせてあげたかったんだよ。魔神〖ドマ〗」
「‥‥‥‥‥そんな事を聞かせても俺には何にも伝わらねえぞ。人魚に魔女‥‥‥‥‥そんなんで俺は変わらない。そんなんで俺の心は痛まない。何とも思わない筈なのに‥‥‥‥何で俺は涙を流す?‥‥‥‥そして、この心の痛みは‥‥‥‥何なんだ?〖女王〗様‥‥‥‥‥」ドサッ‥‥‥‥カランッ!
「絶命‥‥‥したニャア」
「うん‥‥‥‥魔神でもこれだけの叫びを聞けば、過ちに気づいて涙は出るみたいだね‥‥‥アリエル。この〖青の水晶〗は借りてくからね。それとね。昔の様に自由に歌って良いんだからね‥‥‥‥君を邪魔する奴は消えたんだから」
「‥‥‥‥いえ。私も一緒に行きますわ。同じ〖守護者〗であるティターニア様やジュゼッペ様が〖ブラックハート〗に捕まっていますので‥‥‥‥私も戦います。神代の頃の様に歌と演奏をもってこの〖不思議の国〗を元の平和な場所に戻してみせますわっ!」
「ニャー、最初に会った時より、元気になったニャア。アリエル」
「これが本来の性格なんだよ。この娘は誰よりも元気で歌が好きな〖奇跡の歌う人魚・アリエル〗‥‥‥‥その歌で幾万人の命を救った人魚姫なんだよ。セシリア」
「‥‥‥‥全てを取り戻しますわ。お父様。お母様‥‥‥エリック。見ていて下さいっ!ルルルーラララー!!」
「綺麗な唄ニャア‥‥‥‥」
「‥‥‥‥だね」
喧しかった邪魔唄鳥は消え、新たに聴こえ始めたのは、本来の明るさを少し取り戻した人魚姫の美声の歌だった。
そんな美声の歌を聴きながら、白き魔女と猫族の少女は〖ブラックハート〗を目指し、歩みを出した‥‥‥‥
第三幕・邪魔唄鳥と人魚様
終