六騎士の集い
『アテナ地方』・〖ガリア帝国・首都テトリクス〗
《ゴール城・玉座の間》
パーンッパッパーンッ!パンッ!パンッ!パーンッ!!!ドンッ!ドンッ!ドンッ!!!タンッ!タンッ!タンターンッ!!
ゴール城の大広間に入城曲が響く。そして、絢爛豪華な楽器で音楽を奏でる軍隊楽団が数百人規模の大演奏を繰り広げている。
「『ガリア帝国特殊階級』部隊・六騎士五名様のご入城でこさいますっ!!!」
「揃ったか‥‥‥‥」
「えぇ、久しぶりに全員揃いました。ガリア皇帝陛下」
〖六騎士第一席《白劍の騎士・ウェルキン・ゲトリクス・アルウェルニ》〗
銀白の鎧を身に纏った五人の騎士達が悠然と玉座の間へ進み。皇帝の座る玉座の前で跪く。
「‥‥‥‥ランスロットが此処に‥‥‥」
〖第二席《妖騎士・ランスロット・ガラハント》〗
「エマ・マテリナル。参りました。」
〖第三席《優麗の騎士・エマ・マテリナル》〗
「お久しぶりで親愛なる皇帝陛下っ!バルバッハ。参上来しました」
〖第四席《蛮勇の騎士・バルバッハ・ブルータス・ガグラス》〗
「お代わり無きご様子ですな‥‥‥お久しぶりでございます。陛下」
〖第五席《知世の騎士・アクスレナル・ベルギスア》〗
「‥‥‥‥‥全員揃うのは〖勇者〗が行方不明になって以来?‥‥‥ですかね?お父様」
〖第六席《新皇の騎士・セレナ・ガリア・リストリア》〗
「おおぉ!我が末娘。セレナよっ!どうだ?六騎士になって数ヶ月が経つか?元気にやっているか?」
「は、はいっ!お父様っ!他の六騎士の皆様にも優しくして頂き、日々、勉学に勤しんでおります」
「ほう。そうか。そうか‥‥‥それは良い事を聞いた。長女たるアリスは行方不明‥‥‥‥数ヶ月前にヘスティア地方で見つかったセシルスは我が国に戻らず、他地方で遊び呆けておる。他の子達もお主の様な突出した才‥‥‥」
「ガリア陛下‥‥‥‥此処には王子方、王女方の派閥も揃っております‥‥‥それ以上の騎士・セレナの称賛は後の憂いを生みます故‥‥‥‥」
「おぉ、済まんな。ウェルキンよ‥‥‥‥久しぶりの実娘に会えて嬉しくなってしまってな」
「‥‥‥‥こちらこそ。ただの騎士の身で失礼な事を進言してしまい申し訳ありません。ガリア皇帝陛下」
「良い‥‥‥‥お主の発言は全て肯定しよう。我が忠実なる腹心よ」
「ハッ!感謝致します。陛下」
「‥‥‥‥‥忠義の騎士ねぇ。裏しかなさそうなやり取り‥‥‥‥」
「仕方ねえだろう。現皇帝陛下が皇帝の座に付けたのもアルウェルニ元帥の尽力のお陰だからな」
「五月蝿い。筋肉ダルマのバルバッハ‥‥‥‥アンタに言ってないんだけど」
「何だとっ?魔銃狂い女が!!!お前が創設したがっている魔銃部隊の開設をアルウェルニ元帥が許可し無かった事をまだ根に持ってんのかよ?」
「はぁーっ?何?その言いがかり?アンタ。元帥の元部下だからって変な言いがかりしないでくれない?」
「あ、あの。お二人共。お父様の前でそんな大声は‥‥‥‥」
「止めないか。二人共っ!騎士姫様も困惑しているだろう」
「‥‥‥‥‥‥」
「ほう。相変わらず。騎士・バルバッハと騎士・エマは仲が悪く。セレナは困惑し、アクスレナルが仲裁するか‥‥‥‥ランスロットは黙秘と。変わっておらんな。どの騎士達も。なぁ、ウェルキン」
「ですな‥‥‥部屋へ移動致しますか?陛下‥‥‥‥今回の議題は他の者に聴かれても益を生みません」
「‥‥‥そうだな。〖ウォセグスの大部屋へとワシと皆を移せ。ウェルキン」
「陛下の命のままに‥‥‥‥〖転飛〗」
シュンッ!
