フノス祝勝会
ガリア帝国軍とレッドローズ国軍が日常的に行っていた〖レッドガーデン〗での戦争に変革が訪れた。
床に臥せていたアダマス王の復活と同時の〖エメラルド高原〗への進行。
突如として現れた〖陸〗〖海〗〖空〗の巨獣達がガリア帝国を蹂躙。
その二つの出来事により、ガリア帝国の兵士達は数十万規模の兵士を失った。
その結果〖赤霧の隠し谷〗に生息していた赤竜達のガリアノ呪いが突然として溶け。
炎竜人へと元に戻り、〖イグニッション〗国が敗戦しフレイヤ地方での地位を失ったガリア帝国に変わり、新たな〖五大列国〗の地位に就いた。
〖ブルーレヴィア〗の地では両軍にらみ合いが続く戦争状態になってから早くも五日という日が経ち。
現在、〖フノス国〗の火沃首都・〖フノスエル〗では、今回の三列大戦によりフレイヤ連合軍がガリア帝国側より奪還した土地〖赤霧の隠し谷〗〖火神の森〗〖エメラルド高原〗〖レッドガーデン〗〖ブルーレヴィア〗(南部一帯)の地を無事に平定した事を祝う祝勝会が開かれていた。
〖フノス城〗・炎来の広間
「イグニッション王国の〖五大列国〗復活を承認する」
「「「「―女神―フレイヤ様の導きのままに!!!!」」」」
フレイヤ様の女神像が紅い〖神秘〗と〖魔力〗を帯びていた。
その前にイグニッション王家が加わった五大列国の王達がレッドローズ、アダマス、イグニッション、フノス、アリババの王達の順番で祈りを捧げている。
「‥‥‥‥これが本来のフレイヤ〖五大列国〗なんだな」
「そう。それを無理やり変えたのがガリア帝国だったのよ。貴方様‥‥‥‥そのせいで、イグニッション王は‥‥‥‥イグニッションの民は―女神―アテナ様の〖女神の祝福〗によって、赤竜に変えられていたのよ」
アリババ国の独特なドレスを着たモルジア王女が俺に語りかけてきた。
「神代記録記に書いてあった〖ガリアノ呪い〗‥‥‥‥人によっては〖女神の呪い〗とも捉えられる〖加護〗か‥‥‥‥―女神―アテナによるイグニッションに対しての慈悲。長く生き、いずれはガリア帝国への復讐の達成を‥‥‥‥ってところか?あのアホ女神。たまに有能な事をするんだな」
「カハハハ!それのおかげで時を越えた復讐と王国復興を成せたのだ。あのアホアテナは〖知恵〗を司る神でもある。普段はアホでも、時代の先々をちゃんと視ているんだぞ。セツ。 (モグモグ)」
「‥‥‥‥口をリスみたいに膨らませて喋るな。アナ」
祝勝会で招かれた来賓に振る舞われるフレイヤ料理を、おもいっきり堪能しているアナスタシアが俺の隣にいつの間にか居た。
「ムング、ムング、ここの料理がどれも美味しいのが悪いんだぞ。ほれ、ルアもサーシャとか言う奴もあんなにフレイヤ料理を美味しそうに食べているぞ」
「‥‥‥‥美味しそう?」
「(ングング)‥‥‥‥ウニャアアア!!!美味ゃいぞおぉぉ!!!」
「‥‥‥‥‥(バクバクバクバク!!)どれも美味しい!!!」
「天王洲ホテルの5つ星ホテルよりも美味しいだなんて‥‥‥‥信じられません。(パクパク)」
「‥‥‥‥‥高貴な筈の現役のロマの法王と魔法貴族なのに品の欠片もないな。そして、可憐ちゃんも結構な量を食うんだな」
「フレイヤ地方の料理は魔法世界でも最高峰の料理だもの。無理もないわ‥‥‥‥ねぁ、貴方様」
「ん?何だ?モルジア王女。つうかその貴方様って言い方いい加減‥‥‥‥」
「私、自分の国に帰るわ」
「帰る?アリババ国にか?」
「えぇ、今回のフレイヤ地方で起きた色々な国を巻き込んだ色々な事件‥‥‥‥これで終わりとはとても思えないと私は考えたの」
「‥‥‥‥大アルカナ〖太陽〗の進行だけでは終わらないって事か?‥‥‥‥まぁ、確かに君の国には〖異界〗に通じる扉が存在するもんな」
「そう。フレイヤ地方に対する〖ラグナログ(神々の黄昏)〗の侵略は終わっていない。むしろ、この後が本番だと私は考えているの」
「〖イシスの世界〗か‥‥‥‥なら、君にこれを渡しておこう。昔、ヘファイストス地方の度の途中で手に入れた。〖ラーの手鏡〗だ。それを持っていればいざって時に役にたつだろう」
