二対の蛇は深海の底へ No.5 バビロンの竜
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ムシュフシュ
古代メソポタミアの伝承には霊獣とされ、毒蛇、獅子、鷲、蠍、それぞれの部位を持つと記録されている。
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〖海闘場市場〗
「バシュムの馬鹿め‥‥‥あの騎士に返り討ちにされたのか。アイツの〖頭蓋〗だけは回収し持ち帰らなければな。全くっ!手間がかかる兄弟だっ!」
「何を余所見をしてやがるっ!!クソ蛇!!〖剛魔の相〗・〖逆楽我〗」
バキッ!
「俺の考え中に攻撃してくるな。シュハハハ‥‥‥〖頭蓋〗回収後。貴様の主にでも埋め込むとするか。あれは良い器になるぞ。どうなるか考えただけで、ぞくぞくするなっ!シュハハハ」
「攻撃を喰らいながら笑いやがってっ!気持ち悪い奴だな!!」
「シュハハハ‥‥‥良いぞ。お前のその微弱な攻撃で、少し気分が乗ってきた‥‥‥‥久しぶりに本気を出して相手をしてやろうか。〖地球〗側の成功者よ」
「ぬかせっ!クソ蛇風情が!!」
「‥‥‥‥摩睺羅伽の攻撃がまるで効いていないのか?〖龍〗」
「いえ、神成殿。効いてはいますよ。いますが全然、効いていないだけしょうね。‥‥‥‥まさか剛魔を喰らって平然としているとは、これは何かしらのカラクリがあるのではないでしょう」
「カラクリか‥‥‥オルビステラがこのティアマト地方から姿を消した事で〖世界〗の力は半減して、〖神秘〗と〖魔力〗はアイツらアプスの子供とかにも効く様になってる筈だ」
(あの蛇の化物には何か固有の〖加護〗が付いているんじゃないのか?)
「は?アダマスのオッサンの声か?‥‥‥」
シュンッ!
俺が〖龍〗にそう告げると同時に〖黄金の宝物庫〗が光。中からアダマス王が現れた。
「‥‥‥オッサン。もう出てきたのか?随分と早かったな。俺はてっきり後、半月は中でどんちゃん騒ぎしてるかと思ってたんだがな」
「ヒクッ‥‥‥やっと開放されたぞ。小僧‥‥‥‥貴様のせいで神々の酒盛りに永劫付き合わされるところだったぞ」
「もっと楽しんで来いよ。たまに心配で見に行ってたけど、楽しそうに酔い潰れてたじゃないか」
「巨大な蛇と鯨に勧められるがままに飲まされ続けた結果だ。ヒクッ‥‥‥‥まさか自身が契約している神々に俺を監視させるとは思いもしなかったぞ」
「オッサンを外で好き勝手させてると、どんなトラブルを招くか分からないからな。ならば、アンタが逆らえない奴等をアンタの近くに居させるのが一番だと思ったんだよ‥‥‥どうやらそれが正しかった様だな。〖大蛇〗に手作り神酒を呑まされてぐでんぐでんだな。それにあれには俺の〖魔力契約〗の一種が入れてあるとか〖大蛇〗は言っていたし、これでオッサンは俺に安易に逆らえなくなったということだな (ボソリ)」
「何だ?何の話をしていたんだ?ヒクッ!」
「オッサンは素晴らしい王だって言ったんだ」
「おぉ、そうか、俺は素晴らしい王か。ヒクッ!」
「‥‥‥完全に弱れてますね。おっとっ!こうしてはいられませんね。私も摩睺羅伽に加勢しなくては、では神成殿。行って参ります」
「あぁ、気を付けて戦ってきてくれ。その間に俺は化物達を‥‥‥元に戻す準備に入るからさ」
「‥‥‥‥彼等の命を取らずに戻すですか?その様な事が此方側では叶うのですか?」
「可能性は低いがやってみるよ。摩睺羅伽には善処しようと言ったがな‥‥‥化物の姿に変えられた彼等を元に戻して、救えるなら救ってやりたいだ。だがあの本は久しぶりに使うからな。暫く時間が必要なんだ」
「ガガガガ!!ならば俺達が雑魚を押さえ込むぞ!子供よっ!」
「はいっ!是非、貴方に力を貸しましょう。主殿。あの変わり果てた子供達を元に戻す為に力をっ!」
「乾闥婆に夜叉‥‥‥‥あの化物の群れの中から戻って来たのか?」
「‥‥‥‥この二人は子供の事になると本当に一生懸命になりますね。では、私はあの蛇を討伐に行きますので、ではっ!〖水魔の相〗・〖仮水面〗」
〖龍〗は水色をし、何かの呪印の様な言葉が描かれた面を装着するとムシュフシュと摩睺羅伽の戦いの場へと向かって行った。
「ガガガガ!!俺達も行くぞっ!!〖香奏の法〗・〖楽想餓〗」
「はいっ!〖天夜叉・降魔の相〗・〖宿真堂〗」
乾闥婆と夜叉は海闘の国の上から現れた化物の群れに向かって技を放ちながら、向かって行く。二人が攻撃する化物はどれも身体が大きなものばかりで、子供の様な姿の化物には一切攻撃していない様だ。
「ヒクッ‥‥‥何だ?あの不思議な力を使う連中は?神成の新しい契約者達か?」
「酒臭いからあんまり近付くな。オッサン!!」
「黙れっ!誰がイケオジだ」
「誰もそんな事言ってねえよっ!酔っぱらいっ!別世界から呼んだだよ。特殊な場所でな‥‥‥‥いちをずっと時を過ごして、仲間になってもらった‥‥‥ポイぞ」
「ポイ?なんだそれは?」
「いや、長い年月過ごして、精神崩壊を起こさない為や、身体の負担にならない様に〖概念刻み〗で年月を俺の魔力回路に体感として刻んだせいで記憶が曖昧‥‥‥‥」
「ぐごおおお‥‥‥‥ZzzZzz」
「てっ!寝ちまったよ。このオッサン‥‥‥つうかやっと寝てくれたか、オッサン‥‥‥‥ティアマト地方に着いてから様子がずっとおかしかったもんな。何日も寝てないのを俺が気づかないとでも思ったのかよ?‥‥‥‥自分の息子の行方が気がかりでしょうがないんだろうな‥‥‥‥セクウィ」
(ホー、ホー、何ー?ヌシ様‥‥‥セクウィは今、休暇中だよー)
「この国でアダマス王の息子の情報を集めてきてくれないか?‥‥‥‥この国は〖深海〗と〖海底〗からの避難者でいろんな場所から人が集まっている。君に〖心理眼〗を付与させとくから視てきてくれないか?」
(うー、後でヌシ様の魔力瓶百本貰うからね‥‥じゃあ、行ってくるよー)
「ホー、ホー!!」
「良し、情報集めはセクウィに任せれば大丈夫だな‥‥後はムシュフシュとか言う奴の詳細は‥‥‥‥」
俺は自身のスマホをポケットから取り出し、とある歴史文献を探し始めた。
「見つけた‥‥‥バビロンの竜‥‥‥にして神獣か‥‥‥‥そりゃあ、あれだけの神聖を身体に纏ってるわけだな。あの蛇は‥‥‥‥」
〖バルサル海港〗
「どんだけ硬いんだ!!てめえは!!!」
「シュハハハハハ!!!良いぞっ!どんどん攻撃してこいっ!地球側の神聖持ちよっ!シュハハハハハ!!!」