深海に潜る
ティアマト地方・〖フレティア水門・深海〗
「‥‥‥‥良かったのですか?セハル様、あのお方は七聖教会の創立に尽力頂いた〖無色〗の○○様。あの場で出会ったのは奇跡の様な者です、我々で丁重に保護しなければならないのでは?」
「いや、数ヶ月この地下鉱脈をさ迷っていた僕達にそんな余裕ありませんでしたよ。あれは単なる僕の欲が出ただけですよ。マレーシ卿」
「欲‥‥ですか?それはいったい?」
「七聖教会の創設メンバーである〖無色の○○〗様は僕が保護してあげたいという、僕の欲ですよ。まぁ、それは今の我々は遭難寸前の状態では無理な話しですがね。それを追い討ちをかけるかの様に昔の〖黒衣〗姿の彼の偽者が現れるとは」
「諦めるしか無いという事ですか。成る程‥‥‥ですがセハル様。我々、七聖教会団もここ数ヶ月の地下鉱脈で資金、食料、医療品等が底を尽き欠けておりますが」
「そうでね。あの場ではつい、見栄を張ってしましたね。ハハハ、偽〖黒衣〗殿に言われるがままに海獣達に乗りましたからね。本当はアダマス王とある程度戦った後、一度地上に戻してもらおうとも考えたんですが‥‥‥‥こんな紙を見せられたら進むしかないでしょうね。どうぞ、マレーシ卿」
「紙ですかな?‥‥‥失礼、読ませて頂きます」
『セハルへ。済まないが此処は引いてくれ。海獣の背には、ティアマト地方への行く為の資金と食料諸々はあんたらがアダマス王と睨み合ってる間に積んでおいた。これで数年分は持つだろう‥‥消えた金庫分の財は返したから許せ。セハル』
「消えた金庫分の財?‥‥‥何の事ですかな?‥‥‥とっ!紙がいきなり燃えて消えてしまいましたぞっ!」
「僕、以外が読むと燃える様に細工していたのでしょう。彼は‥‥‥いや、本当に彼なのかはまだ分かりませんがね。ハハハ、さじずめ莫大な報酬は先に差し出すから、先に進んで様子と邪魔な者を排除させるつもりなのでしょう。全く、相変わらず腹黒いですね。僕の妹の彼氏君は‥‥‥‥このまま青深海の〖深海〗の港〖ティス〗に向かいましょう。皆さん」
「〖ティス〗ですか?深海の国〖アトランス〗では無くですか?セハル様」
「えぇ、ルルメル卿‥‥‥彼が用意してくれた潤沢な度の食料があればそこまで難なく行けるでしょう。僕達の役目は―女神―ティアマト様の異変を調査する事、彼等とまた鉢合わせするのも面倒ですからね。(彼が本当に本物で何をしにティアマト地方に入るのかは少し気になりますが、今は先を急ぐ事を優先しなくては)」
「畏まりました。セハル副司祭様‥‥‥‥」
「(しかし、彼の〖黒衣〗を昔、アリス姫と共に入った〖不思議の森〗で失ってしまったとエリスからは聞いていたから安心してたんですがね‥‥‥どうなってるのでしょうね。)まぁ、彼が本物であれ、偽者であれ、今は距離を取るのが最善です。腹黒君」
「ギャオオオオ!!!」
七聖教会が乗る海獣が深海を進みながら、雄叫びをあげる。そして、一団は〖深海〗の暗い底へと進んで行くのだった。
〖フレティア水門〗
「誰がゴリラ聖女の彼氏で腹黒君だよ。あの腹黒司教め‥‥‥‥〖魔力拡張〗で此処まで聴こえて来てるぞ」
「‥‥‥‥〖世界は半分変わる(ラフム・ムアル)〗それじゃあ、刹那さん。私は〖黄金の宝物庫〗の貴方の部屋を借りるから、何かあれば呼んで」
「あぁ、ありがとう。オルビステラ。部屋は好きに使っている良い‥‥‥‥君は特別だから」
「‥‥‥‥‥そうね。数千年ずっと一緒にいたかもしれないものね。私がこの世界から一時的でも消えれば、あの人達も魔法と神秘も使える様になるわ。それじゃあ」シュンッ!
