三国の思惑
フレイヤ地方・ガリア帝国領〖レッドガーデン〗
「ランス様。ご報告にございます。昨夜遅く、〖魔王領〗の軍がガリア帝国と魔王領の国境まで南下したとの事です」
〖ガリア帝国・ランスロット軍副将・シャルア・バテル〗
「何だって?魔王領?何故このタイミング何だ!両国での同盟はどうなっている?」
「わ、分かりませんが‥‥‥唯一分かる事は一つ。魔王軍の出現でガリア本国からの援軍は望め無くなり。それに魔王領側は軍事演習との事なので、こちら側からは何も手出しができないとの事です」
「軍事演習?そんな分けあるか!ガリア帝国は魔王領から相当な恨みを買ってしまっている。弱みを見せた瞬間。ヤられるのは明白じゃないか‥‥‥くそっ!現在の魔王領は魔王不在と聴いていたから油断していた。まさか軍を起こすなんて‥‥‥朝来のレイサイトは不在の筈だろう?魔王領に軍を動かせる人材何ていない筈だ」
「‥‥‥‥噂では神代に軍隊長を務めていた〖ギルフォード〗という人物が軍の指揮を任されているとの事です」
「ギルフォード?‥‥‥‥もしかして、鮮血のギルフォードの事か?‥‥‥‥そんな遥か昔の人物が何で今更、表舞台に立ってくるんだ?!」
◇◇◇◇◇
アテナ地方・魔王領南部〖サルマルク〗
「ギルフォード様‥‥‥‥本当にこのままガリア帝国と睨み合っているだけでよろしいのですか?フレイヤ地方では〖レッドローズ〗との戦争が近いと噂になっていますし。それに乗じて、ここから南下されては?」
「いや、良い。セシリア様から戦争は避けろと言われているのだ‥‥‥それに今回の軍は一万も満たない兵士か連れてきていない。そんな数では都市一つ落とす事が限界だろう。今回は我輩の契約者殿が上手く動ける様に行軍しに来たまでよ」
「契約者殿?‥‥‥」
「しかし、ただ軍を駐屯させていくのも勿体ないな。千の精鋭を率いて此処いら一帯の魔獣を狩り、持ち帰るとしよう。レオンハルトよ。暫く此処を任せるぞ」
「は?ギルフォード様?何処に行かれるのですか?ちょっとっ!」
「確か、ガリアと魔王領は不戦の契りを交わしているのだろう?ならば此方から仕掛けない限り、彼方から来る事はないだろう。それにガリアの上層部は我輩の名〖ギルフォード〗を聴くだけで震え上がっているだろうから何もできまい。ではな、朝方には戻る」
「待って下さい!!ギルフォード様!!」
フレイヤ地方〖アダマス国〗
〖紅玉の間〗
「どうだ?あの小僧達の様子は?フローライト」
「‥‥‥そうですね。部屋の中から気配が全くしません。まるで何かに遮断されている様です。アダマス様」
「遮断だと?‥‥‥‥あの小僧、何をした?貸部屋は一つだけで良いと言い、自身の仲間と共に部屋の中に入ったと思ったら何をしたんだ?」
「警戒されていますね。とても深慮深い様です」
「これ以上、俺に利用されない為にか?‥‥‥‥成る程、俺を正気に戻しただけはあるか‥‥‥俺はただ〖エメラルド高原〗の奪還と高次元召喚を止めてくれれば、後は何でもしてやるつもりでいるんだがな」
「昔、追いかけ回して過ぎたからでは無いですか?アダマス様。勇者殿はそれがトラウマになっているとか‥‥‥‥」
「あのクソガキは俺が所有している物ばかり奪って行ったんだぞ。許せる分けないだろうがっ!」
「奪うのにも何か理由があったんでは無いでしょうか?この奇襲戦争が終わったら、色々と腹を割って話し合ってはいかがですか?」
「‥‥‥‥考えておく。それよりもガリア帝国とレッドローズに悟られぬ様に軍は編成できたのか?レッドスピネルよ」
「はい。アダマス王。密かに各地方の傭兵を雇い入れ、アダマス王直属の〖鋼玉〗軍を一般人に化けさせて〖エメラルド高原〗へと向かわせています」
「そうか‥‥‥‥俺は北の開戦まで残り四日までに〖エメラルド高原〗へと着けば良さそうだな」
「〖ダイヤスミス城〗の守備はどうしましょう。アダマス様が昏睡された時は我々は各地に隠れて時を待っておりましたが。今回は遠征、ストール家の様な者がまた現れ、首都を牛耳られたら不味いのでは?アダマス様」
「それはレッドスピネルに任せる。俺の曾祖父である。元アダマス王ならば〖ダイヤスミス城〗の事も自由に動かせるからな。元アダマス王が首都に居れば不穏分子共も好きに動けないだろうからな」
「御意に!お任せ下さい!アダマス王よ」
「あぁ、頼むっ!‥‥‥‥‥後はアダマス国の国境に防壁でも遥か‥‥‥‥鋼鐵・回帰‥‥‥‥這い上がれ!!〖宝玉摩天〗!!」
アダマス王の規格外の現代魔法〖鋼鐵〗によりアダマス国国境沿い周辺に高さ三十メートルの防壁が地上から這い出できた。
その防壁はアダマス国国境全体を覆い、国を守る堅牢な防御壁になった。
「これで良いか‥‥‥‥後はストール家のガキが使いに出していた男を洗脳し、〖レッドローズ〗の黒幕とやらに偽の情報を掴ませ、表舞台に出てきてもらうだけか‥‥‥‥」
「その準備はとうにクリンベリルが終わせております。アダマス王」
「そうか。流石、仕事が早いな。クリンの奴は‥‥‥‥四日後、ガリアとレッドローズの開戦と共に〖エメラルド高原〗と〖レッドガーデン〗に進軍し。かの地を奪還する」
「「王の願いのまま‥‥‥‥御意に」」
◇◇◇◇◇
『レッドローズ』国
「嬢王様。何やらガリア帝国軍の動きが慌ただしいとの報告が‥‥‥‥」
「それじゃあ、偵察隊を数名行かせなさい‥‥‥‥深追いするなとも伝えてね‥‥‥開戦は四日後よ。無理はしたく無いわ」
「ハッ!全ては赤の嬢王様、〖レッドガーデン〗の奪還の為にっ!」
「‥‥‥‥今回で奪還‥‥‥‥するわ。私達の始祖の地をね。ねぇ、お母様‥‥‥‥」
赤の嬢王・〖ロゼリア・レッドローズ〗
▽▽▽▽▽
四日後。レッドローズ・〖朱の館〗
「へー、アダマス王を完全にコントロール化に置くなんて、やるじゃないスミスの奴。だから、あんな壁がいきなり現れたのね!納得いったわ」
「では、そろそろ動く時ですね?フレイ様!」
「フフン!そうね。エドラル‥‥‥‥私達もそろそろ動きましょうか。〖代理人〗様の身体を造りに‥‥‥‥〖セムシ〗の生成をね!」
『ラグナログ(神々の黄昏)』
大アルカナ〖太陽〗の片割れ〖フレイ・セイズ・イグニッション〗
フレイヤ地方最大規模の戦いが始まる。