豊穣と海底の境
〖ダイヤガラ地下鉱脈〗
「痛え‥‥‥‥たくっ!‥‥‥何千メートルいや、下手したら一万メートル以上落ちたよな?あのオッサン‥‥いきなり白の床を消しやがって‥‥‥大丈夫か?可憐ちゃん」
「うぅぅ、こ、怖かったです‥‥‥ずっと落ちてましたよ。というか空気とか重力の問題はどうなってるんですか?普通はこんな地下深くまで落ちたら酸素不足でたちまち身体が可笑しくなる筈じゃあ?」
「いや、それは大丈夫だよ。可憐ちゃん、俺と魔力パスを繋いでる〖契約者〗は俺の魔力補助の恩恵で外界から受ける悪影響を遮断されるからな。それと魔力増強、血行促進、精力増進の効果もんだ。凄いだろう!」
「‥‥‥‥最後のはいらない効果だと思いますが、それが神成君が次元の狭間を越えた時のギフト〖魔力総量〗の力の一端ですか?」
「そうそう、未だに無限に増え続ける魔力を無駄にしない為の〖魔力付与〗だな‥‥‥タマキ曰く、魔法の袋(黄金の宝物庫)の中で魔力瓶に引っ切り無し入れて貯してるんだけど間に合ってないとか言ってたな。まぁ、最近は余った魔力は〖契約者〗や魔道具に流し込んで消費してるんだけどな‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥良く分かりませんが分かりました。そして、此処は何処なんですか?あれだけ落ちたって事は地獄か何処ですか?」
「ハハハ!此処はアダマス国の底の底‥‥‥‥‥ティアマト地方の深海へと潜る為に神話の時代からずっと掘られ続けられてきた場所、〖ダイヤガラ地下鉱脈〗だ。神成の彼女よ」
「は?可憐ちゃんが俺の彼女?何、言ってんだっ!オッサン!また容赦なき張り手が俺を襲う事に‥‥‥‥って襲ってこない?」
俺はそう言うと恐る恐る可憐ちゃんの方を見た。
「‥‥‥‥神成君。彼処‥‥‥人が居ます‥‥‥‥しかも沢山の人が鎖に繋がれて働いて‥‥‥いる?」
可憐ちゃんが指指す方を見る。首には首輪、手には手錠と重り、足には鉄球付き足枷。そして、人族、魔族、獣族、エルフ族と種族も多種多様に入る。
「本当だ。何でこんな地下深い居場所にあんな大勢」
「‥‥‥‥あれは魔法大陸で大罪を犯した者達の成の果てだ。『獣族国家ゼルム』にある大監獄の大穴かアダマス国の〖プルームアゲート〗から落ち人生を終える。ソロモン山脈の七聖教会や魔術院の魔法裁判で終身刑を言い渡された者が落ちる場所、それが此処、ダイヤガラ地下鉱脈だ。アイツらは命が続く限りこの地の底で働き続け。死んだ時はティアマト地方の深海の海に棄てられる」
「骨まで残んないのかよ‥‥‥‥そして、此処は罪人の墓場みたいなものなのか‥‥怖っ!」
因みにそれ以上の罪となると、〖死の大地〗の奈落の谷行きが一番重い罪だな。因みに貴様が我が国や他国で起こした窃盗に数々が表立って、ちゃんとした証拠が見つかり、法で裁かれれば間違いなく〖死の大地〗行き決定だがな」
‥‥‥‥このオッサン。何、マジな顔してとんでもないこと言ってやがんだ?俺はただ、善意で各地の危なそうな魔道具や金銀財宝を回収してるだけなのにな。
それにこれまでの回収で下手をこいて素性がバレるなんて事は一度もなかったんだ‥‥‥‥偽造魔法と転移魔法の悪質コンボは最高なのだ。だがここは牽制がてら何か、アダマスのオッサンに何か言っとくか。
「‥‥‥‥おいおい、俺がそんな事、するわけ無いだろ。何、怖い顔したんだ?」
「黙れっ!クソガキ。つい一週間前も何者かによって〖ダイヤスミス〗城の国庫に侵入者が入り、貴重な魔法鉱石や魔道具が盗まれた‥‥‥犯人は十中八九、貴様だな?神成‥‥‥さっさと、この場に差し出せ。そうすれば、この場で一生働くだけで許してやる」
「馬鹿めっ!俺がやった何て証拠など何処にも無いんだろう?何を憶測でキレてんだ?オッサン。大人気ないぞ!」
「‥‥‥‥では何故、アダマス国の国庫の奥に厳重に封印していた国宝たる〖光の耳飾り〗と〖氷の首飾り〗をあの幼子達が持っているんだ?」
「ウィー!!広い洞窟!!大冒険の予感!!」
「カハハハ!!もっと下には〖冥界〗があるんだぞ。ルアよっ!カハハハ!!」
「‥‥‥‥さて、次の目的地である〖ティアマト〗地方までもう少しだ。油断せずに行こう」
「小僧。貴様‥‥‥‥ハァー、まぁ良い。三列大戦では世話になった‥‥‥それに俺のできる範囲で何でもすると決めている。報酬として渡しても良いか‥‥‥付いてこいお前達‥‥‥‥フレイヤ地方とティアマト地方の境。〖フレティア水門〗へと向かうぞ」
フレティア水門?‥‥‥フレイヤのフレとティアマトのティアを取ってフレティアって事か?
