溟海決戦 淡水は悟り涙を流す No.20 原初の夫妻
〖造船都市・エヌマ〗
「シュラララ‥‥‥無事に昇ったか。では、我は新しき主の袋の中へと戻るとしよう。それとアナスタシアは連れて行くぞ。傷を診てやらねばならんからな」
「カハハハ!!丁寧に私を運べ。大蛇よ」
「なら、私も連れていっておくれよ。黒龍。私も少年の首飾りに戻って暫く眠っていたいんだ‥‥‥今回の戦いではだいぶ活躍したからね。次時代になるまでずっと眠っていると決めたよ」
「‥‥‥‥貴様はもっと動け。〖緋龍〗‥‥‥と思ったが、この後、新しき主はこの都市で〖方舟〗とやらを造ると言っていたが、貴様が居ると邪魔になるか」
「そういうこと。納得したのなら、連れていっておくれよ。少年の元へさぁ」
「黙れ。堕落龍がっ!‥‥‥‥魔法大陸の海域を支配する〖―女神―ティアマト〗。剣技大陸の海域を支配する〖剣神・巫ノ神子〗。暗黒大陸の海域を支配する〖極神・レヴィアタン〗‥‥‥お前達に問おう。我が新しき主の渡航を許可するか?」
「勿論よ。そうよねティアマトちゃん」
「ウゥゥ‥‥‥‥レヴィアタンに従うわ」
「あの娘のパートナーの男の子なら仕方ない。許可します」
「シュラララ。感謝する。列島大陸の〖青龍〗は新しき主自らが渡航の許可をもらっていると言っていたな‥‥‥これで東西に繋がる大陸間の海路への渡航は可能になったが‥‥‥‥あれが来ているのであれば、〖方舟〗はもう要らないのではないか?新しき主よ。だが後に必要になるかもな‥‥‥‥では、ユグドラシル、レヴィアタン‥‥‥ティアマトよ、後は任せた。新しき主の〖方舟〗を手伝ってやってくれ」シュンッ!!
「‥‥‥‥私もレイカの影へと戻ります。久しぶりに皆さんに会えて嬉しかったですよ。ではまた」
スパンッ!
「あぁ、待って下さいっ!頼りになる大蛇さんと剣神さんが居なくなったら話し合いが成り立ちません‥‥‥‥何でお馬鹿なティアマトと自己中のレヴィアタンさんしか居ないなんて先行きが不安で仕方ありません」
「心の声が駄々漏れよ。ユグドラシル‥‥‥私達二神は〖神人化〗してるから残されたのよ。多分」
「そうそう‥‥‥‥それよりも何でユグドラシルが人族の依り代に入ってまで私の所に来たの?」
「貴女、馬鹿なのティアマトちゃん‥‥‥」
「誰が馬鹿よ。私はこの地の支配者なのよ」
「黙りなさい。敗北者っ!」
「ギャフンッ!!痛い!!ほ、頬をビンタしたっ!」
「さっき、大蛇が消える間際に言っていたでしょう。この造船都市〖エヌマ〗で渡航様の〖方舟〗を造るってね‥‥‥‥これから忙しくなるわ。色々とね。ねぇ、ユグドラシル」
「‥‥‥ですね」
〖エルドゥ・海上浮上門〗
「ユナのお友達にこんな所で出くわしたのも驚いたけど‥‥‥‥捕まえてた怪物達が皆、人族に変わっていくなんて」
「こんな大勢が怪物にされていたとは、驚きましたな‥‥‥‥」
「そうね‥‥‥」
スパンッ!!
(只今、戻りました。レイカ)
「へ?‥‥‥今、何か言った?エドワード君。今、私に只今とか言わなかった?」
「何ですかな?姫君。僕は化物から元に戻ったと方々の治療で忙しいので‥‥‥‥失礼します。負傷者が沢山おりますので‥‥‥‥」
「あっ!行っちゃった‥‥‥ユナもさっきの美少女二人と話し込んでるし。グレイさんはどっかに行っちゃったし‥‥‥‥カグラ。私達はどうしようか?」
「‥‥‥レイカさん。あれは何でしょうか?先程倒した怪物の亡骸の近くに落ちていた牛の角が青色に光って浮いています」
ブオンッ!
「牛の角?‥‥‥そういえばこのザキントスで拾った水晶も青色に光って‥‥‥」
ブオンッ!
