溟海決戦 淡水は悟り涙を流す No.18 七神の神集い
『ユグドラシル地方・ティアマト地方境目・ミーミル大群滝・世界樹の根』の真下
『ミーミル大瀑布』
身体が幼くなっていく‥‥‥‥アナスタシアと灰神楽の〖ギフト〗の効果により、17~18歳位に成長していた身体が元の15歳程度の身体へと戻る。
「まさか。ティアマト地方の外、ユグドラシル地方に連れて来て〖ギフト〗を消滅させようとしてくるとは思わなかったな。だが完全に〖ギフト〗が消滅する前に〖エヌマ〗へ送る事ができて良かった‥‥‥‥後はよろしくお願いいたします。ユグドラシル様」
俺はそう言うとミーミル大瀑布の上に在る浮島に佇む緑髪の少女に話しかけた。
「はい。今回もお力を貸して頂きありがとうございました。―女神―アテナの眷属様。後の事はお任せ下さいませ」
「はい‥‥‥‥とっ!忘れるところだった、ユグドラシル様。ついでにこの子も〖エヌマ〗へと連れていってあげて下さい。最後に‥‥‥‥アプスに伝えたい事があるみたいですので」
シュンッ!
「‥‥‥‥よろしくお願いします。ユグドラシル様‥‥‥‥」
「この子をですか?‥‥‥‥それに〖神・アプス〗に伝えたい事ですか?‥‥‥‥分かりました。貴方の頼みなら畏まりました。では行きましょう。水姫族の方」シュンッ!
「‥‥‥‥行っちまったか。あの子の中でずっと見ていたのか。だから最後まで〖黄金の宝物庫〗の中で待機していたんだな‥‥‥俺の方は〖灰神楽〗を通じてアイツと最後の話しをするか。相手の精神世界を貫き燃やす灰神楽の炎極の中へと‥‥‥‥〖灰廊〗へと導け〖灰の首飾り〗よ」
ズズズ‥‥‥‥‥
◇◇◇◇◇
〖灰廊(灰神楽の中)〗
「ぐああぁ!!!か、身体が蒸発するっ!全身が燃えていく?こ、此処は何だ?何故、神たる俺様が全身に痛みを感じている?!」
「此処は私の精神世界だよ。魔法世界に脅威をもたらした神よ‥‥‥君は負けた。そして敗者がこの後どうなるかも分かるだろう?」
「お、お前は?!さっきの名剣と同じ雰囲気がある龍?!この身体の痛みはお前の仕業か?!!」
ズズズ‥‥‥‥。
「灰神楽の炎は相手の心‥‥‥精神世界を焼き尽くす。それが神と言われる存在でもな」
「小僧っ!!お前っ!!何故、此処に居る?何故、俺様を蔑む目で見ている?俺様を哀れんでいるつもりか。貴様っ!!!」
「灰神楽に頼んでアンタに最後の別れの挨拶に来たんだよ」
「挨拶だと?お前は何を上から目線で語っている!!があぁぁ!!!外の身体だけで無く精神の内側から燃えていくっ!!俺様の神聖の全てが燃えていくっ!!!」
「‥‥‥‥アンタはこっちの世界。魔法世界に多大な損害を与えた。それらの罪は絶対に許されるものではないだろう。だが耐えてくれ。耐えれれば、最後にアンタの本当の望みが叶うだろうからな‥‥‥‥〖神・アプス〗。アンタとの闘い楽しかったぜ。それとアンタの〖真核〗の記憶は彼女に渡すから持っていくよ‥‥‥‥さようなら。〖原初の水神〗殿」‥‥‥‥ズズズ
「待てっ!小僧っ!!お前っ!俺様の望みが叶うだと?!それよりも俺様を此処から解放しろっ!!小僧っ!!!」
「‥‥‥‥少年との挨拶も終わったね‥‥‥‥では最後の神罰を〖エヌマ〗に執り行おう。彼等も次々と集まって居るようだしね」
◇◇◇◇◇
ズズズ‥‥‥‥。
「身体が完全に地球に居た時の状態に戻ったのか‥‥‥‥黒衣の魔力は普通に使えるが〖黒衣装束〗は無理か。あの三年後の身体だからできた闘い方だったって事だよな。今の身体では負担が大きすぎて無理か‥‥‥‥」