〖ウォセグスの大部屋〗
「では、これより六騎士会議を始める。尚、今回の会議にはガリア皇帝陛下も出席される事を心せよ」
「‥‥‥‥‥うむ。宜しく頼む」
「「「「「ハッ!!!!」」」」」
「‥‥‥‥第一の議題に入る。現在、行われている。ガリア帝国とフレイヤ地方のレッドローズ国。アダマス国‥‥‥‥〖赤霧の隠し谷〗の地を取り戻し、復活した国〖イグニッション国〗の連合国による〖ブルーレヴィア峡谷〗の戦況だが‥‥‥‥正直、膠着状態が続いているが、引き続き。騎士・ランスロットを長としてガリア南部軍は動かす」
「それは騎士・ランスロット殿が原因ではないですか?フレイヤ地方の北部ブルーグラス以外の地は全てフレイヤ連合軍に敗れ奪還され。ガリア帝国の領土は二割を失いました。その時の敗れた三列大戦の最高責任者はガリア南部の軍事を任されていた騎士・ランスロット殿が原因では?」
「‥‥‥とっ、騎士・アクスレナルは発言しているが何か言い返す事はあるか?騎士・ランスロット」
「‥‥‥‥‥それは‥‥‥言い訳できない事実です」
「ふっ!ならば六騎士の座から降りたらどうですか?そして、貴方の代わりに私が管理している科学部の〖リスナル〗を是非、新たな六騎士に推薦します。アルウェルニ元帥」
「ハァー?何、好き勝手な事を言ってんのよ。アクスレナル・ベルギスア。アンタ馬鹿なの?それなら私の腹心のルルスとだって可能性があるじゃないつ!」
「おい、止めろ‥‥‥陛下の前だぞ。エマ‥‥‥俺と喧嘩した後はアクスレナルとかよ‥‥‥」
「‥‥‥‥そうか。ならばランスロットは私の腹心としてゴール城の守備に付いてもらうとしよう‥‥‥‥」
「なっ?!アルウェルニ元帥っ!それはっ!」
「おぉっ!それでは」
「私の腹心を新しい六騎士にしてくれるの?元帥。じゃあ、それと魔銃部隊も‥‥‥‥」
「その代わり。騎士・ランスロットが現在、維持している全ての全線を全て解決し、結果を出せ‥‥‥三日いないにな」
「はっ?何それ?」
「ご冗談ですよね?‥‥‥元帥」
「本気だ。騎士・アスクレナル‥‥‥南の〖ブルーレヴィア峡谷〗の三列国。東の〖ガルム盗賊団〗との抗争。西の〖砂の部族〗達との国境戦争交渉‥‥‥全てを任せる。だから三日いないに解決して来い。そうすればお前達二人の願いは全て叶えてやろう」
「そ、そんなのが無理よっ!元帥。〖ブルーレヴィア〗だけでも膠着状態なのにガルムと砂の部族の事までなんてっ!」
「そ、そうです。それを解決するのに三日でやれなどと‥‥‥三年あっても足りません」
「そうか。ならば騎士・ランスロットの六騎士剥奪の話は無しだ。お前達と違い。ランスロットはその三つの問題を同時に相手をし、西の〖砂の部族〗との国境戦争は三日後に三年程の和平同盟で解決する事になっている‥‥‥お前達は逆だな。北の魔王領のギルフォード軍に翻弄されたと報告が上がっている」
「‥‥‥‥それは。まだ、時が来てないだけよ。反撃のね‥‥‥」
「‥‥‥‥新たな武器があればあんな魔族など」
「ならば。結果を出せ‥‥‥‥私は全ては結果で判断する。良い結果であれ。悪い結果であれな‥‥‥騎士・ランスロットは確かに先の三列大戦では大敗を機した‥‥‥‥」
「‥‥‥‥くっ!」
「だが、彼はその数ヶ月前に〖魔王〗討伐を果たし、ガリア帝国に多大に貢献してくれている。そして、大敗後は散った軍を素早く纏め少ない混乱でフレイヤ連合軍によるガリア本国の進行を抑えてくれているのだ。これはガリア皇帝陛下も同じ事を言っている」
「‥‥‥‥さよう。このガリアは〖勇者〗を失い。他国から狙われやすくなっている。そんな時期に勇者の従者であったランスロット・ガラハントまで失えば、諸国に四方を囲まれている我がガリアは未曾有の危機に晒されよう」
「皇帝陛下の仰る通りでございます‥‥‥‥では第二の議題だ。先な名前に上がった〖勇者〗についてだが現状、見つかっていない。魔法大陸の各地方で暗躍している雷魔法と聖魔法を操る〖救国の担い手〗現代の〖剣聖〗テレシアの〖龍巫女〗などと呼ばれる新時代の者達が現れたがな」
