選び
『ブルーレヴィア』北部
ガリア帝国副首都〖ブルーグラス・都市内部〗
ズザアアアンン!!!
レヴィアタン渓谷が突然の浸水により戦争が中断されているなか、〖ブルーグラス〗副首都内で二人の強者が戦闘を開始し、もうじき一日が経とうとしていた。
魔女見習いサーシャとガリア帝国・軍団長ランスロットの攻防戦。
片や、強力な魔法を容赦なく相手にぶつけ、もう片方はその魔法を辛うじで避けるという奇妙な闘いだった。
スドオオオンン!!!
「止めてくれ。サーシャ!!その建物は本国との連絡棟だぞ?!それだけではない、有力な将校達が何人も‥‥‥‥‥」
「‥‥‥!‥‥‥‥そう、分かった。もう止める‥‥‥‥戻って来てっ!マシャール」
「ニャルル!!!」
「‥‥‥影の中に猫?」
「‥‥‥‥じゃあね。ランスロット‥‥‥久しぶりにじゃれ合えて楽しかった。付き合ってくれてありがとう‥‥‥‥これで犠牲者を最小限抑えられたから‥‥‥戦闘は良く無いけど、〖生け贄〗を回避できて良かった。バイバイ!!」フリフリ‥‥‥。
サーシャはそう告げると口角をニマリとあげ手を振る仕草をする。
「〖生け贄〗?君はいったい何を言っているんだ?」
「‥‥‥‥後で分かる。それじゃあ〖現実と虚実〗の時にまた会えたら会おうね。サヨウナラ」
‥‥‥‥ごそごそ‥‥‥‥パカッ!
サーシャは自身のフードのポケットから小箱を取り出し開けた。すると‥‥‥‥
キイィン‥‥‥‥‥シュンッ!!!
「なっ?サーシャが光の柱の中に‥‥‥‥って?サーシャが消えた?‥‥‥‥‥」
後に〖黒猫悪夢〗と呼ばれる様になる〖ブルーグラス〗の悪夢は突然、終わったのだった。
〖レヴィアタン峡谷〗上空
「馬鹿か?お前?!〖極神〗が、レヴィアタンが造り出した水流だぞっ!そんな傷ついた身体で入ったら最後、激しい流水でどっかに流されるだけだろうがっ!」
「セツナ!!!貴様!!!何故、止めたっ?!!!洗脳されていたとはいえ、我の大切な妹を何故、救わせなかったっ!!!」
ドガンッ!!
「ぐぅ?!‥‥‥‥お前‥‥‥‥おもいっきり右手でぶん殴りやがって‥‥‥痛えだろうがぁ?!!!オラッ!!」
ボゴッ!
「ギャオオオ?!!ぐうぅぁ!!」
「フレイ・セイズの気配が消えた時点で洗脳も解けてんだろう?‥‥‥‥お前の本当の妹なら四大学校の何処かに居るんだろう?‥‥‥‥‥‥‥‥済まん。考え無し言い過ぎた。そういう事じゃないよな‥‥‥‥スヴァローグの気持ちの問題だったな‥‥‥‥‥」
「分かっている‥‥‥貴様の飼い猫共が我にオッタルから報告書を読ませに来ていたからな‥‥‥‥分かっている。分かっているが‥‥‥‥そういう問題ではないのだ‥‥‥‥‥」
スヴァローグはそう告げると、フレイヤ地方の南の方へと飛び立とうとし始めた。
「お、おいッ!何処に行く気だ?スヴァローグッ!」
「〖オッタル〗へ行き、償いの日々を送る‥‥‥‥「火炎と落雷」の奴等と共にな‥‥‥フレイに‥‥‥‥妹に洗脳されていたとはいえ、我は沢山の罪を犯した‥‥‥‥貴様とは契約パスで繋がった故、何時でも我を喚べるだろう」
「‥‥‥‥‥そうか」
「あぁ‥‥‥‥それからこれを渡しておく‥‥‥我にはもういらない物だからな‥‥‥‥受け取れ」
