ルート
〖フノス城〗バルコニー
「ヒックッ!‥‥‥小僧は‥‥‥」
「神成で良いぞ、おっさん。俺もあんたの事は今後はアダマスのおっさんって呼ぶからさ」
「アダマスのおっさんだと?‥‥‥ヒック!まぁ、良いだろう‥‥神成はティアマト地方についてどれくらい知っているんだ?というか行った事はあるのか?」
「あぁ、アテナ地方のルートから行った事があるよ。あの時は海道が整備され始めたから楽に行けたからな‥‥‥‥まぁ、今回の〖レヴィアタン峡谷〗の戦争で当分は封鎖されるだろうけどな」
「そうか、ならば神成は海上‥‥‥つまり〖楽園〗には行った事があるのか。成る程な‥‥‥(ゴクゴク)」
アダマスはそう言うと手に持っていた酒瓶を豪快に飲み始めた。
「〖楽園〗には?‥‥‥‥ちょっと待ってくれよ、おっさん。その言い方だとまるでティアマト地方には他にも違う場所が有る様な言い方だな?俺が知っているティアマト地方は確か海上と海底しかない筈だよな?」
「ゴクッ‥‥‥‥あぁ、魔法大陸の他地方に住む者達の一般的な認識はそれで合っている。海上に並び立つ島々、海洋国家が支配する海域が〖楽園〗‥‥‥‥そして、その更に下の場所を青深海と言う」
「青深海?ティアマト地方の海底にそんな場所があるのか?そんな話、聞いた事無いぞ」
「ユグドラシル地方の〖セルビア〗と似たようなものだな。あの国の下に〖妖精国〗と言う国が有る様に、ティアマト地方にも在るんだよ。深海の世界‥‥‥青深海がな」
「そんな話を何で今、言うんだよ?俺はティアマト地方に行って〖エヌマ〗に行ければ良いんだ。それなら転移魔法でユグドラシル地方に行って〖ミーミルの滝〗から落下すれば良いだろう」
因みに他地方からティアマト地方へ行くには、それぞれの地方でかなり異なる。
ティアマト地方の北と接するユグドラシル地方は『獣族国家ゼルム』の南端にあるミーミルの滝から落下し、アトラン海洋に入れる。
アテナ地方は今では運河となってしまった〖レヴィアタン峡谷〗から海底洞窟を海獣に乗って海洋国家〖オケアノス〗に入国できる。
ヘファイストス地方からは〖ヘル・デア〗のアクレール運河航海して、ティアマト地方の島々の国へと渡れる。
そして、フレイヤ地方からはアダマス国を経由しないと入れないらしいと聞いたが本当何だろうか?
「ヒックッ!‥‥‥‥いや、そのルートは今の時期は止めておいた方が良い。特に今の様な‥‥‥‥魔法大陸の変革期では尚更な」
アダマス王はそう告げるとユグドラシル地方がある方角を見つめた。
「何でだよ?『獣族国家ゼルム』はどんな種族でも自由に入国できる自由な国だろう?しかも、他地方と違って〖落下〗するだけでティアマト地方に入れるんなら一番簡単な方法だろう」
「それは五日前までの話だ。今回のガリア帝国とフレイヤ連合軍との戦いで俺達側がガリア帝国に勝利した事により、ガリア帝国と国境を境にしている国々もそれに続けと動きだしたんだ」
「それは知っているよ。今日の魔法新聞にも記事として載っていたしな。ユグドラシル地方の獣族なんかはガリア帝国との戦争の為に、傭兵を募集してるんだろう?」
「あぁ、その為、ユグドラシル地方の南端は魔力濃度が乱れ、霊獣や魔獣達が暴れていると聞く。そんな場所で特殊な魔法を使えば、何が起こるか分からないと臣下から報告があった」
「つまり、ユグドラシル地方からティアマト地方に入るのは諦めろって事か?おっさん」
「それとアテナ地方もだな。‥‥‥‥ヘファイストス地方へ行くのも時間がかかるとなると、俺を連れだってフレイヤ地方‥‥‥アダマス城の下、〖ダイヤガラ地下鉱脈〗を経由して潜る(・・)しかなくなったな。神成 (ニヤリッ!)」
酔っ払いながら、決め顔してんじゃねえよ。おっさん‥‥‥くそ、このおっさんにはなるべく借りなんて作りたくないんだがな。
知略のアダマス王とか言われるこのおっさん。表面的には国々の戦争なんて興味が無い振りをしておいて、いざ隣国が戦争を始めれば自国の金儲けの為に自国で製造した武器何かを高値で売る腹黒さを持っている曲者なんだよな。
「ゴクッ!‥‥‥俺はなぁ、小僧。お前には感謝しているんだ。戦争前に言った事を覚えているか?」
「ん?あぁ、確か。(お前のこのフレイヤ地方での願いを俺ができる範囲なら全て叶えてやると確約する)とか言ってたよな‥‥‥」
俺がそう言うとアダマス王は突然、俺の右肩を掴み、真剣な目で見つめてきた。
「貴殿はこのフレイヤ地方の長きに渡るガリア帝国による、フレイヤの民の屈辱的な日々を終らせたんだ。俺はそれに深く感謝している。いや、俺だけではない、新たな〖五大列国〗の王達もそうだろう‥‥‥‥そんな大恩人が目の前で苦労する様をどうして見過ごせるだろうか?出きる筈が無い‥‥‥だから、俺にも手伝わせろ。〖魔王捜索〗とやらをな。そうすれば旅の途中、俺はお前を全力でサポートすると約束する。全ての俺の力と権力を使ってな」
「おっさん‥‥‥それがあんたの本心なのか?」
「‥‥‥‥まぁ、そのついでに俺の最愛の息子の捜索を手伝わせるがな。一国の王が同行するんだ。そのくらい頼まれろ。神成‥‥‥‥〖五大列国〗全てがお前の味方だ。だから、俺に‥‥‥‥俺達に手伝わせてくれ。お前の願いを」
アダマス王は俺に右手を差し出し、俺も自然と右手を差出す。そして、握手を交わした。
「アダマスのおっさん‥‥‥‥俺はあんたの事、誤解してたのかもな‥‥‥」
「フッ‥‥‥良く腹黒とは言われるわ‥‥‥‥これで俺の同行も決まったな。旅立ちは二日後としよう。その間にお前達の方の準備も終わらせておけよ‥‥‥‥暫く地上へは帰って来れないからな」
「帰って来れない?何でだよ?おっさん」
「フレイヤ地方から行くルートで最初に入る場所‥‥‥‥青深海‥‥‥深海の国〖アトランス〗だからだ‥‥‥‥」
次の舞台は深海の国。