溟海決戦 淡水は悟り涙を流す No.10 黒衣装束
〖ティアマト神殿〗
俺とアプスとの闘いは過激の一途を辿っていた。お互いに強力な攻撃をぶつけ合うのだが、現時点での両者の力は拮抗している様だ。そんな時だった、アプスが突然、動きを止め何処か遠くを見つめ始めた。
「‥‥‥‥‥ウガルルム。クサリサよ。お前達が敗れるか‥‥‥‥今までご苦労だった。お前達は他の怪物(子供)共とは違い、実に俺様の為に働いてくれた‥‥‥が、お前達の〖真核〗は壊されるとは。無念に思うぞ」
「〖神・アプス〗‥‥‥アンタの子供達も。殆んど倒された様だな」
「時が来ればまた何処かで蘇り、また出会う機械もある‥‥‥‥今はお前を倒し、〖地球〗へと降り立つのが優先される。だから、いい加減に倒されてはくれぬか?小僧。俺様も暇では無いのでな」
「それは俺の台詞だっ!アプス。俺は大切な人を捜索しないといけない。だから、このティアマト地方での闘いもそろそろ終わらせたいんだよ。分かったらさっさと倒されてくれよ」
「ただただ不敬な発言だな。小僧‥‥‥俺様は原初の神。そんな偉大なる存在たる俺様にその様な不遜な発言。万死に値するぞ‥‥‥‥〖神ノ使徒〗よ」
「原初に始まり、殺され、導かれ、生き返り、奪い、君臨し、元の地へと戻ろうとする〖神・アプス〗‥‥‥‥アンタの身体と心は永久の時の磨耗のせいで壊れかかっているんじゃないのか?アンタに残っているのは、〖地球〗に居た時に過ごした大切な存在、〖ティアマト神〗と再開したいという気持ち。その気持ちのみで、疲れきったその身体と心を酷使してるんだろう?‥‥‥神たるアンタだったら、本当はとっくに気づいているじゃないのか?‥‥‥‥こんな自己満足の行動で再開できても。アンタの最愛である本当のティアマト神は喜ぶ筈がないとな」
「‥‥‥‥‥‥フハハハハッ!!長い語りで何を言うかと期待し、静かに聞いていれば‥‥‥口から出るはその程度の妄言か。小僧っ!!!俺様と妻を殺した〖地球〗への復讐っ!!!それも俺様の望みっ!!妻を復活させると同等の望みだっ!全ては我々を殺した全ての現況たる〖地球〗の者共を殺す為のなっ!再開と復讐っ!!それを邪魔する者はどんな者であろうと俺様が排除するっ!何があってもだっ!!だから、お前もそろそろ消してやるぞっ!小僧っ!!!〖アプス・エンキ〗・〖原初の水による死〗」
「俺なりの誠意を込めた説得はしたつもりだからな‥‥‥‥後悔するなよ。淡水の神・アプス‥‥‥‥終わらせてもらうよ。この闘いを‥‥‥〖黒衣装束・天雷〗」
魔法大陸の七大大陸には『始祖・神集九煌』に選ばれた七人の決戦使徒が存在する。
合計四十九神の眷属の中から選ばしれし者達。〖七つの色欲〗を持つ者。それが七人の〖神ノ使徒〗達だ。
そして、俺は勇者時代。黄の〖神ノ使徒〗だった。黄色の〖七つの色欲〗に選ばれた者は〖黄色〗を司る七神達に与えられ、選べる‥‥‥‥それぞれの神達の〖権能〗〖資格〗〖加護〗などの特殊な力をその身体に刻まれる。
そして、俺は幻想大陸の〖七幻神〗の一角である〖雷幻神・マルズ〗の〖権能〗が気に入り選ぶ事にした。天候と他の神ノ使徒の力の一部を‥‥‥‥‥〖七つの色欲〗の色の力一部の着込み擬似的に活用できる‥‥‥‥〖天黒衣装束〗を‥‥‥‥
「俺は〖勇者〗の資格失った偽りの神ノ使徒だろう。だがとある契約者のスキル〖資格統合〗を使えば一時的に擬似的な神ノ使徒へと返り咲ける。今がその時と認識する‥‥‥‥次代が台頭してくれば消える偽りの〖神ノ使徒〗であれ、〖地球〗来た他の者であろうと守ろう。我が〖―女神―アテナ神〗の笑顔の為に‥‥‥‥‥黒衣天雷・〖雷黒纏い〗」
俺はアプスが放った〖原初の水による死〗を防ぐ為に、〖黒衣〗を纏う。
死の水に濡れない為に分厚く纏う。黒い装束を‥‥‥‥黒い雷を纏い、アプスが造り出した水に触り全てを破壊する。
「何だ?人族が着る黒い色の雨具を着込むだと?‥‥‥‥フハハハハッ!!あまりもの俺様の長期戦で遂に頭でも狂わせたか?小僧よっ!フハハハハッ!!」
ジジジ‥‥‥‥‥バリバリバリバリ!!!!!
「〖黒衣〗に触れたな‥‥‥周りを壊して走り回れ〖黒〗の色欲よ。そして、神すらも壊してやれ。遥か原初の神だろうとな‥‥‥〖爆喰雷〗」
まず、〖黒衣の雷〗が死の水と交わった。そして、死の水に宿る〖神・アプス〗の〖神秘〗と〖魔力〗を破壊し、何処にでも存在するただの水へと強制的に事象を書き換えた。
次に〖黒衣の雷〗が触れたのはアプスの身体だった。その雷の攻撃によりアプスが持つ〖権能〗と〖加護〗を破壊し、神としての力を削いでいく。
「何だ?黒い稲妻?先程の雷と何が違うのだ?いい加減にこんな雷、俺様に効かぬと学習したらどう‥‥‥‥‥痛みが内側から来るだと?‥‥‥‥‥俺様を守りし〖原初〗の権能と〖海底の加護〗が無い‥‥‥‥事象が消えただと?俺様の〖神秘〗の力が破壊された?」
「そう。〖黒衣〗は神の神格を落とす力を持つ‥‥‥‥この七幻神の力を持って、お前を神の地位から下ろし。沈めてやろう。〖神秘〗剥がれし神・アプス」
「‥‥‥‥‥人間風情が神落としだと?‥‥‥‥‥返り討ちにしてやるわ。神の力を頼りに闘う小僧よ。大アルカナ‥‥‥‥起動。〖正義〗執行」
アプスはそう告げると〖神々の黄昏〗の力。大アルカナの力を解放するのだった。