俺はそう告げると黄色の派手な装飾が付いた手鏡をモルジア王女に渡した。
「〖ラーの手鏡〗?‥‥‥これって西の砂漠にあるって言う宝じゃないの?何で貴方様がもってるのよ?」
「それは秘密だ。それと契約の輪と魔法紋章は魔力供給だけ君に流れるよ様にしておく、これで以前より魔力量と身体能力は上がる筈だ‥‥‥‥困った事や、何かあれば、契約の輪を媒介して俺に知らせてくれ。君に何かあった時、必ず駆け付けるよ」
「‥‥‥‥駆け付ける‥‥‥‥フフフ、私に婚約者がいなければ惚れていたところよ。セツナ様‥‥‥‥そう駆け付けてくれるの‥‥‥ありがとう。貴方との短い間のフレイヤ地方の旅、凄い楽しかったわ‥‥‥‥アリババを‥‥‥‥いえ、フレイヤ地方を助けてくれてありがとう。〖救国の担い手〗のセツナ様」
モルジア王女はそう言うと右手を俺に差し出してきた。
俺はそれに反応して、自身の右手でモルジア王女の右手を掴む。
「あぁ、此方こそ短い間だったが、一緒に旅ができて楽しかったよ。ありがとう。モルジア」
俺とモルジアはこうして別れの挨拶を交わしたのだっ。
‥‥‥‥モルジアの危惧した事は半分外れで、半分当たりだ。
(〖イシス〗の人達はね此方の世界に興味が無いんだよ。我が弟子)
魔術院に居た頃にマーリン師匠はそんな事を言っていた。
此方から何もしなければ、〖異界〗の彼方は干渉しない。
‥‥‥‥だが、もし自身達が何かの危機を察知した時、彼等彼女等は牙を向けて来るだろう。
そう例えば〖ラグナログ(神々の黄昏)〗のNo.が半分かそれ以下になった時だろうか?
スヴァローグは言っていた。俺には〖恋人〗〖死神〗〖悪魔〗〖節制〗〖隠者〗〖星〗〖教皇〗の七つの大アルカナが何かしらの姿や形としてあると。
それに加えて今回、倒したフレイ・セイズ・イグニッションの〖太陽〗が加わり、八つの大アルカナになった。
そして、西から来るという〖征服者〗〖審判〗を持つ誰か‥‥‥‥。
〖フノス城・バルコニー〗
「スヴァローグの言葉を信じるなら、これで倒された〖ラグナログ(神々の黄昏)〗は10か‥‥‥‥まだ半分はいっていない。この状況なら〖イシス〗はまだ動かない‥‥‥‥扉の鍵も復活させた、時間はまだある。エスフィール捜索や〖和国〗の事もある‥‥‥‥今は次の目的である〖ノアの方舟〗の製造の為に〖ティアマト〗地方の〖エヌマ〗へ行かないとな‥‥‥‥」
「だが、どの地方から行く気だ?フレイヤ地方からの行くのなら、アダマスの鉱脈道から、潜られねばなるまい?担い手よっ!」
「ん?あぁ、アテナ地方の〖ブルーレヴィア〗からの谷越えもできなくなったからな。一度、ユグドラシル地方に向かって『獣族国家ゼルム』と酒とカジノ国・〖ノルムア〗に行って色々と準備をして‥‥‥‥って!この声はまさか?」
「ハハハ!!ならんっ!小僧はこのまま、俺を新たな仲間に加え、ティアマト地方の〖海底〗へと潜るのだっ!ハハハ!!決まったなっ!ハハハ!!良い日である。待ってろよ!俺の最愛の息子よぉおお!!ハハハ!!」
「‥‥‥‥アダマス社長‥‥‥‥じゃなくて、おっさん?何であんたがここに居るんだ?どっか行け酔っ払いっ!酒臭いぞ!!」
「ウィ~!!そうか。共に行くか。よろしく頼む」
「行かねえよっ!酔っ払い。目を覚ませよっ!おっさん」
「‥‥‥‥よしっ!では、今から少しティアマト地方の行き方について話し合うか‥‥‥ヒックッ!‥‥‥‥‥それと今のティアマト地方の現状も教えてやる。息子よ」
「誰が息子だっ!おっさんっ!」
「まぁ、先ずは聞け‥‥‥‥カルセドニー、アンバー、クリソベリルの家臣達にフレイヤ地方の情報と共に他地方の最新の情報も集めさせた。それをお前にも教えてやる。ヒックッ!‥‥‥‥心して聞けよ。息子」
「‥‥‥‥誰が息子だよ」
アダマス王はそう言うと、次の目的地であるティアマト地方の情報や他地方の現状を勝手に語り始めた。




