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怪物達の二重奏 No.4 魔球の揺り篭の中で


〖遥か古代の地球〗


(見て、貴方。皆、魔球の中でスヤスヤと眠っているわ‥‥‥‥)


(‥‥‥俺様にはただの怪物共にしか見えん。わざわざ俺様達の〖因子〗を分け与え、魔球まで使って産み出し育てる意味が全く分からんぞ。ティアマトよ‥‥)


(意味ならあるわ。家族が増えるの‥‥‥皆。私の可愛い子供達。私と貴方の大切な子供‥‥‥)


(馬鹿を言うな。ティアマトよっ!こんな化物共が神々たる俺様達の子供だと?笑わせるなよっ!コイツらは力。所詮は俺様達を守る為に産み出された肉壁に過ぎん。そんな化物共か可愛いだと?‥‥‥笑わせるなよ。俺様が唯一愛しているのはティアマトよ。家族はお前だけなんだぞっ!)


(‥‥‥‥そう。貴方にとっては私だけが家族なの。そう‥‥‥それは少し悲しいわ。悲しいけど、貴方のその考えは長い時間が経てば必ず変わっていくと信じているわ)


(‥‥‥‥俺様は何も変わらん。俺様はお前だけを愛し、お前は俺だけのティアマトであってくれ)


‥‥‥‥あぁ、これは遥か昔の記憶。苗床であった〖魔球〗に私が居た時のお父上とお母上が話していた記憶。


そう。あのお父上は私達〖11の怪物(クル・ヌ・ギア)〗の事なんて、家族ではなく怪物としか見ていなかった‥‥‥‥そして、更に私達を怪物として扱う様になったのは彼方の世界のお母上‥‥‥ティアマトお母様がマルドゥクとか言う者に無き者にされたのを知ってからだった。



▼▼▼▼▼


(何故、俺様に意志がある?‥‥‥神々によって俺は消された筈だぞ?どういう事だっ!それにこの可笑しな世界はいったい何処だ?!俺様の大切な妻。ティアマト!!何処に居る?)


(‥‥‥‥お母上‥‥が‥‥身体が半分に引き裂かれる直前に私達を此方の世界に飛ばしてくれました‥‥‥‥お父上)


(何?‥‥‥‥誰だ、お前達は?どれもこれも異形の怪物の様な身体の者達よ)


(‥‥‥‥私達は貴方とお母上との子供です。因子を頂き〖魔球〗で育んでもらった‥‥‥お父上が神々の罠にはまり、消えてしまった後に私達は‥‥‥)


(あぁ、あの怪物共か‥‥‥‥それよりもティアマトは何処だ?俺様のただ一人の家族は何処に居る?)


(‥‥‥‥いえ、私達も‥‥‥お父上の‥‥‥)


グサッ!


(‥‥‥‥え?‥‥‥ギャオオオオ!!!)


(叫び声すら化物なのか‥‥‥‥お前達の事など後で良い。それよりも俺様のティアマトは何処に居る?早く言えっ!早く言わねば、お前達十一匹全員を殺すことになるぞ)


(‥‥‥‥私達を殺す?お父上が私達を殺す?‥‥‥‥分かりました。お母様の身に何かあったのかをご話致します。ですから私を‥‥‥私達を殺さないで下さい。お父上‥‥‥)


(黙れ怪物共‥‥‥‥醜い失敗作共。俺様のティアマトを守れなかった愚か者)


なんて身勝手な言い方だろうか。私達はお父上と初めて話し、最初に言い放たれた言葉が殺す、醜い、愚か者‥‥‥‥それが自らの〖因子〗を使い産み落とした親の言い放つ事なのだろうか?


‥‥‥‥お母上はそんな事は無かった。私達。十一の子供達を大切にし。名を与え、生きる為の食べ物を与え、魔法(エンキ)を与え、私達に愛を与えてくれた。そう、殺すと言い放ったあれ(アプス)とは違い。ティアマトお母様は私達を自らの子供として愛情を注いで接してくれていた。


でも、あれは?


(お前は使えから門番でもしていろ。ウシュムガルよ)


(常に俺様を慕い、俺様の為に動け怪物‥‥‥子供達よ。そして、此方の世界のフブルを媒介し、我が妻〖ティアマト〗をこの手に取り戻すのだっ!)


