臨界決戦・〖神子の愛は世界を揺らす〗No.9 夜叉 VS クルール ②共に
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〖夜叉〗
人間に恩恵をもたらす存在、森林に棲む鬼神である。樹木に関係があり、聖なる樹と共に絵に書かれことが多い。また水との関係もあるとされる。
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「私の心が乱れている?くそッ!〖クルール・エンキ〗・〖壺の底の大魚〗」
「シュアアアア!!!」
「それは良い事ですね。精神が活発になっている証拠だ。〖地夜叉・威徳の相〗・〖岩鵞倉〗」
クルールが詠唱を終えると壺の中から白き大魚が現れる。獰猛な目付きで夜叉に狙いを定め再度、襲い掛かる。
そして、〖地夜叉・威徳の相〗の面を被った夜叉は謎の魔法陣を展開し岩石の雨を降らせる。
「樹木の次は岩石だと?‥‥‥なんだ?その統一なき力は?出鱈目な存在めっ!」
「あらゆる歴史が私達に力をもたらすのです‥‥‥‥貴方を救う為に私は動く、先程の貴方の願いを叶える為に‥‥‥‥力を使いましょう。〖岩来浮遊〗。回りなさい。金剛よ」
「シュアラ?ギャアアア!!!」
「ヘンガルル?!‥‥‥‥向かってくる岩石をその強靭な牙で砕き切れ!!!〖破壊の白き魚よ(クル・リア・ガラ)〗」
「シュアアルルアア!!!!」
クルールは自身の〖●●〗をヘンガルルへと注ぐ。するとヘンガルルの魚体が肥大化し、人の様な手足が生える。
「岩石を殴れ、蹴れ、そして、砕けっ!ヘンガルル!!そして、私をオルビステラ様の元へと向かわせるてくれ」
「‥‥‥‥口調も崩れてきましたね。心が解放へと向かっているのでしょう。正しい世界に帰る為の始めの解放‥‥‥‥彼、彼等にこの様な苦行を敷く者‥‥‥‥〖アプス〗ですけ?‥‥‥‥彼をどうにかしなけばいけませんね。それができるのは彼‥‥‥‥ですが以前、あった時の彼とは明らかに違う」
「何を呑気に独り言を呟いている?〖クルール・エンキ〗・〖砕け砕けよ白き大魚よ(クル・アル・ヘンガルル)〗」
「ギュシュルアアアア!!!!!」
「‥‥‥‥邪魔ですよ。邪魔者の化身。〖地夜叉・威徳の相〗・〖地面漠圖〗」
夜叉の周囲に異変が起こる。泥しかないこの〖オルビステラの世界〗に山岳が顕れる。その山岳の天辺に〖地面〗を被った夜叉が静かに降り立つ。
「何をする気だ?止めろっ!止めるのですっ!ヘンガルル」
「シュアアアア!!!」
「まずはその悪意の繋がりを絶ちなさい。〖地夜叉・威徳の相〗・〖岩漠山底〗」
「グ‥‥‥‥グギャアアアアア!!!!!!」
「ヘンガルル!!!に、逃げろおぉぉ!!!」
「いいえ、このまま潰します‥‥‥‥悪意の塊は此処で滅します。此方の世界の為にも‥‥‥そして、貴方の心の為にも‥‥‥‥絶えなさい。神明・開示〖地心如夜叉〗」
「ガァ‥‥‥‥アアアアアアアアア!!!!クソガァアアア!!!!」
バギンッ!
「なっ?私の壺がヘンガルルが潰れたと同時に割れた?‥‥‥‥ガァアアアア!!!私のか、身体が崩れていく?!!!!」
「〖再地の相〗‥‥‥‥〖待望の籠〗」
「‥‥‥‥私の身体の崩れがおさまった?貴方‥‥‥私に何をした?」いや‥‥‥‥私の何を見た?」
「今は話せませんが‥‥‥‥全てが終わったら共に帰りましょう。元の天へと‥‥‥‥それが成されるまでは私が貴方を‥‥‥‥いえ貴女方を護りましょう」
「何を言っているのか‥‥‥‥今は分からないが‥‥‥‥あぁ、壺が‥‥‥‥割れ‥‥‥ヘンガルルも居なくなったというのに、今は凄く心が軽いんだ‥‥‥母さん」シュンッ!
「そう。今は眠りなさい‥‥‥‥この歪な外の世界が終わるその時までは‥‥‥‥」
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〖神成&アナスタシア〗サイド
「‥‥‥‥‥近づけない。それに全て喚ばれてしまうなんて」
「その為に自分が暴れているんだ。〖花炎残〗」
「‥‥‥最悪」
灰神楽が遠くでオルビステラの相手をしている。そんな中、俺は大柄でそれぞれ異なる姿をした六人に取り囲まれていた。その一人一人が圧を放ち。俺を見下ろしている。
「それで我々を呼び出したと?『七原龍』・〖緋龍〗様の助力のお陰でか?小僧」
「あぁ‥‥‥」
「つうかよ!何でそんなに弱くなってんだ?〖黒龍〗様退治の時とはえらい落差じゃねえか?俺はそんな奴に使われる義理わねえぜ!」
「おいっ!〖緋龍〗様の御前だぞ。言葉はちゃんと選べ」
「目の前の変な娘の対応で此方など見てる‥‥いるな。あの方ならば」
「成る程な。此処でてめえに逆らえば、〖緋龍〗様に焼かれるって事か?良いご身分だな?小僧!それ程、弱体化した上で俺達〖八部衆〗を使うってか?笑わせんなよ」
「だが、乾闥婆と夜叉はこの子に反応した。従うということだ。八部衆のうち、二人はこの子にな」
「だからなんだ?アイツらはガキに甘い側面があるだけだろうがっ!それを見こうしてコイツは俺達じゃなく、アイツら二人を喚んだだろうがっ!」
「そう‥‥‥‥それも真実」
「おいおい、こんな戦闘中に話すことかい?全く」
「‥‥‥‥‥‥‥いや、まずは俺の話を聞いてくれ。八部衆達‥‥‥」
やっぱりこうなった。俺はこうなる事が嫌だったんだ。昔の俺の全盛期の力を知る奴等、契約関係も無い神級の召喚。
かなりのリスクを伴うが、灰神楽は喚べと言った。『七原龍』の一神がそう判断した。
これからの闘いに〖八部衆〗の力が必要不可欠だと判断したのだ。
そんな彼等は今の俺の姿を見て、今後の方針を決めかねていた。