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翠玉の高原は輝き光 No.6 赤竜は叫び、知将は泣き、緑の大地は我が国に


「‥‥‥‥終わらせる。〖琥珀の刺槍〗」


「グギッ!があああぁぁ!!!」スパンッ!


アダマス王は私の左腕を無表情で切り落とす。


「ガリア兵士の両腕は素早く対象せよ。それが我がアダマス国の教えだ‥‥‥‥何も奪わさない為のな」


「あぁぁぁ!!!私の両腕があああぁぁ!!!!!」


「容赦も、情けも、甘さも見せんぞ。お前達‥‥‥‥ガリア帝国が我々の祖先にやった事なのだからな‥‥‥‥」


「ぐ、ぐうぅぅ!!その時、わ、私は産まれてもいないだろ!!!何故、私がこんな仕打ちを受けなければならないんだっ!!」


そうだ。私はこうやって何時も最後に失敗する‥‥‥‥〖勇者〗殿の‥‥‥‥カミナリ殿の従者選びの時もそうだ。ランスロットとの軍団長の座を争った時もそう‥‥‥‥私は最後の最後で何時も敗北者に成り果ててしまう。そして、心が歪んで行く。


あぁ、貴方が私の近くにいてくれれば、私はこんなにも醜くく、擦れた心を持たずに済んだのかも知れないですね。カミナリ殿‥‥‥‥‥。



▽▽▽▽▽


三年前・アテナ地方〖ガリア軍事学校〗


(聞いたかい?アルスト。現代(こんだい)の〖勇者〗がフレイヤ地方で暴れていた火の化身を倒したらしいよ‥‥‥)


(キャロルか‥‥‥‥あぁ、知っているよ。何でも凄い早さで移動し、クエストや帝国のあらゆる勅命を半日か一日足らずで解決するって奴だろう?‥‥‥‥しかし、そんな奴。本当にいるのか?)


(ハハハ!まさに鬼神や人族最強と言われる〖ジャンヌ〗みたいな人だよね)


(全くだ‥‥‥‥)


そんな会話をする私達二人の前に黒いフードを被った少年と七聖教会のシスター服を着た少女が歩いて来た。


(少し離れてくれ。エリス‥‥‥ここは一目に付く。それに君は〖洗礼者〗に選ばれた存在になったんだろう?もう少し聖女としての自覚を‥‥‥‥)


(もう!勇者様!最近、規律、規律と言って私から距離を取ろうとしていませんか?)


(‥‥‥‥していない。俺は常に平等だよ)


(それ、嘘ですよね?最近、私に冷たくなっていますよね?初めて会った時はあんなに優しくしてくれたのにっ!)


(覚えてないな‥‥‥)


(何ですかそれ?もうっ!)


何だ?あの美男美女は?それにイチャイチャと‥‥‥


(うわぁ、凄い美男美女カップルだね。どっちも高貴な産まれポイけど。何処から来たんだろね。)


(‥‥‥‥高貴な産まれなら、私達も同じだろう?力と財力がなければ入ることも出来ないガリア軍事学校にも入っているんだ。その時点で私達も他とは違うだろう)


(‥‥‥‥そうかな?僕はそうは思わないけどね)


(何?)


(ん?あんた‥‥‥‥その槍‥‥‥だいぶ消耗しているんだな)


私とキャロルの会話に割って入ってきたのは誰でもない、先程まで話題にしていた美男だった。


黒いフードを深く被り。指、腕、首には数え切れない程の魔道具と思われる物を付け。長身で顔もキリッとしている。


(何だ?お前?私に何の様だ?)


(おっと!済まない。自己紹介もせず、いきなり話しかけてしまって‥‥‥俺はカミナリと言うゆ‥‥‥‥しがない魔道具師だ。よろしく)


(カミナリ?‥‥‥‥魔道具師だと?)


カミナリ‥‥‥何処かで聞いた事がある名だな。確か数年前〖魔術院〗に入ったとか言う、魔道具師だったな。


(名を名乗られたのならば私もしなくてはな。私はアルケル・サイロー、時期ガリア帝国軍の軍団長になるものだ‥‥‥‥それで?その魔道具師のカミナリが私に何の様だ?言っておくが私は忙しい。様があるなら早く言え)


(‥‥‥‥そうか、あんたがサイローさんの息子さんのアルケルさんか‥‥‥アルケルさんのお父さんに頼まれ事をされていたんだ)


(私の父に頼まれていた?何だ?それは?)