(子は親の為に尽くすものだ。分かったならばせっせと動け子供達よ‥‥‥いや化物の間違えか‥‥‥‥)



あれは私達を自らの願いを叶える為の道具としか見ていない。


故に私達が今、行っているこの闘いも無意味な事‥‥‥‥そして、私の願いは安らかな終わり。かつて〖魔球〗の揺り篭の中に居た様な悠久の眠り‥‥‥‥お母上のあの時の子守唄を聴きながら安らかに眠っていたい。



「ウィ‥‥‥ウシュムガルの願い。やっと本に書かれた‥‥‥本当の願い。〖心からの安らぎ〗」


「‥‥‥‥そう。私はこんな闘い望んでいなかったです。静かに生きたい‥‥‥あの横暴な(アプス)に心乱されず、平穏にお母上と兄弟達で過ごしていたかっただけなんです。それが今、こんな傷付きながら戦っている。〖ウシュムガル・エンキ〗・〖安らぎ無き(ウシュム・ルガア)〗」


「止めます。〖剣魔の相〗・〖紫絶〗」


ウシュムガルが放った斬激をシエルはすかさず紫幻の一太刀で防いだ。


「ウィ‥‥‥〖聖典〗の記しは満たされました。貴女のその願い。このルア・カトリクが叶えましょう‥‥‥貴女は()へと行く為の条件をクリアしていますから‥‥‥この海底領域から逃げ出すティアマト地方の民を密かに逃がし、生き長らえさせていたのですね。見事です」


「ルア法王様?‥‥‥口調が」


「‥‥‥‥はい。私ができる範囲で逃がしました。あのお父上やクサリサになぶり殺されるよりは、マシだろうと思い‥‥‥〖深海〗へと連れて行きました」


「その貴女の行動で多くの方々が救われました。―女神―ヘスティアに様に変わり褒美を‥‥‥〖聖杯・聖典〗‥‥‥〖天への導きを〗」


ウシュムガルの身体が光の粒子となり消え始める。そして、周囲から讃美歌が聴こえてくる。


「‥‥‥あぁ、これで良い。これで安らかに眠れます‥‥‥そして、お母上様にも‥‥‥きっと」


「これは七聖典の曲?」


「ウィー‥‥‥ウシュムガルの母は上に居るから沢山甘えろ‥‥‥達者でな」


「‥‥‥‥はい。感謝します。金髪の聖女様‥‥‥」シュンッ!


「ウィ‥‥‥聖女違う。ルアは法王‥‥‥‥」


「ですね‥‥‥お疲れ様です。ルア法王様。色々といきなりでしたがウシュムガル様が納得いく最後でしたから良かったです」


「ウィー‥‥‥‥ルアめそう思いたい」



〖ウルク庭園〗


「ガルルル!!‥‥‥ガア?!!!ウシュムガルの奴!!!何を勝手に逝ってんだ!!俺がこんなに苦しんでいるんだぞ!!!」


「‥‥‥‥そうだから。そろそろ終わらせるから‥‥‥神代・回帰‥‥‥〖五属・廃園〗」


「ガアアアアアアアアアア!!!身体に五つの痛みが!!!アアアアアアア!!!は、弾け飛ぶ!!や、止めろおおおお!!!」


「カハハハ!!では破裂する前に氷漬けで逝けっ!〖青の氷〗・〖藍の凍〗」


パキンッ!


「ガルルル!!ガアアアアアアアアアア!!!!!!」



天上へと昇る為の讃美歌が響き渡る中、下へと落ちる絶望の雄叫びが〖ウルク庭園〗に響き渡る。


二体の為の二重奏が海底領域に木霊し、この戦いの終わりが近付きつつある事を戦っているの者達に報せるのだった。



〖天界〗


「‥‥‥‥えっと?此処は?あの金髪の聖女様は確か‥‥‥」


「久しぶりね!ウシュムガル。下では大変だったわね」


「その声は‥‥‥もしかして‥‥‥‥」


「‥‥‥‥色々と苦労をかけたわね。さぁ、此方に来なさい。久しぶりに子守唄を歌ってあげるわ。そして、その後、ゆっくりあの人のお話を聞かせてね」


「‥‥‥‥は‥‥‥い‥‥‥はい‥‥‥了解です‥‥‥‥勿論です。お‥‥‥」



怪物達の二重奏


終。




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