「オオオイイ!!!そこの冒険者よおおいぃ!!た、助けてくれっ!!よ、依り代様が居なくなった途端にミーミル大瀑布の滝の流れが激しくなって、魔道船が沈没しそうなんだぁ!!!」
「ん?助けてくれだと?何の声だ?‥‥‥‥‥ドワーフやエルフが乗った船団?‥‥‥‥あれはユグドラシル様が夢の中で言ってた〖方舟〗を造るために連れてきた造船職人達か?」
◇◇◇◇◇
〖造船都市・エヌマ〗・七聖―女神―像上
「シュラララ‥‥‥‥神代振りか?六神以上の『始祖・神集九煌』が集うのは‥‥‥‥」
「そうね。大蛇‥‥‥まさか貴方が協力する何て思ってもみなかったわ。ティアマトちゃんもそう思うわよね?」
「ちゃんを付けないでよっ!レヴィアタン」
「誰に口答えしてるの?ティアマトちゃんっ!また、お口から全身に至るまで調教しなくてはならないかしら?」
「ヒィィ!!ごめんなさい。レヴィアタン様!!」
「御主。何があったのだ?」
「カハハハ!!だいぶお灸をすえられた様だな。ティアマトよっ!」
「自業自得です。」
「〖黒龍・八岐大蛇〗〖―女神―ティアマト〗〖極神・レヴィアタン〗〖―女神―ユグドラシル〗〖氷霊帝・アナスタシア〗‥‥‥‥そして、この私、〖緋龍・灰神楽〗の六神が揃ったけど。最後の神はいったい誰だい?」
「シュラララ‥‥‥‥久方ぶりに会うな。灰神楽‥‥‥‥色々と言いたい事はあるが今は急ぎの時、海底側にを探ってみろ。近づいて来ているだろう。水の剣神がな」
「水の剣神?‥‥‥‥あぁ、彼女が顕れるのかい?成る程ね」
〖黒龍〗と〖緋龍〗が会話をしていると会われる‥‥‥‥藍色の剣を片手に持った剣技大陸の七剣神が一柱たる〖剣神・巫ノ神子〗が顕現した。
ズパンッ!!!!
「お久しぶりです。皆様‥‥‥私の大切な眷属たる。レイカの方の闘いも無事に見届けられました。最後の祓いを行いましょう」
「まさか、君が来るとは思わなかったよ。剣神殿。君が武器意外の事で何かを大切にするとは意外だね」
「‥‥‥本当にお久しぶりですね。〖緋龍〗殿。そういえば、貴方の噂が随分と流れていましたよ。仕事を放棄したとか、次元の狭間に呑まれあちら側で永遠の眠りについたなどの‥‥‥‥」
「済まない‥‥‥‥大人しくしているから。それ以上、私に攻撃しないでくれ。剣神殿‥‥‥‥」
「シュラララ。惰眠を貪るからそうなるのだ。〖緋龍〗よ‥‥‥これで始祖・神集九煌の七神が〖七聖―女神―の像〗へと集った。始めるぞ。〖浄化の儀〗を」
〖黒龍・八岐大蛇〗はそう告げると身体全身が丸焦げた〖神・アプス〗を見つめた。
「何だ‥‥‥‥お前達は‥‥‥‥俺様をどうする気だ?魔法世界の神々よ‥‥‥」
「カハハハ!!何だ?消すのではないのか?私はてっきり存在ごと消すものとばかり思っていたぞ」
「‥‥‥‥罰なら。もう十分〖緋龍・灰神楽〗が与えただろう‥‥‥この〖地球〗の神殿の犯した数多の罪は許されるものではないだろう‥‥‥ないだろうが、〖天上の理〗たる『アリーナ』は―女神―ティアマトにも非があると述べているのだ。アナスタシア。然る罰を与えた後、ティアマトと再開させ、〖浄化の儀〗をもって〖天界〗に行かせよとな」
「カハ?アリーナがそんな甘い事を言うのか?嘘臭いな‥‥‥‥」
「ティアマト‥‥‥‥ティアマトはそれで良いのですか?貴女はこの神に捕らえられていたのでしょう?憎く無いのですか?!」
「うぅぅ‥‥‥何、起こってるの。ユグドラシル‥‥‥アリーナ様がそう告げたのなら従うわ‥‥‥‥それに私、アプスに最初の方は悪口を言われてたけど、その後は色々と良くしてくれたのよ。少しの間、神の座から降りて休憩していれば良いと言ってくれたの‥‥‥‥」
スパンッ!!
