第一幕・〖黒い森の赤乙女〗No.2 魔王メイドと三月兎と眠鼠
〖黒い森の大屋敷の庭〗
六時間前
「‥‥‥‥此処は?‥‥‥‥魔道船の中‥‥‥ではないな。魔力濃度が異常に濃い‥‥‥‥まるで妖精国に居た時の様の様に身体が軽い」
「イヒヒヒヒ!!何だね?何だね?お客人かね?可愛らしいお嬢さん。ならば共にお茶をしないかい?」
「そうそうそうそうっ!楽しいお茶を飲みながらお話しようよお嬢さん」
「‥‥‥‥何じゃ?貴様等‥‥‥何故、魔の者が皮を被りこんな場所で平然と騒いでおるのだ?」
「「‥‥‥‥‥」」
「何じゃ?何故、黙っておるのだ?私の質問に答えぬか」
「‥‥‥‥こりゃあ。不味い奴が来たか?」
「〖異界〗の此処なら、正体がバレず好き放題できると聞いていたんだけどな。何なんだ?この娘‥‥‥」
「捕まえて〖女王〗の元へ連れていくか‥‥‥」
「妥当だな‥‥‥」
こやつ等。さっきから二人だけでブツブツと。しかも〖異界〗とあの不気味な兎は言いおった。
何処の異界じゃ?異界と言っても魔法大陸には数ヶ所あるとお母様は言っていた‥‥‥‥ユグドラシル地方は〖アヴァロン〗ヘファイストス地方とヘスティア地方には〖イシスの国〗ティアマト地方は〖バミューダ海域〗●●●●地方は〖死伯爵領〗‥‥‥そして、アテナ地方には〖不思議の国〗があると。
〖異界〗に誘われる場合、その時に滞在していた地方で決まるらしい。ならば魔法大陸の地図からして〖ロウトルの転移迷宮〗はアテナ地方に存在している。ならば、私とセツナが誘われた〖異界〗は〖不思議の国〗という事か?
〖不思議の国〗からは確か、不思議の森と呼ばれる禁則地から落とされると〖不思議の国〗からの生還者たるお母様は言っていた。そんな場所に転移してしまうとはな。しかも、目の前には魔神族の気配を漂わせる怪しい者達。不味い場所に迷い込んだものじゃ。
「‥‥‥‥色々と聞きたいところじゃが。今は先を急ぐのでな。去らしてくれ。魔の者達よ」
「イヒヒヒヒ!!いやいや、お嬢さん。そうはいかないんじゃよ」
「そうそうそろそろ!!僕達の何かに気づいた君なら、僕達の対象方法も知ってるだろうしねぇ!逃がすわけにはいかないよ。さぁ、楽しく僕達とお茶をしようよ。娘さん」
「結構じゃ‥‥‥‥お主達では私に釣り合わんのでな。出直せ。自分達の正体も明かせぬ臆病者共よ」
「クスッ!笑われてるね」
「‥‥‥黙っていろ。眠鼠‥‥‥トランプ兵っ!集まれっ!!侵入者じゃあ!!!」
「捕まえて。遊んであげるよ。お嬢さん」
▼▼▼▼▼
そんなやり取りの後、追われていたんじゃが‥‥‥まさか、味方になってくれる者が現れるとは思わなかったのう。
「クスッ!隙ありっ!身体を乗っ取られなよ。メイドさんっ!クスッ!クスッ!」
「‥‥‥‥何じゃ?この鼠は?‥‥‥闇魔法・〖常闇の巣〗」
「チチチ??!何?この暗闇は?身体が勝手に?!助けてっ!マッドハッター!!!話と違うじゃないかっ!この娘は簡単に捕まえられるから、この娘の皮を僕の新しく着る皮にするっていっていたじゃないかあぁぁ!!!」
ズズズ‥‥‥‥‥。
「何じゃ?私に闘いわ挑んで来たと思えば、自ら闇魔法に飛び込んで行きおったぞ」
「ガルルル!!貴殿等は何がしたいのだ?あの小さき鼠はお仲間ではなかったのか?」
「あれあれあれあれ?あれがお仲間だって?何を言ってんだい?ケット・シー」
「イヒヒヒヒ!!あんな小汚ない鼠が仲間なわけないじゃろう。それに眠鼠は生きておる。ほれ、骨になって生きておる」
マッドハッターはそう言って、シルクハットから何かの骨を取り出した。
「‥‥‥‥‥チュウチュウ。こんにちは。僕は眠鼠‥‥‥‥皮を寄越せ」
「イヒヒヒヒ!!元気に生きておるだろう?!」
「そうそうそうそう!!!楽しそうに生きている!!」
マッドハッターと不気味な兎はそう叫ぶとゲラゲラと笑い始めた。
「‥‥‥‥こやつ等。話が意味不明じゃ」
「ガルルル!!意志疎通が困難とはルディ殿。現在の〖不思議の国〗はどうなっておられるので?」
「‥‥‥‥〖ブラック〗と〖イエロー〗は占領され。〖レッド〗〖ホワイト〗〖グリーン〗も時間の問題かね‥‥‥‥そして、目の前にで今、笑いこがれてる奴等がこの〖レッドウルフ〗を占領しようとしている当人達だよ」
「‥‥‥‥‥ガルルル!!合い分かった。詳しいことは後で聞こう‥‥‥ならば。兎は我輩と金髪のメイド殿とやろう。神代魔法(黄)〖キャッツテール〗」
「アハハハッ!!ゴゲエエエ?!」
ドガアァンン!!!
