二対の蛇は深海の底へ No.7 八部衆の〖龍〗
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〖龍〗
沙羯羅とも呼ばれ、水中の宮に住むと言われる存在である。
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「裂けろ!!クソ蛇!!〖柔魔の相〗・〖魔柔烈〗」
「効く攻撃をわざわざ喰らう奴などいないぞ。〖ムシュフシュ・エンキ」・〖畏敬の念の皮避〗
二人の激しい戦いが続くなで変化が生じ始めた。ムシュフシュが摩睺羅伽が放つ強力な〖切断〗を有する攻撃を避け始めたのだ。
「ハハハッ!何だ?避けるのか?〖剛〗の攻撃は効かずとも〖柔〗の攻撃は効くようだな!しかし、いつの間にか傷が治るとは‥‥‥硬化とやらを別の力に回したな?」
「観察眼もなかなかの様だな。お前は‥‥‥‥確かにお前の攻撃は俺に届く様にはなった様だ‥‥‥しかし、その攻撃では俺を倒す為の致命傷にはかけるのだろう?ならば俺は回復と回避に専念するのみでお前に勝てるという事だ。シュハハハハハ!!!」
「チッ!嫌なところに気づきやがる!!」
その瞬間を後からやって来た味方は見逃さなかった。
「隙をつかせて頂きますっ!〖水魔の相〗・〖天下水匤〗」
硬化した皮膚さえ貫通しうる水刃がムシュフシュへと放たれ、胴体へと命中し数ヵ所に空洞を開ける。
「ギャアアアアアア?!!俺の身体に傷がああああ!!!何処から攻撃が来た?!」
「‥‥‥‥やっと来やがった!〖龍〗の奴。やっと隙ができやがったな!喰らえ!!〖剛魔の相〗・〖摩睺羅〗」
摩睺羅伽の強力な剛腕から繰り出される。暴の力が無防備なムシュフシュの頭部へと降り注がれる。
ドガアアンン!!!!
「ガアアウアアア!!!!お、お前!!!!俺の頭が、顔が‥‥‥‥潰れ‥‥‥‥」ドサッ!
ムシュフシュは凄まじい音をさせながら地面に倒れ込んだ。傷ついた身体は、刃物で切断された百足の身体の様に蠢き始めた。
「遅くなりました。摩睺羅伽殿‥‥‥‥これで終わりましたか?」
「いや‥‥‥まだだ。〖龍〗‥‥‥‥コイツはまだ底を見せていねえ。来るぞっ!」
「‥‥‥‥シュアアアアアアアア!!!お前達!!俺の身体に幾つもの傷を付けてくれたな!!!母上殿から頂いたこの身体にっ!!!」
「傷が‥‥‥‥一気に回復したのですか?それに姿もあれでは本物の異形ではないですか」
「炎を纏い虫、蛇、獅子の身体が犇めいてやがるな‥‥‥‥古代の魔力暴走が始まりやがったな。アイツの精神が壊れる前に倒すぞっ!〖龍〗!!」
「えぇ!!この国の全てが破壊される前にっ!」
ムシュフシュはいきなり立ち上がったが普通ではなかった。身体は傷付き、絶命寸前だった身体は一瞬で回復し、体内に宿っていたあらゆる種族の力が活性化し、暴走を始め古代の魔力暴走を引き起こした。
バヒロンの竜は最後の力を振り絞り、全ての生命を殺す為に動き始めた。
「シュハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!母上殿の為に邪魔な者達は全て化物に変えてやろう!!!〖ムシュフシュ・エンキ〗・〖母へ捧げる悲劇〗」
「心を失くした本物の化物に堕ちる前に逝かせてやるっ!〖剛柔の相〗・〖巡邏楽〗」
「遅れた分を取り戻しますっ!〖水魔の相〗・〖水冷翔〗」
巨大化していくムシュフシュに向かって二人の神級の神仏が相対する。
激しい攻防が激しく繰り返され、海闘の国・エリシュは激しい動揺が走った。
〖サルマハ市場〗
「化物の蛇?」
「しかも白い‥‥‥いや赤色?激しく変色を繰り返しているのか?」
〖レジスタンス本部〗
「何だ?あの二人は?何故、あんな化物と戦えているんだ?」
「‥‥‥我々も急ぎ行きましょう。兄上‥‥‥いえ、アルク隊長」
「ん?あぁ、そうだな。リブルス‥‥‥‥」
〖海闘場市場〗
「あのムシュフシュとか言う奴もアトランスの時の奴、同様に魔力暴走をし始めたのか‥‥‥‥だけどあれは‥‥‥アトランスの奴とは比べ物にならない程の力で暴れている。勝てるのか?八部衆、二人だけで‥‥‥‥いや、アイツらを信じようっ!こっちの準備もそろそろ終わらせないとな」
それはまるで神話の戦いの様な戦いだった。
だが、それももう時期、終わりを迎える事になる。
強力な二人の神仏の手によって。