時は動き出す
〖ダイヤスミス城〗〖紅玉の間〗
アダマス王との闘いの後、落ち着いたアダマス王に現在のフレイヤ地方の現状を詳しく伝えた。そして、俺、一人だけ、〖紅玉の間〗と言う所に呼ばれ、可憐ちゃん、モルジア王女、後に来たアナスタシア達は客室へと案内された。
そして、現在、アダマス王、レッドスピネル、フローライトと言うアダマス国の政治の中心人物達の前で俺がフレイヤ地方で集めた情報を伝えていたのだった。
「‥‥‥‥色々と思う事はあるが‥‥‥今回、俺を正気に戻してくれた事に感謝します。〖隠天の天鳥〗セクウィ様。〖ルア・テレシア〗のルア法王殿」
「ホーホー!」「スゥ‥‥‥スゥ‥‥‥」
「いや、俺は?赤髪のおっさん!」
「次に我が国〖アダマス〗と俺の親友であるフノス王が治める〖フノス国〗に戦争を仕掛けるという馬鹿な暗躍をした男。自称、俺の養子の王子こと〖ストール家のスミス〗だが‥‥‥コイツは地下鉱脈の最新部への永久強制労働者とする。意義のある者は入るか?」
「しょ、しょんなぁ!!!あんな!!!!!暗い場所行けるかぁ!!!」
「「「「「アダマス王の見心のままに!!!」」」」」
「忠実な臣下に感謝を‥‥‥盗人小僧‥‥‥担い手殿。貴殿が捕縛したストール家の手の者を全て引き渡してほしいのだが‥‥‥‥」
「じゃあ、アダマス国中にある〖オリハルコン〗を全部くれ!おっさん!」
「アダマス王だっ!クソガキ!‥‥‥‥〖オリハルコン〗だと?‥‥‥‥あれは我が国でも滅多に取れない希少な物だ‥‥‥だが、フノスとの戦争回避、俺の呪解、フレイヤ地方の現状の情報の開示、ストール家の兵士の捕縛、スミスの撃破か‥‥‥‥フム、どう思う。レッドスピネル」
「はい。十分に報いるべきかと‥‥‥我々はアダマス王を人質に取られてしまい身動きが取れない中、颯爽と現れこの国を救って下さいましたからには‥‥‥」
「腹立つ盗人にも礼を尽くすべきだと?」
「はい‥‥‥‥」
「そうか‥‥‥‥それが先先先代のアダマス王の言葉ならばそうするしかないか。曾祖父様よ、質問に答えてくれて感謝する」
「いえいえ、とんでもありません。アダマス王」
‥‥‥‥は?何だ?今の会話。あの少年みたいな人がアダマス王の曾祖父?どういう事だ?
「私はドワーフ族何の長命なのですよ。お久しぶりですね。賢者殿」
「お久しぶり?」
「おっと失礼を‥‥‥‥昔、とても仲が良かった親友とお姿が似ていましたのでつい」
「いやー、本当に似ていますなぁ。なぁ、フローライト」
「‥‥‥‥えぇ、あの御方にそっくりですね。レッド‥‥‥」
レッドスピネルさんとフローライトさんは俺の顔をまじまじと見て何かを思い出している様だった。
いや、さっき、城の中でアダマス王と闘っている間も俺を見ては驚愕の表情を浮かべて、立ち尽くしていたな‥‥‥‥。
「話は済んだか?レッドスピネル、フローライト‥‥‥今は話し合い中だ。その盗‥‥‥〖担い手〗との会話は後でにしてくれ、ちゃんと時間は取らせるのでな」
「「ハッ!!」」
「そして、盗‥‥‥〖担い手〗殿には我が国から感謝の気持ちとして〖オリハルコン〗を贈呈する。誠に遺憾だがな」
「このおっさん。まだ昔の事を引き摺ってのかよ。全く‥‥‥」
「おいっ!心の声が駄々もれだぞ。小僧!!」
「あっ!ヤベェ‥‥‥」
「やはりお前はあの時の盗人小僧だろう?!俺から奪った財宝を何処にやった?」
「いえ違います。僕はただのルア法王様の従者で、〖担い手〗とか言われる魔法使いです。アダマス王」
「‥‥‥‥この小僧。白々しい嘘を次々と‥‥‥‥まぁ、良い今は緊急時だ。正気に戻してもらった礼もある。国中の〖オリハルコン〗は渡すので、ストール家に与した者達を差し出してくれ」
「〖オリハルコン〗を渡すのが先だ、おっさん」
「‥‥‥‥コイツ、絶対にあの時のクソガキで間違いない‥‥‥‥だが、コイツは人族。歳を取ってなければ可笑しい‥‥‥‥どういうカラクリだ?ブツブツ‥‥‥」
「おっさん。早く〖オリハルコン〗をくれ」
「だんだん、ふてぶてしくなってきてるぞ小僧」
「まぁまぁ、アダマス王。まだ、小さな少年です。寛大になられませ」
「レッドスピネルに同意致します」
「何?‥‥‥どうしたのだ?お前達‥‥‥」
アダマス王も困惑している。
レッドスピネルさんとフローライトさんがそう言って俺を擁護してくれる。初対面の筈なのに何でこんなに優しいんだ?