「ガルルル!!そちらは任せた。ルディ殿。行こうぞ。金髪のメイド殿」
「う、うむ。分かったのだ」
私はケット・シーに言われるがままに吹っ飛んでいた。不気味な兎を追いかける為に走り出した。
「‥‥‥‥相変わらず。規格外の強さだね。ケット・シーは」
「お婆ちゃん。コイツは‥‥‥‥」
「二人でやるよ。メイジー」
「はいっ!お婆ちゃん」
「少しおどけていたら。攻撃してくるとは‥‥‥‥面白味も無い奴等じゃなぁ。お主等。〖不思議の国〗の者達は」
「‥‥‥‥黙れ侵入者。良い機会だ。此処でお前達を倒し、このまま〖ブラックハート〗まで攻め行ってやろう」
「イヒヒヒヒ!!できるわけないじゃろう。お主達はワシ等が捕まえるんじゃからな」
〖黒き森の湿地帯〗
ドガアアンン!!!
「‥‥‥‥くそくそくそくそ!!なんだい?いきなり。お陰で皮が少し剥がれたよ。それはそうと名を名乗ってなかったね。僕は〖三月兎〗。よろしくよろしく!!」
「チチチ!!僕は眠鼠!!チチチ!!」
三月兎と眠鼠はそう名のると嬉しそうに笑い始めた。
「‥‥‥‥貴様の身体‥‥腐っておるのか?それは」
「ガルルル!!‥‥‥‥屍体に憑依している様だ。フム」
「ケット・シー殿。奴等には魔の者が取り憑いておるのだ。恐らく、〖死の大地〗の」
「ガルルル!!フム。成る程。だからこの〖異世界〗中に暗き気配が多数存在すると‥‥‥成る程では‥‥‥神代魔法(●)『キャッツテール・ドルガ』」
「あれあれあれあれ?なんだい?その弱そうな技は?言動に反して弱いのかな?君‥‥‥‥ならばその身体、新しくくれないかい?神代魔法(黒)〖写り鏡〗」
「チチチ!!なら、僕はあの金髪の娘にするよ!!健康的な若い娘の身体!!チチチ!!神代魔法(黒)〖呪い写〗」
三月兎と眠鼠の身体から奇妙な黒い物体が飛んでくるが‥‥‥‥
「何じゃ?あの気持ち悪い魔力は‥‥‥ケット・シー殿」
「ガルルル!!心配いらぬよ。金髪のメイド殿。勝負はもうついている‥‥‥‥我輩達の勝利でな」
「‥‥‥‥なんじゃと?」
「ガルルル!!ドルガは浄化の効果を持つ神代の魔力。それを喰らった屍や魔の存在は消える」
「あれあれあれあれ?‥‥‥‥僕達の意識が‥‥‥‥」
「チチチ‥‥‥存在が消えてくくく?」
「我輩は〖神猫〗ケット・シー‥‥‥‥ティターニア様から頂いた〖長靴を履いた猫〗の名を頂いた。神聖な猫である‥‥‥これより始めるは〖不思議の国〗の奪還の協奏曲である」
「「ギャアアアア!!!!全て燃える!!!!」」
ケット・シー殿の叫びと同時に、三月兎と眠鼠の身体はいきなり燃え、灰となって塵と化した。
「‥‥‥‥出鱈目な猫殿だな。ケット・シーは」
私はそう言って塵逝く魔の者達の身体を静かに見ていた。