(あんた‥‥‥いや、アルケルさん専用の魔武器を作ってくれってな‥‥‥ほいっ!これが現物な。それじゃあ、確かに渡したから。俺達は行くよ。じゃあ!行こう!エリス‥‥‥)


(あっ!待って下さい!!勇者様!!)


(お、おい!待て!何だいきなり?話がいまいち呑み込めないぞ?)


(行っちゃったね‥‥‥しかし凄い厳重に保管されているね!見てみたら?アルケル)


(ん?あぁ、しかし、あんな怪しい男に父上は何を作らせたんだ?どうせ‥‥‥‥ろくな物ではな‥‥‥い?)


箱から開けたその槍は見ただけで一級品の武器だと分かった。特殊な素材、特殊な加工工程、特殊な魔法術式が施こされ、緻密に造られていることが直ぐに分かった。


(な?こ、この魔武器はいったい?)


(す、凄いね‥‥‥こんな武器、ガリア帝国の武器屋でも見たことが無いよ。まるでヘファイストス地方にある〖オアシス〗に売られているって言う〖魔高武器〗みたいだね)


(あぁ、凄い‥‥‥これさえあれば‥‥‥‥あのランスロットにさえ勝てるかもしれない‥‥‥‥追いかけよう!カミナリ‥‥殿に‥‥お礼と‥‥後は私の専属の魔道具師になって貰うように頼まないとっ!)


(あっ!ちょっと待ちなよ。僕の事もお願いしてくれよ。アルケル!)


(ハァ、ハァ、ハァ!確か、この角を曲がった所をゆっくり歩っていた筈。今ならまだ間に合‥‥‥‥う?‥‥‥何処にも居ない?何故だ?ここは行き止まりの筈‥‥‥)


(おーい!あの魔道具師さんは居たかーい?アルケル!)


その日以来、私は彼が造ってくれた魔武器を気に入り、愛用した。ガリア帝国産のなまくらとは比べ物になら無い代物に私は使う度に震えていたのだ。


私にはこれしかない、これ以外の武器は考えられない。彼が造った武器を使い続けるに連れてそう考える様になっていった。


まるでこれは中毒になる。そうだ!か、彼を探さなくてっ、メンテナンスや魔武器の改良‥‥‥それだけではない、彼に新たな私、専用の魔武器を造って貰わなくてはっ!


私はそんな考えに至り、彼に関する情報を集め、捜索をしていた‥‥‥‥‥。



二年前。ガリア帝国・首都


(では、〖勇者〗・カミナリの〖剣〗従者はガリア軍事学校・主席のランスロット・○○○○○とする。以後、魔王討伐の旅での活躍、期待している)


(はっ!命をとして励んでみせます。皇帝陛下!)


(うわぁ‥‥‥マジかよ。ロリスロットが従者かよ‥‥‥)


(ドンマイです。勇者様)


(‥‥‥‥ドンマイ)


(ニャー、パーティーに変態が増えるニャア~)



‥‥‥‥‥は?どういう事だ?何故、私では無い?意味が分からん。筆記や魔法技術は確かにランスロットが上だった。だが、剣技では数段、私の方が上の筈だ!


私はそう〖思案〗すると直ぐ様行動に出ていた。


(待って下さい!ガリア皇帝陛下!!確かに知略や魔法技術はランスロット殿が上です!ですが剣技では私の方が数段上の筈では?)


(あの人は‥‥‥サイローさんの‥‥息子さんか‥‥‥)


(貴様!!皇帝陛下の前であるぞ!恥を知れ!!)


(‥‥‥‥‥サイローの息子か‥‥‥ならば闘って力を示せ、ランスロットよ。専用の魔武器を使用して良い。この場で闘ってどちらが優れているか、ワシに見せよ)


(陛下?何を言っているのです?)


(良い‥‥‥直ぐに分かる‥‥‥そして、終わるだろう)


(ハッ!陛下のご命令とあらば、友であろうと容赦せず、真剣に試合に望みます)


(ククク‥‥‥言ったな。ランスロット!覚悟しろよ!お前と私の剣技の差を嫌と言う程、分からせてやる)


ガキイィンン!!


