友を救いに
〖イエローリング・正気の者達の村〗
眼前に見えるは巨大な青虫の燃える姿だった。私の目の前で燃えるそれが口から放っていた煙も無くなったお陰だろうか。私、マルクス・サイローは正気を取り戻し、身体も自由に動ける様になった。
思考も時間が経つにつれて昔の様に集中できる様になった‥‥‥‥一度洗脳を受けて、自分の中の閉ざされていた五感が活性化されたのかもしれん。
「〖ブラックハート〗に行こうか‥‥‥‥そうだな。其処には私の命の恩人で、親友でもあるジュゼッペも其処に居る。救いに行かねば。ならば私も共に行こう。すべての諸悪の根元たる〖女王〗の元へ‥‥‥‥‥オーン腹心っ!来たまえっ!」
バッ!「マルクス様。御呼びでしょうか」
「〖ブラックハート〗を落とす為に小規模の軍を起こす。神代から現代の時代にかけて此方の〖異界〗に迷い込んで来た若い者達はなるべく後方部隊に回してな」
「はいっ!マルクス様っ!直ぐに準備を整えますっ!」
「ちょ、ちょっとっ!サーシャも、マルクスさん。もいきなり何を言ってるんだい?やっと、あの変な巨大な芋虫を倒したばかり何だよ」
「‥‥‥‥問題ない。まだまだ戦えるから‥‥‥‥マルクス。この黄色の玉」
サーシャ嬢がそう告げて私にジュゼッペが持っていた〖守護者の証〗を私に渡してくれた。
「あぁ、これもジュゼッペに返してやらなければならない。ギャラハット青年。一つ質問があるのだが良いかな?」
「マルクスさん。話し方も何で軍人みたいな話し方を‥‥‥‥えっと。すみません何の質問でしょうか?」
「もし現代以前のガリア人が外界に向かったとして、無事に生きていける場所は存在するだろうか?」
「‥‥‥‥‥マルクスさん。その質問は‥‥‥‥答えづらい質問ですね」
私の質問にギャラハット青年は苦々しい表情を浮かべてた。彼は今、こう思っているのだろう。神代や現代に関わらず純粋なガリア人が普通に暮らしていける場所はガリア帝国に限られるのだろう。
ましてや神代末期を生きていた〖生死人〗である我々がいきなり現れたら、現代を生きるガリア人は受け付けないだろう。時代が違い過ぎるのだ。神代のガリア人を現代のガリアの人々は受け入れてくれるわけないのだ。
何せ、それがガリア人特有の特性‥‥‥‥‥。
「わがままを言っているのは自分でも分かっている。もし我々、神代末期のガリア人が外界の世界の害悪となるならば、魔法世界の邪魔にならないように〖死の大地〗の山岳でひっそりと暮らすつもりだ」
「〖死の大地〗ですって?!あんな場所に人族が入ったら上位魔種の一瞬で殺されますよ」
「‥‥‥‥何だ。現代の〖死の大地〗はその様になっているのか‥‥‥‥」
「‥‥‥‥別に外界に出ずとも。〖女王〗を倒してティターニア嬢王に〖不思議の国〗で暮らせる様にしてもらえば‥‥‥‥‥あ‥‥‥」
「いや。〖女王〗を撃てば我々は邪魔者でしか無い‥‥‥ジュゼッペにもこれ以上迷惑をかけたくないのだよ。この〖異界〗でも我々は異端なんだ。だが、この〖不思議の国〗が平和にしてから去りたいんだ。我々の恩人。〖守護者・ジュゼッペ〗の為に」
「‥‥‥‥すいません。一ヶ所だけありました。マルクスさん達が暮らせそうな場所」
「なんと。それは本当か?それは何処なんだね」
「ティアマト地方です‥‥‥‥ティアマト地方の島程に大きい魔道船〖ユピテル〗なら十分暮らせるかと思います」
「魔道船〖ユピテル〗?‥‥‥‥現代ではそんなのものがあるのか‥‥‥‥しかも場所が難攻不落のティアマト地方‥‥‥‥神代からの地理が変わっていなければ他の地方の接触も無いか‥‥‥」
「はい。それに今、ティアマト地方の権限を持っている子は私の教え子なので、あの子に頼めばマルクスさん達が魔道船内で暮らせる様に整えてくれるでしょう」
「‥‥‥‥それはありがたい。ならばこの〖不思議の国〗での問題が解決した後は、密かにティアマト地方を目指すとしよう」
「そ、そうですか‥‥‥じゃ、じゃあ彼にも会ったら伝えておきます‥‥‥‥(勢いで承諾してしまったけど‥‥‥‥不味かったかな。いや、でも神代のガリア軍人といっても数百人‥‥‥‥いや、駄目だね。やっぱり、セツナにはちゃんと一から説明してからじゃないと駄目だね)‥‥‥‥あ、あの、マルクスさん‥‥‥‥」
「があああああ!!!!プハアァ!!!ふざけるなぁ!!!〖守護者〗たる俺が、こんなコムズめに!!!」
「まだ、生きていたか。邪魔な蟲がっ!ガリア剣術〖座主弩〗」
スパンッ!!!‥‥‥‥‥ドサッ!
