第二幕・嘘つきが消えた村 No.3 虫の矜恤
煙吸芋虫が燃える数分前
「スゥー‥‥‥プハアァー‥‥‥しかし、視れば視る程、欲しくなる外皮を持っているな。小娘よ‥‥‥素晴らしい。素晴らしい俺の新たな肉体だ。ヒヒヒヒヒ」
「‥‥‥‥下品な笑い方は止めて。ムカつく」
「ムカつくだと?こんなに敵が多い状況でそんな言葉が出せるとは驚いた。なかなかできんぞ。小娘‥‥‥‥あぁ、いや。いたな五月蝿く騒ぐ女がもう一人‥‥‥‥俺達の〖女王〗様に負け。牢獄に捕えた哀れな元嬢王が一人。名前は確かティターニ何とと言ったか?」
「‥‥‥‥何?」
「スゥー‥‥‥プハアァー、おぉ?感情の起伏が起きたか?小娘。お前から微細な怒りの変化を感じたぞ。俺は吐く煙で周囲の者達の五感を見分ける能力があってだな‥‥‥‥」
「‥‥‥‥そんなどうでも言い話は聞いていない‥‥‥‥ティターニアをどうしたの?」
「スゥー‥‥‥‥ハァァー、そうそうティターニアだったか?何だ?小娘の知り合いだったのか?‥‥‥‥あの敗北した嬢王の現状を知りたいのか?ヒヒヒヒヒ。良いぞ教えてやる。俺は話す事が大好きなキャタピラー様だからな。それに今の俺は気分が良いからな。何せうら若き娘の外皮が手に入る日だ。神代以来の人の皮だぞ」
「‥‥‥‥五月蝿い早く話して」
「ヒヒヒヒヒ。囲まれ。追い詰められ。心まで荒れてきたか?良いだろう。良いだろう。語ってやる。顔は〖女王〗様の拷問により皮膚が酷くタダれていたな。手は魔法石の手錠で拘束されながら引きずられボロボロたったぞ。そして、敗れし嬢王のご自慢の衣の羽は、一生飛べぬ様に切り裂かれ。身体中に契約文字の焼き印が押され、身体の何処を見ても無残な状態でな。スゥー‥‥‥プハアァー、最高の光景であったっ!ヒヒヒヒヒヒ!!!アヒヒヒ!!!」
その蟲は笑う。邪悪に笑う。嬉しそうに。無邪気に。心の底からあの時の光景を思い出し喜んだ。
だが、それがいけなかった‥‥‥‥それは次代の魔女の怒りを買ったのだ。十代前半の若さにして、勇者の従者。セルビア国内戦。フレイヤ地方。ティアマト地方での等であらゆる知見と経験を得た魔女の卵の怒りを。
「‥‥‥‥‥もういい。分かったから‥‥‥死んで」
「スゥー‥‥‥プハアァー、おいおい。これからが本当に面白くなるんだぞ?激しい拷問の末、敗北した嬢王が辿る未来はな‥‥‥繋ぎをさせる為のい‥‥‥」
「‥‥‥‥火魔法〖炎魔〗」
「け‥‥‥‥‥む?何だ?身体の下が熱‥‥‥‥は?何故、俺の身体が燃えている?‥‥‥ガアアア!!!何だ?この炎は?小娘っ!お前の仕業か?!!俺が語っている時に何をしやがる?!!おいっ!ガリアの無能兵士共っ!ボーッとしていないで小娘を捕えろっ!行けっ!!」
「ウアァ!!」「助けてくれっ!俺の意思とは勝手にっ!」「こんな小さい子に攻撃何てしたくないわっ!」「‥‥‥‥マルクス様っ!お助けをっ!!」
サーシャを取り囲んでいた住むガリア兵士達が一斉にサーシャに向かって突進していく。
「‥‥‥‥‥‥ごめんなさい。少し痛いけど我慢して‥‥‥風魔法〖風魔〗」
サーシャが〖風魔〗を唱えた瞬間。彼女を中心に突風が吹き荒れる。するとキャタピラーに操られていた屈強なガリア兵士達は空へと舞い上がる。
「スゥー‥‥‥ブハアァー、な、何だ?その出鱈目な魔力は?繋ぎに使う歴戦のガリア人共を吹き飛ばすだとっ?!」
「‥‥‥‥本当に五月蝿い虫‥‥‥水魔法〖水魔〗」
「スゥー‥‥‥プハアァー、動くな小娘。これ以上、好き勝手にさせぬわ。神代魔法(緑)〖虫の煙鱗‥‥‥‥ゴポッ!‥‥‥ブハアァ?!何だ?身体の内側から水が?!」
「‥‥‥‥まだ喋るの?雷魔法〖雷魔〗」
突然、自身の体内から沸いた水に溺れるキャタピラーに更なる追い討ちをかける様にサーシャは〖雷魔〗をキャタピラーに向かって容赦なく撃ち落とす。
「ぎゃああああ!!!!な、何故、俺の神代魔法が発動しない?身体が内側からも外側からも痛みがああぁっ!!!」
「‥‥‥‥それがティターニアの痛み‥‥‥貴方は私の友達を嘲笑った。それが私には許せない。だから串刺しになって‥‥‥地魔法〖岩魔〗」
「があああああ!!!!俺の身体に穴がっ!其処らじゅう?!ああああっ!!!!」
鋭利に尖った岩がキャタピラーの蟲の身体を突き刺す。その岩刺は容赦なくキャタピラーに降り注がれる。
「‥‥‥‥これでさようなら。偽りの〖守護者〗‥‥‥‥その証は元の人に返しとくから‥‥‥‥神代・回帰‥‥‥‥〖五雩魔〗」
「‥‥‥‥ブハアァ?!何だ?この‥‥‥異様な色の火は?‥‥‥‥こんな攻撃どうやって防げと言うんだ?!!〖女王〗様よっ!聞いていた話し違うではありませんかっ!俺はただ、〖守護者〗の地位を奪取すれば快楽の復讐ができると聞いて付いてきたのですぞおおおおお!!!!‥‥‥‥」ドサッ!
‥‥‥‥‥火、水、雷、風、地の五属性の魔力を帯びた不思議な炎がキャタピラーの身体を燃やす。容赦なく燃ゆる。
「‥‥‥‥〖ブラックハート〗に急がなくちゃ‥‥‥‥ティターニアが心配‥‥‥‥それに兄弟子と合流できれば治してもらえるから‥‥‥待ってて。ティターニア‥‥‥」
▽▽▽▽▽
数年前〖不思議の国・夢泉〗
(あら?もしかして、貴女、迷い子かしら?まさか夢人の状態で来る子がいるなんてね)
(‥‥‥‥?分かんない。眠って気づいたら此処に居た)
(まぁ、それは凄いわね‥‥‥‥夢渡りで〖異界〗に来た子なんて貴女が初めてよ。こっちにいらっしゃいな。貴女の夢が覚めるまで、この〖不思議の国〗を案内してあげるわ)
(‥‥‥‥案内?それって楽しい?)
(えぇ、きっと楽しい筈よ。だって此処は皆が可笑しく楽しく、そして幸せに暮らせる〖不思議の国〗なんですから。この国の嬢王たる私、ティターニアがそう言っているだから間違いないわよ。可愛い夢人さん)
第二幕・嘘つきが消えた村
終