(勝負あり!勝者、ランスロット!!)


((((オオオォォ!!!!))))


(流石は妖精の血を引く特別な産まれ)


(流石ですな。まるで相手になっていない)


(‥‥‥‥何故、私の魔武器が負けた?)


(‥‥‥‥アルケル)


ランスロットが私を見下した様な目で見ている‥‥‥‥私をそんな目で見るな。妖精国の分家の分際で!!


(‥‥‥‥完全に壊れてるな。アルケルさん‥‥‥メンテナンスしてなかったんだな。ごめんな。あんたの武器、見てやれなくて‥‥‥‥)


(い、いや、武器はまぁ‥‥‥‥そうだが‥‥‥‥あ、貴方はカミナリ殿か?‥‥‥‥あの美男だった方が?‥‥‥何故そんなにやつれておられるんだ?)


二年前に会った男は変わり果てていた。いや、疲れ果てていたと言った方が合っているだろうか?


そんな状態で私の魔武器の心配をしている?‥‥‥‥ごめんな、だと?何故、周りはそれに気づいていないのだ?


‥‥‥‥‥あぁ、ようやく分かった。私も含んだここに居る者達はカミナリ殿に盲信しているのだ。


私ならば彼が造った魔武器に盲信し、それが自身の力だと勘違いし、勝てぬ相手に挑み、無様に負けた。気づけなかった自身の本当の実力に‥‥‥‥‥。


そして、皇帝陛下もランスロットもその周りの取り巻きも彼の変化に気づいていない。


(久しぶりに会うな‥‥‥カミナリ殿‥‥‥貴方‥‥‥死にそうな顔をしてるでは無いか?)


(ん?あぁ‥‥‥‥あんたは俺をちゃんと見てくれるんだな‥‥‥‥嬉しいよ‥‥‥‥あんたの‥‥‥‥アルケルさんの武器は数年前待っててくれ)


(数年前ですか?‥‥‥いや、それよりも何処かで休まれた方が‥‥‥)


(いや、それは周りが許してくれないよ。それにこの場を乗り切れば多少は楽になるからな‥‥‥魔王討伐の旅が終わったら、また、アルケルさん専用の武器を渡しに来るからさ‥‥‥‥暫く待っててくれよ。あんたに合う最高の魔武器を渡しに行くからさ)


カミナリ殿はそう言うと弱々しい笑顔で私に笑いかけた


(カミナリ殿‥‥‥‥貴方は‥‥‥)


(勝敗は決まった!!連れて行けっ!衛兵!!)


((ハッ!))


(ま、待ってくれ!彼に!カミナリ殿に伝えたい事があるんだ!だからもう少し時間をくれ!!!!)


(敗者に話させることなど何も無いわ‥‥‥‥)


(‥‥‥‥アルケル。君に手紙を書くよ。それでたまにやり取りを使用!!)


(カミナリ殿!!本当ですか?!!あ、ありがとうございます!!カミナリ殿!!)



数ヶ月前のガリア帝国・首都


(今回の魔王討伐の功績により、貴殿をフレイヤ地方の軍団長に任命する。ランスロット・○○○○○よ)


(‥‥‥‥ハ。有り難き幸せ)


((((オオオォォ!!!!))))


(あの若さでフレイヤ地方の軍団長とは、素晴らしい)


(いやいや、憎き魔王の討伐だ。当たり前の褒美よ)


(‥‥‥‥ランスロット!!貴様!!主たる〖勇者〗殿を‥‥‥‥カミナリ殿はどうした?何故、居ない?まさか貴様ら!!彼に何かしたのか?)


(アルケル‥‥‥つっ!ふざけるな!!我々も血眼になってあっちこっち探したんだ!!だか、何処にも見つからない!行方不明なんだっ!そもそも‥‥‥一緒に旅もしていない君に何故、そこまで言われないといけないんだっ!)


(き、貴様!!あの人の一番近くにいながら、行方不明だと?あの人が何れだけ、貴様等、足手まといが苦労をしていたのか何も知らないのか?)


(‥‥‥‥何?お前‥‥‥‥我々がどれだけ彼を心配していると思っているんだ‥‥‥‥)


(どうやら、本当に知らないようだな‥‥‥もういいお前やその取り巻きには失望した。それにこの帝国の武器にもな (ボソッ))


(お、おいっ!アルケル。何処に行くんだ?)


