第一幕・〖黒い森の赤乙女〗No.4 赤い案内者
「あー、あー、マッドハッターも三月兎も殺られたよ」
「殺られた。殺られた。なら戻ろう。元の姿に戻ろうよ」
「そうだな。そうだな。それが奴等との約束だから」
「彼等が負けた時の約束だ」
「「「「「ワシ等が負けた時はお前達に良い物を
やろう!!!!!とっ!」」」」」
ヒラヒラヒラヒラ‥‥‥‥ポンッ!!
「‥‥‥‥何じゃこれは?赤色の水晶?」
「ガルルル!!それは‥‥‥」
「お婆ちゃん。これ‥‥‥‥」
「ティターニア様がハートの城の禁忌庫に封印していた〖繋ぎの六玉〗」
「繋ぎの六玉?‥‥‥いや。その前に自己紹介がまだでしたのう。私は魔王領の現役魔王ユナ・エスフィールと申す。先程は終われている中、助けて頂き感謝します。狼殿に赤い服の娘殿。そして、モフ‥‥‥‥ケット・シー殿」
「ワアァァ!!!可愛い娘!!私はメイジーって言うのよ!ねぇ、ねぇ、ねぇ。外の世界から来たの?歳は何歳なのかな?」
「この〖ウルフレッド〗を護るルディ・バーバラだよ‥‥‥魔王領?‥‥‥魔族の長かい?‥‥‥これは驚いたね。まさか魔族の長がこんな物騒な所に迷い込んで来るなんてね。それよりもメイジー。娘は疲れているんだから、あまり質問責めするんじゃないよ」
「ガルルル!!フム。お互いの自己紹介も済んだようだな。しかしバーバラ殿。これからど動く?‥‥‥‥他の〖守護者〗達に会いに行くので?」
「‥‥‥‥それは無理さね。シー、それよりも〖レッドウルフ〗に残ってる残党共を狩りつくのが優先だろう。ほれっ!お前達っ!トランプとやらから元の姿に戻れたんなら働きなっ!起きたっ!起きたっ!〖ブラックハート〗に連れてかれたジュゼッペを救いに行くよっ!」
「‥‥ギャア?!ルディ婆さん?」
「私達は今まで何を?‥‥‥‥」
「記憶が飛んでるわ‥‥‥‥」
「何でバーバラさんの屋敷に俺達が居るんだ?」
「驚いた。この不思議な世界には人族も居るのか?‥‥‥‥てっきり妖精種や魔獣しか居らんと思っておったが」
「歴代の〖落とし人〗の子孫達さね‥‥‥‥神話時代の終わった頃から時たま、迷い込んで来る子達のね。そんな子達を保護して自立するまで〖屋敷〗で護るのが〖守護者〗の務めさ」
「それとね。この〖レッドウルフ〗の当事者の役割も持ってあるんだよ。うちのお婆ちゃんわね」
「では‥‥‥これはルディ殿にお渡しておいた方が宜しいか?」
「‥‥‥いや、それはあんたが持っていな‥‥‥この〖異界〗から上手く出ていきたいならね。と言っても残り五つの水晶持ちが揃う必要があるがね」
「五つ水晶ですか?それがあればこの〖異界〗から出れると?」
「そうさね‥‥‥本来、この〖異界〗から出たい者はその者の一番強い何かを女王に差し出さなければならないんだ。それが〖魔力〗なのか〖魔法〗なのか〖加護〗なのかはその者の強さ次第だがね。その水晶はその一番強い何かの代わりになってくれんだよ」
「その者の一番強い何かですか‥‥‥‥ただ〖異界〗から出るだけでそれは少しばかり重すぎる対価なのでは?」
「そうは言ってもそれが上の者達が決めた事だから仕方ないさね‥‥‥少し前に此処に迷い込んだ二人組はちゃんと対価として〖黒色の衣装〗と〖二人の関係性〗をちゃんと払って、この〖異界〗から去って行ったのさ」
「‥‥‥‥この〖異界〗から出ていった者の前例がいるのですか?その話を詳しくお聞きしても?ルディ殿」
「〖ブラックハート〗に向かう移動中で良いなら聞かせてるよ‥‥‥‥ただ少し急ぐよ。じゃなければ取り返しがつかない事になるかもしれないからね」
「ガルルル!!ルディ殿がその様な表情を浮かべるとは‥‥‥いったいその取り返しがつかない事は何か?」
「そんなの決まってるさね‥‥‥‥〖異界〗と〖外界〗との融合さ‥‥‥」
「ガルルル!!‥‥‥その話も道中詳しく聴かせて欲しいものだな。ルディ殿。事、次第によっては魔法大陸‥‥‥いや、魔法世界が滅ぶ切っ掛けになってしまうからな‥‥‥」
第一幕・〖黒い森の赤乙女〗
終