何だ?その単純なネーミングは。
俺がそんな事を考えて歩き始めると、遠くで働いていた俺達の存在に気付き、一斉に見てきた。
「お、おいっ!何でアイツら、こんな地の底であんなに小綺麗な格好をしているんだ?」
「ゆ、許せねぇ‥‥‥俺達がこんなに不幸な目に合っているのによう」
「‥‥‥小さいガキとなかなか可愛い女達が入るじゃねえか‥‥‥剥くか!(ジュルリ)」
「あ、あれは‥‥‥アダマスの夜郎?‥‥‥殺してやる‥‥殺してやる!!」
「き、貴様らっ!何処に行くっ?!も、戻れ、馬鹿者共!!!命令に従えっ!!!」
「オッサン。アイツら、俺達の存在に気付いたぞ‥‥‥そして、ぞろぞろとこっち走って来てないか?こんな地の底の洞窟であんな人数に囲まれたら不味いんじゃないか?」
「‥‥‥‥いや、問題ない‥‥‥‥このダイヤガラ地下鉱脈は、罪人達が悪意を示した時、最後の刑を執行する」
「最後の刑?」
「地上での身体を奪われ〖冥界〗へと墜ち、最古の試練を越えられなければ、魔法世界の魔力循環炉たる〖アグナの回廊〗へと消えていく事になる」
「があぁ?!!俺の身体が土の中に埋まっていく?」
「き、記憶が曖昧になる?何だこれ?全てを忘れちまう?」
「た、助けろ!!僕は高貴な生まれのアダマスの王になる‥‥‥‥」
ズズズズズズ‥‥‥‥‥。
俺達の方へと向かって来た罪人達は、叫び声をあげながらゆっくり、ゆっくりと地面へと墜ち、姿が見えなくなっていく。
「〖アグナの回廊〗って‥‥‥‥〖天上の理〗の方々が住む場所だよな?‥‥‥‥そんな場所に消えていくって‥‥‥‥」
「だから、命尽きるまで働かせるんだ。肉体や精神さえ消させない為にな。〖アグナの回廊〗に消えた者は次の輪廻から外れる‥‥‥‥つまりは」
「別の何かに転生できないって事か‥‥‥」
「そうだ。だからあの方は此処と〖死の大地〗を罪人達の最後の場として選んだんだ。少しでも、次の人生が変われる様にな‥‥‥先を急ごう。済まないな。神成の彼女よと幼子達よ。嫌なものを見させてしまった」
「い、いえ、だ、大丈夫です。アダマスさん」
「ウィー、昔なら当たり前の光景」
「カハハハ!!なんなら、もっと酷い事が〖氷雪大陸〗では行われているから、大丈夫だ。カハハハ!」
「そうか‥‥‥余り気にして無いならば良かった」
‥‥‥‥いや、俺、結構今の光景衝撃的だったんだけど。結構心に来たんだけど。今回の旅のパーティーメンバー皆、メンタル強すぎやしないか?‥‥‥ヒスイとかセシリアだったらもっとこう沈むんだけどな。
そんなアクシデントがありながらも、俺達はアダマス王に先導されながら、フレイヤ地方とティアマト地方の境とされる〖フレティア水門〗へとたどり着いた。
〖フレティア水門〗
「ヒュウウウ!!!」
「シュシャアアアーー!!」
「デケェ!水魔竜か?‥‥‥凄いな。図鑑でしか見たこと無いぞ。もしかしてコイツらに乗って深海を泳ぐのか?オッサン」
「いや、違うな。厳密には〖魔水球〗の中に俺達が入り、それをコイツらに持たせて深海を移動する。水魔竜のツガイの特性を生かすした移動方法だな。コイツらは〖魔水球〗を自分達の子と誤認して住みかである〖アトラス〗まで安全に行ってくれるんだ」
「ほーう、それは凄いな。魔獣の特性を生かした移動方法何て良く考えられてるんだな」
「ティアマト地方には地上に無い色々な知識や技術がある。それもこれも‥‥‥‥自らを神と名乗る変わった奴の‥‥‥‥」
アダマス王が何かを言い終える前に水門の方を見て、驚いた顔をしている。
「ん?どうしたんだ?オッサン」
「‥‥‥‥何だあれは?何故、あんな化物達がこんな境目に現れる‥‥‥」
「現れる?何がだよ。オッサン‥‥‥」
俺もアダマス王が見ている方向を見つめる。するとそこには人の形とは明らかに違う何かが立っていた‥‥‥‥いや、一人だけ、か弱そうな女の子が俺を睨み付けながら近付いて来る。
「ギギギ‥‥‥〖世界〗様。やっと見つけられたね?」
「案外、小さきガキですね。」
「‥‥‥‥うん。姿は上手く変えてても、心の世界は偽れない。殺して良いよ。二人共」
「ギギギ‥‥‥‥うん。頂くよ。〖世界〗様」
〖11の怪物〗・ウリディンム、
「我等に何なりとお申し付け下さいませ‥‥‥‥」
〖11の怪物〗・クルール
突然、俺達目の前に異形の怪物達が現れたのだった。