(フレイヤ地方に戻るんだよ‥‥‥‥これからよろしくお願いいたします‥‥‥ガリア帝国・フレイヤ地方・軍団長ランスロット殿)


(アルケル‥‥‥‥)


(英雄たるランスロット卿に何だ?あの態度は)


(所詮は首都の中級貴族。粗野が出るのも親の影響かと)


(ふんっ!‥‥‥‥若いな)


(‥‥‥‥皇帝陛下?)


こうして私はガリア帝国の武器、人、地位、全てに嫌気が差した。いや、半分は私の深慮深さが足りなかったせいだろう。


考えなくては、深く、〖思案〗しなくては負けてしまう。ランスロットに、ガリア帝国に、全ての者に負けてしまう。〖思案〗し、〖知略〗を様いて素早く行動しなければならないのだ。


全てに勝ち。あの人がガリア帝国に戻った時に安心できる様に。


私、専用の魔武器を届けてもらえる様に場所を整えておかねばならぬのだ。


だから、負けたくない。こんな理不尽な事で私は負けたくないんだ。


そう‥‥‥‥最初にあの人から貰った私、専用の魔武器を見た時の感動をもう一度味わうまで私は死ね無いんです。カミナリ殿‥‥‥‥



◇◇◇◇◇


「両腕は切った‥‥‥‥後はその息の根を‥‥‥」


「わ、私はまだ死ぬわけにはいかないんだ!!!」


「は?立ち上がって‥‥‥向かって来た?」


モルジア王女が驚愕の顔を浮かべる。


「ハハハ!何たる気迫だ。流石、仮にもガリア帝国の将軍。最後は華々しく散れ‥‥‥鋼鐵‥‥‥回帰‥‥‥〖瑠璃緑玉の割‥‥‥‥〗」



アダマス王が回帰技を放った瞬間であった。空を舞うセクウィの背中から、小箱が一つ落ちた。


シューーー!!カーンッ!


その箱は両腕を失ったアルケルの前に静かに落ちた。


「む?何だ?」


「え?あれって‥‥‥ナルカミさんが私達に渡してくれた転移用の魔道具?」


「わ、私は‥‥‥‥ここで死ぬわけにはいかな‥‥‥‥」


アルケルがそう言い終え様とした瞬間。落ちた箱の封は切れ、(まばゆ)い光を放った。


シュイーン!!!


「こ、この光って?!」


「小僧の転移魔法を使う時の光か?!!」


シュゥゥ‥‥‥‥。


「副軍団長の姿が‥‥‥消えた?」


「‥‥‥‥ハハハ!サーシャ殿にしてやられたな‥‥‥だから、この場か去った分けか!」


「何ですか?サーシャさんが何をしたんですか?アダマス王」


「‥‥‥‥時期に分かる。だが、これでここの大将たるアルケルは居なくなった。皆の者!!これから殲滅戦に移行する。残ったガリア帝国兵士を薙ぎ払え!!それが終わり次第。北上し、〖エメラルド高原〗一帯の領土を平定する!!」


「「「「ハッ!!!!!!」」」」


「「「「┛━┣┗━┛┣┛┗!!!!!(オオオォォ!!解放せよおぉ!!!)」」」」


「ヒュルルルルルル!!!!!!(じゃあ、分身体をそっちに送るよ。ヌシ様‥‥‥)」


「‥‥‥‥案外、呆気なく終わりましたね」


「呆気なくね‥‥‥‥赤竜とセクウィ君の力が無かった手こずっていたと思うけど‥‥‥‥あの人で何処まで力を隠しているんのか気になってきたわ。私‥‥‥‥」


万の赤竜は勝どきの咆哮を上げる。


アダマスの民は雄叫び上げ。


アダマス王は翠玉の高原に広がる彼等、先祖が求めに求めた緑光を浴び、そして、高らかに笑う。


彼等は取り戻す!奪われた地を


彼等は再び立つ!取り戻した地に


そんな栄光の緑玉の輝きが〖地人〗を照らすのだ。


祖の地を取り返したる男。


その名もアダマス国の希代の名君〖オリハ・ダイヤ・アダマス〗である。



翠玉の高原は輝き光編


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