「‥‥‥‥―女神―ティアマト殿がそう言うのでしたら、私達も〖神・アプス〗殿ですか?この方の罪を許すしかありませんね」
「そんなっ!貴方達は別の大陸だから良いでしょうけどっ!この方は魔法大陸を‥‥‥ティアマト地方の民を殺してきたのですよっ!そんな方を許し〖天界〗へと行かせる何て‥‥‥あり得ま‥‥‥ムグッ!」
―女神―ユグドラシルが最後の言葉を言い終える前に水姫族の一人の女性がユグドラシルの口元を塞いだ。
「ユグドラシル様。それ以上の言葉はいけませんよ。次は貴女が滅ぼされてしまいます」
「ングッ!!ンンン?!(アルマさん?何を?!)」
「此処まで連れてきてくれてありがとう。最後に彼と話し合いたかったのよ。だから、少しだけ時間を頂戴ね」
「ムグ‥‥‥プハッ!あ、貴女、水姫族のアルマさんではありませんね?!貴女のその神聖はいったい?」
「‥‥‥少し大人しく見てなさい。ユグドラシル‥‥‥‥あの子達の最後のお話を邪魔しちゃいけないわ。どんな子だとしてもね」
「レヴィアタンさんっ!ですがっ!」
「‥‥‥‥何だ?お前は?‥‥‥水姫族の娘‥‥‥よ?いや、お前は‥‥‥」
「‥‥‥‥ボロボロね。アプス君」
「その声は‥‥‥‥俺様の本当の妻‥‥‥‥ティアマト‥‥‥いや、フブルか?」
「‥‥‥‥そう。私は貴方の妻。フブルよ‥‥‥本当は貴方の頬にでも平手打ちしてあげたいんだけど。もうその必要はなさそうな位。やられちゃたのね」
「‥‥‥あぁ、強敵と出会ってな。妻よ‥‥‥‥」
「そう‥‥‥なら、今は貴方に少しだけ私の想いを伝えるわね‥‥‥‥もう頑張らなくて大丈夫よ。アプス君、私ともう一度会う為に苦労をかけさせてしまってごめんなさい。貴方が此方の世界で幸せになってくれる事を勝手に願ってしまって‥‥‥一人でこの世界に連れてきてしまってごめんなさい‥‥‥ボロボロにさせてしまってごめんなさい‥‥沢山の苦労を一人で背負わせてしまって本当にごめんなさい‥‥‥‥私の勝手な愛を押し付けてしまって‥‥‥‥ごめんね。アプス君」
「‥‥‥‥フブル‥‥‥‥あぁ、良い‥‥‥その言葉だけでお前の全てを許すさ‥‥‥‥なんせ俺様は我が最愛の‥‥‥‥フブルの‥‥‥‥ティアマトの全てを愛しているのだからな‥‥‥‥あぁ、これが‥‥‥俺様が本当に欲した再開だったか‥‥‥俺様はただ、フブルと再開し、ただ言葉を交わし‥‥‥同じ時を過ごしたかっただけだったのだな‥‥‥妻よ」
‥‥‥‥アプスはそう告げると大粒の涙を流し、目の前のアルマ(ティアマト)の頬を右手で優しく撫でた。
「はい‥‥‥‥私も貴方と同じ気持ちです‥‥‥私の大切な旦那様!!」
そして、ティアマトもアプスと同じ様に大粒の涙を流し、アプスの焼き焦げた右手を優しく握った。
「‥‥‥‥ユグドラシル。これを目の前にしてこれ以上言うことがあるか?」
「‥‥‥いえ、何もありません〖黒龍〗様」
「‥‥‥‥了承した。では始めるぞお前達‥‥‥‥かの神を〖天界〗へと導く‥‥‥祝詞を‥‥‥」
「「「「「「「この神は罪を犯し‥‥‥‥悟り‥‥‥悔いを改めた‥‥‥‥此処に始祖・神集九煌たる七神の許したる〖浄化の儀〗は達成された‥‥‥‥我等が主たる〖天上の理〗アリーナの命を達成する‥‥‥‥〖天青回帰〗」」」」」」」
魔法大陸の空から一筋の光がアプスへと降り注く。
そして、ゆっくりと‥‥‥ゆっくりと〖神・アプス〗は〖魔法世界〗の天へと昇り、〖天界〗へと向かって行くのだった‥‥‥‥