燃え死んだと思っていた蟲が突然起き、騒ぎ出した為、私の一撃を振るい、蟲の身体を頭と胴体を真っ二つにした。
「私達の邪魔をするな。蟲が‥‥‥‥‥ギャラハット青年。何か言ったかな?」
「さっきの‥‥‥‥いえ、何でもありません。すみません‥‥‥‥(あの芋虫が一撃で絶命した?それに突然の事で言いそびれた‥‥‥‥また後で時間がある時にセツナも交えてちゃんと話し合わないと駄目だ‥‥‥‥このままだと流されて言いそびれてしまう。どうしよう)」
「‥‥‥‥マルクス。直ぐに〖ブラックハート〗に行く?」
「いや、急ぎたい気持ちではあるが、軍の編成もあるのでな。済まないがサーシャ嬢。一日時間をくれ。準備が終わり次第、この〖不思議の国〗の本来の主であるティターニア嬢王と親友たるジュゼッペを救う戦いを始めよう」
「‥‥‥‥分かった。私もその間に自分の準備を終えておく」
「じゃあ、私もそうしよう‥‥‥(不味い。このまま何も言わずに流されていたらセツナにどやされる)‥‥‥‥」
ギャラハット青年が何か浮かない表情に変わった‥‥‥‥無茶を言っているのは自覚している。だが、私の〖直感〗が伝えてくるのだ。彼の仲間に会い付いていけと‥‥‥それが最後に安心して逝ける場所になるとな。ガリア人の直感がそう告げているのだ。
「ジュゼッペ‥‥‥‥‥」
(何?さ迷っていた?嘘付け此処は迷う様な場所じゃねえだろう?行くならあっちの方にって‥‥‥‥お、お前。な、何、泣いてんだ?‥‥‥‥‥‥何?久しぶりに人と話せただと?‥‥‥‥‥いや、俺は木の人形でだな‥‥‥‥おいおい良い歳したジジイが大泣きするなよ。ちゃんと話し聞いてやるからよ。ジジイ‥‥‥‥)
「必ず救うぞ‥‥‥‥‥親友よ」
〖ブルーミーティア〗
ポロロン♪ポロロン♪
「そうですか。此処には突然、飛ばされたと。それはお可哀想に‥‥‥」
「ウニャア~、最悪ニャア!!」
「‥‥‥‥‥此処はアテナ地方の〖不思議の森〗奥にあると言われる〖不思議の国〗なのかい?人魚のアリエル」
ポロロン♪ポロロン♪
「昔は‥‥‥‥数年前までらそうでしたね。今は誰しも〖不死議の國〗と言って絶望しています‥‥‥‥そして、此処は海であり海でない海岸にして五月蝿い鳥が指揮する最低の海〖ブルーミーティア〗と呼ばれる場所ですわ‥‥‥‥魔女様‥‥‥‥」