「‥‥‥‥ですがあの勇者様は確か‥‥‥聖魔法しか使えませんでしたよね?お城の晩餐会でお会いした時、ご本人もそう仰っておられたのを覚えているのですが?違いますか?ランスロット様」
「‥‥‥‥いや、合っております。騎士姫セレナ様。勇者‥‥‥神成は僕達、従者の前でも聖魔法しか使っていませんでした」
「聖魔法しか使えない様にしてたんじゃないのか?‥‥‥確か、アイツはガリア軍に相当な恨み節を言っていたと監視班は言っていただろう」
「そうね。数年前の国家会議では相当酷使されてたと聴いたわ。まぁ、私達には関係無い話だけどね」
「あれは‥‥‥アテナ地方の各所で特殊魔獣の活動が活発になり、それに対象するのが彼しかできなかったから、負担を押し付けた形になった不運な出来事です。そして、ガリア皇帝陛下は彼のその働きを報いる為に多額の報酬と‥‥‥姫騎士様‥‥‥セレナ様の婚約者として王族に加える筈だったではないですか‥‥‥‥」
「そう。その後に魔王領との戦争になり、ガリア国内はあれ、再び勇者に頼る形になってしまったのだ。それは私も報告書で読ませてもらっているよ。騎士・アスクレナル」
「‥‥‥‥婚約者‥‥‥」
「どうしたの?セレナ姫」
「い、いえっ!何でもありません。エマさん」
「しかし、その新時代の奴等か?‥‥‥変な現れ方をしやがるな。最初はユグドラシル地方から始まり。ヘファイストス地方。ヘスティア地方。フレイヤ地方だろう?しかも数ヶ月の短い期間にだぜっ!こんなの浮遊魔法を酷使したって移動できる距離じゃねえだろう?」
「転移魔法を使えれば。可能になりますよ。バルバッハ」
「いやいや、アクスレナル。転移魔法は失われた神話魔法だろうが?現代じゃ使える奴なんているわけねえ」
「‥‥‥‥いや、それも隠していたとしたらどうだ?バルバッハ近衛騎士。アスクレナルよ」
「へ?ガリア皇帝陛下?隠してるですか?」
「あの勇者は昔からガリア帝国を疑い深く、常に警戒していた。そして、本来の力の殆んどをガリア皇帝たるワシやお前達に知られまいとガリア帝国民に見せていなかったとしたらどうだ?‥‥‥‥そして、行方不明になった事で他地方へと好きな様に行動できる様になった今‥‥‥‥」
「他の国々とコネクションを作ってガリア帝国に反旗を示すと?‥‥‥‥いえ、それは可能性が低いのでは無いでしょうか?彼はその様な無駄な行動をするよりも自身の力で富を得る方を優先すると思いますが‥‥‥失言失礼致しました。陛下」
「いや‥‥‥‥騎士・ランスロットの言葉を採用する。〖勇者〗については今後とも捜索対象とする」
「「「「「「はっ!」」」」」」
「‥‥‥‥では次だ。第三の議題は〖ティアマト地方〗だが‥‥‥‥現在。情報そのものが遮断されている」
「遮断ですか?元帥様」
「あぁ、姫騎士・セレナ‥‥‥‥アテナ地方から向かう地下街道は流水に沈み。ユグドラシル地方からの侵入は亜人族達に阻まれ不可能。フレイヤ地方からは三列国との戦争中の為、国境を抜けられん。そもそも、我がガリア帝国はティアマト地方に入る事すら許されていない状況なのだ」
「ガリア帝国が魔法大陸の中心部ですからね‥‥‥‥魔王領。ガルム。テレシア。レッドローズ。アダマス。イグニッションと数えるだけでもこれ程の国と敵対しているのですから身動きが取れなくなるのも当然では?」
「だが、騎士・ランスロットの尽力により。ヘファイストス地方の砂の部族が使うルートからアクレール港経由でティアマト地方には入れる‥‥‥そうすればティアマト地方の現状も把握できる様になるだろう」
「後手後手だけどね‥‥‥‥これもフレイヤ地方を奪われたせいじゃない。ガリア帝国の国土の二割も失ってさ‥‥‥」
「‥‥‥‥‥」
「話を蒸し返すな。騎士・エマよ‥‥‥‥その話しはもう済んでいる筈だ。これはガリア皇帝陛下も了承済みだぞ」
「‥‥‥‥肯定する」
「‥‥‥‥申し訳ありません。ガリア皇帝陛下」
だが、騎士・エマの言葉も無視はできない‥‥‥そして、これは今日、最後の議題とも関係がある話だ」
「最後の議題ですか?元帥様」
「あぁ、第四の議題‥‥‥‥ガリア帝国の北西に位置する地‥‥‥‥‥新領土計画〖不思議の森〗の捜索についてだ」