「本当に世話になったよ。オルビステラ、君には感謝しかない‥‥‥‥」
▽▽▽▽▽
〖オルビステラの世界〗
(カハハハ!!長かったがやった終わったな!灰神楽)
(あぁ、三千年と少しかい?まさか彼の三年の成長がこんなにかかるなんて想定外だったよ。アナスタシアが言っていたマーリンとか言う魔術師はどうやって彼を成長させていたんだろうね?気になるよ)
(それよりも私が気になるのはこの〖世界〗から出た時の方が気になるぞ。魔法世界にセツとオルビが戻った瞬間。精神と脳が崩壊しないか心配だぞ)
(それは自分とアナスタシアの〖ギフト〗で解決できるよ。共に過ごした時は記録に、身に付けた体験と経験は彼と彼女の魔力回路に深く刻み成長させる‥‥‥‥〖概念の刻み〗でね)
(‥‥‥‥それならば〖天上の理〗から気づかれる事も無いか。成る程)
(お話し中申し訳ありません。二神様、我々は〖八部衆の門〗へと戻ります)
(カハハハ!!そうかっ!長い間。セツの特訓に付き合わせて悪かったな。八部衆達よ)
(そうかい?では、自分も首飾りに戻ろうかな‥‥‥‥アナスタシア。後は頼むよ、自分は時が来るまで寝てるからさ。よろしく~)シュンッ!
(あっ!コラッ!待て、灰神楽!!全ての事が終わったからと、直ぐに寝ようとするなっ!)
(では、我々も‥‥‥‥)シュンッ!
(フンッ!クソガキ‥‥‥良く最後まで頑張ったな。何かあれば先ずは俺を呼べ)シュンッ!
(あぁ、ありがとう。摩睺羅伽)
(‥‥‥‥じゃあ、この私の〖世界〗‥‥‥オルビステラの世界を閉じるわね。皆‥‥‥‥長い年月お疲れ様。皆と過ごして得た。〖真実の心〗を大切にするから)
ズズズズズ‥‥‥‥パキンッ!パリンッ!
▽▽▽▽▽
こうして〖オルビステラの世界〗での出来事は幕を閉じた。
そして、現在に至るんだが、あの中では数千年という時を過ごしたというのに、どうやら魔法世界の外の世界では全然、時間が進まず。〖オルビステラの世界〗の出来事は一瞬だったようだ。
それにしても、あの中での数千年にも及ぶ厳しい修行の日々が、元の世界に戻った途端に曖昧で不思議な記憶に変わっていく。
彼処を出る前に灰神楽とアナスタシアから聞いた話では、数千年という時を過ごした事が俺の精神や脳に負荷がかからない様に〖魔力回路〗に直接、魔力概念を刻み込んだらしい。
それが原因なのかずっと前に対価として〖女王〗に渡してしまった〖黒衣〗を纏える様になろうとは思わなかったな。
いや、今はティアマト地方の〖深海〗に向かわないとな。
「また突然現れたお前は‥‥‥‥神成なのか?それにさっきの娘は敵である〖神々の黄昏〗じゃないのか?」
「おぉ、アダマスのオッサン。久しぶりに‥‥何だか数千年振りに会った気分だな。とりあえず、〖深海〗に潜る為の準備をしながら、あの世界で何があったのか作業しながら説明するよ。オッサン」
数秒、数分と時間が刻一刻と経つにつれ、あのオルビステラの世界で過ごした事が曖昧になり‥‥‥‥俺の〖魔力回路〗〖精神精神〗〖神気脈導〗に数千年分の体験、経験、記憶が刻まれる
遠い記録へと変換される‥‥‥アナスタシアと灰神楽と〖八部衆〗‥‥‥そして、オルビステラと過ごした沢山の思い出と厳しい修行の日々が。
これも〖『始祖・神集九煌』の神々がもたらした身体成長の〖ギフト〗によるものなのだろう。
ティアマト地方限定の三年の身体の成長‥‥‥恐らく他の地方に足を踏み入れれば、〖概念刻み〗は残るだろうが成長の〖ギフト〗は消えるとアナスタシアは言っていたな。
「カハハハ!!!可憐っ!ルアッ!あれが三年後のセツの姿だぞ。でかくなっただろう?カハハハ!!」
「ウィー!!神成が老けてオッサンになった!!」
「‥‥‥‥あれが三年後の神成君?どういう事ですか?‥‥‥童顔でショタポイッ方が私、良かったです‥‥‥ちょっとショック」
「安心しろ、可憐よ。時が来ればセツの身体は元の戻るぞ‥‥‥可憐が好きなショタっぽくな」
「それは本当ですか?良かったですっ!私、ショタコンなんでっ!」
「‥‥‥可憐ママはショタコン?」
「カハ‥‥‥とんでもない事を暴露したな。可憐‥‥‥」
可憐ちゃんのとんでもないカミングアウトが聴こえた様な気がしたが、今は〖深海〗に潜る事の方が大事な事なのでスルーする事にし、俺とアダマスのオッサンと共に〖魔水球〗を展開する作業に取りかかり始めるのだった。