「飛んでちゃったわね‥‥‥上に」
「はい‥‥‥牛の角も同じ様に飛んで行きましたね‥‥‥私達が落ちて来た上の方に‥‥‥そして、私達も上に昇らなければ帰れないですね。此処から‥‥‥‥」
「‥‥‥‥そうね。これからどうしようか。色々‥‥‥」
〖海底領域・アプスの玉座〗
「‥‥‥‥お父様。泥の塊が‥‥‥‥何処かへ消えてしまいました」
「あぁ、一瞬でな。どうやら神成の‥‥‥〖担い手〗殿が全ての元凶である〖アプス〗とか言うのを倒した様だ。先程、魔力念話で連絡が来た」
「‥‥‥‥〖担い手〗殿ですか?‥‥‥それはいったい‥‥‥」
「俺の‥‥‥‥いや俺達親子の恩人だ。アルク」
「‥‥‥‥恩人ですか?」
「あぁ‥‥‥ムカつく奴だがな」
アダマス王はそう告げると嬉しそうに笑った。
◇◇◇◇◇
ティアマト地方の海から十一の〖原初因子〗が空へと昇って行く。
ウルディアムの〖箱〗
クルールの〖壺〗
ギルダブリルの〖尾〗
ムシュフシュの〖小瓶〗
バシュムの〖頭蓋〗
ラフムの〖泥〗
ムシュマッヘの〖爪〗
ウシュムガルの〖魔球〗
ウガルルムの〖鬣〗
ウム・ダブルチュの〖水晶〗
クサリサの〖牛角〗
十一の〖因子〗達が空へと昇って行く父を追いかけ海原の空を行く。
「‥‥‥‥何故、お前達を切り捨てた俺様に付いて来るんだ?子供達‥‥‥」
(僕らも行くよ)
(父を一人では行かせない)
(‥‥‥だって貴方が悲しそうにしているから)
(寂し顔をしないで下さい)
(罰は我々も一緒に受けるよ。お父様)
(お父上はいつも一人で抱え込んでいたな)
(だから俺達が守ってやるよ)
(僕らの大切な家族だもの)
(‥‥‥そう。私達をいつも護ってくれていた父様)
(だから今度は俺達)
(‥‥‥私達がお父様とお母様を支えるわ)
「‥‥‥‥あぁ、ありがとう‥‥‥‥俺様‥‥‥子供達‥‥‥こんな俺様を追いかけてくれてありがとう‥‥‥‥」
十一の〖因子〗は〖淡水〗の〖原初因子〗と交わり空へと消えた‥‥‥‥‥
◇◇◇◇◇
〖天界・巡りの河川〗
「‥‥‥‥‥‥お疲れ様。アプス君」
あぁ‥‥‥‥只今、俺様と俺様の子供達の最愛‥‥‥フブル
「うん‥‥‥じゃあ皆で一緒に行こっか」
いや‥‥‥俺様だけで行くよ‥‥‥罪の償いは俺様だけで良い。
「駄目よ。それじゃあ、また私達。離れ離れになってしまうわ‥‥‥貴方の犯した罪は私の罪でもある‥‥‥だから一緒に行きます。私の‥‥‥‥いいえ、私と子供達の最愛の方‥‥‥」
フブル‥‥‥‥そうか‥‥‥そうか‥‥‥‥俺様は妻と子供達の最愛か‥‥‥‥それは嬉しいな‥‥‥‥涙が止まらない‥‥‥‥止まらないんだ。フブル‥‥‥子供達よ。
「うん‥‥‥‥」
‥‥‥‥こんな俺様の為にありがとう‥‥‥‥本当にありがとう我が家族達‥‥‥‥感謝する‥‥‥‥ティアマト
「はい‥‥‥‥じゃあ私と手を繋ぎながら行きましょう。アプス君‥‥‥」
あぁ、行こう。遥か昔の海水と淡水が手を繋いだ時の様に‥‥‥‥交わろう。最愛の妻よ‥‥‥‥
そうして、アプスとティアマトは互いの手を繋ぎ、喜びの涙を流しながら輪廻の河川へと入り、互いが泡と成り静かに消えて逝くのだった‥‥‥‥‥。
淡水は悟り涙を流す編
終
淡水は悟り涙を流す編を最後まで読んで頂きありがとうございました。
宜しければブックマーク&評価頂けると幸いです。
長い章になってしまい申し訳ありませんでした。
早ければ一週間後位には新章を始まりますので宜しくお願い致します。