スヴァローグは俺へと紅い子箱を俺と投げてきた。
「何だ?‥‥‥‥紅い箱?」
「大アルカナの欠片だ‥‥‥‥我は一割しか所有していなかった為に、本体であるフレイが消えた事で我から分離したのだろう‥‥‥‥セツナは似た様な物を持っていないか?貴様は〖死神〗殿や〖星〗殿を下しているのだろう?」
「は?似た様な物?‥‥‥〖死神の玉〗と星形の魔法石〗‥‥‥‥」
「〖代理人〗は大アルカナは不滅と言っていた‥‥‥‥貴様は‥‥‥形、姿が違えど〖恋人〗〖死神〗〖悪魔〗〖抑制〗〖隠者〗〖星〗〖教皇〗の七つ‥‥‥‥そして、新たに〖太陽〗か‥‥‥‥ティアマト地方に行くなら気をつけた方が良い‥‥‥‥〖征服者〗〖審判〗を持つ者が来るだろう。これは〖イグニッション〗の独り言‥‥‥‥これくらいは言っても大丈夫な様だな」
「‥‥‥‥お前‥‥‥誰だ?スヴァローグの中で何を告げてやがる?」
「‥‥‥‥〖始祖の龍〗とだけ伝えてやる‥‥‥‥今後とも我が遠き我が子達を守ってやってほしい‥‥‥‥去らば‥‥‥‥‥‥ムッ?我は何を言って?‥‥‥‥‥まぁ、良い、セツナよ。〖太陽の涙〗は確かに渡した。ではな、また落ち着いたら会いに来てくれ、我は〖フノス〗か〖オッタル〗にいるのでな‥‥‥‥久しぶりに闘え、会えて嬉しかったぞ‥‥‥‥セツナ」
スヴァローグはそう言うと炎竜の姿に変わり、〖オッタル〗に向けて旅立って行った。
「夜叉巫女と同じ。スヴァローグも〖始祖の龍〗の子孫だったのか、〖創造神〗〖妖精神〗方と同じ〖原初の‥‥‥‥‥」
「ギャハハハハハハ!!!!赤竜野郎との話は纏まったか?」
「‥‥‥‥‥スルト」
「そんなら俺様は西の火神の森に帰らせてもらうぜぇ!‥‥‥‥しばらくこの地に残るぜぇ!!‥‥‥‥‥人族が暴れない様になぁ!!ギャハハハハハハ!!!」
「ガリア帝国を監視してくれるのか?‥‥‥‥‥あの狂暴なお前が?」
「ギャハハハハハハ!!!!信用ねえな!!おいッ!正しく〖五色火〗で喚んでくれたおかげだぜぇ!!‥‥‥‥じゃあなぁ!!何かあれば火の枝で使って喚べよな!!ギャハハハハハハ!!!!ギャハハハハハハ!!!!」シュンッ!
スルトは高笑いしながら、燃え尽きる様に姿を消した。
「‥‥‥‥アイツら、俺がこのフレイヤ地方から去った後、この地を護るつもりなのか?」
「それが神と神の血筋故、だろうな‥‥‥‥私も含め一度は敵対した者まで使うか‥‥‥面白い」
「そんで?お前もどっかに行くのか?レヴィア」
「‥‥‥‥無理だな。召喚時に喰ろうた魔力残滓が膨大過ぎる‥‥‥‥数十年は共に過ごし、護ってやろう」
「いや、嫌だよ。何で巨体鯨と数十年過ごすんだよ」
「馬鹿者。この身体は下界に出た時に使う身体だ。本来の私は天使の様な容姿だぞ。まぁ良いか‥‥‥‥では久しぶりに満喫させてもらおうか、その中の幻想をな。クフフフ!」シュンッ!
「は?お前?何、勝手に決めてんだ?」
レヴィアタンは〖黄金の宝物庫〗の中へとその巨大過ぎる身体で強制的に入って来た。
(では、楽しませてもらう)
「‥‥‥‥神々は本当にわがままだな‥‥‥‥フレイヤでのエスフィール捜索は終わりだ‥‥‥‥次は〖ノアの方舟〗を造りにティアマト地方へ向かう旅か‥‥‥‥〖転位〗・フノスへ」シュンッ!
俺はフノス国へと飛んだ。