「重臣二人には逆らえん。どれ‥‥‥〖オリハルコン〗はこの指輪だったか?開け!〖輝石〗」
アダマス王がそう叫んだ瞬間。城の外の大きな広場に七色の光を放つ大量の〖オリハルコン〗がいきなり姿を現した。
ドガゴオオオンン!!!!
「何だ?この岩石の山は?‥‥‥山か何かか?」
「あれが希少鉱石〖オリハルコン〗です。〖担い手〗殿。アダマス国でも余り発掘できない代物。それを王は貴方に渡すという事を深く理解して頂きたいのです」
レッドスピネルさんが眼光鋭く俺を見てきた。あぁ、これをあげるから捕縛した奴等を此方に引き渡してくれということか。
「‥‥‥分かりました。今から出します」
「?出しますだと?それはどういう事‥‥‥‥」
アダマス王がそう告げたと同時に俺は黄金の宝物庫から、アナスタシアが凍らせて捕らえた人達を一斉に出した。
シュンッ!シュンッ!シュンッ!シュンッ!シュンッ!シュンッ!シュンッ!シュンッ!シュンッ!‥‥‥‥‥‥!!!
「は?何だ?この凍ったオブジェ達は?!小僧!!お前!!何をしている?!こんな場所で一斉にこんな物を収納魔道具から取り出すな!!!城を壊す気か?」
「もう遅いわ。おっさん、〖オリハルコン〗はありがたく貰っておくぜ」パチンッ!
俺が右手で指パチンッ!をすると外の広場にあった。〖オリハルコン〗が魔法の袋へと収納された。
「良し!これで〖方舟〗を作る為の金属は手に入れた。後は〖ティアマト〗地方の〖エヌマ〗に行くだけだな」
「〖ティアマト〗地方だと?‥‥‥いや、それよりもこの凍ったオブジェをどうにかしなくては!!鋼鐵魔法〖罪界の崩落〗」
「おっと!不味いですな。〖担い手〗殿。フローライト。浮遊魔法で一瞬、宙へ浮いて下され」
「は?何で宙?」
「はい!レッド」
レッドスピネルさんのその忠告と同時に〖紅玉の間〗の床の石床全てが突然消え下から底無し穴が出現した。そして、凍った捕縛者達が次々に底無し穴へと落ちて行くのだった。
「レッドスピネルさん。あの底無し穴はいったい?」
「あれですか?現アダマス王は国内の地層を操れるのですよ。そして、あの穴の底には〖ダイヤガラ地下鉱脈〗が広がり。更に奥には罪人達を力尽きるまで永久に働かせる為の〖テイーアーイ〗があるのです」
地下鉱脈‥‥‥力尽きるまで?‥‥‥テイーアーイ?‥‥‥帝●?‥‥‥‥何だそれ?カ●ジの地下帝国がこの世界にはリアルにあるって事か?
ならば、あのおっさんはリアル兵●会●って事だよな?だから、あんなに五月蝿いのか‥‥‥‥
「おい‥‥‥‥〖担い手〗。お前、今、俺に対してもの凄く失礼な事を考えているな?」
「‥‥‥いえ、全く。●●会長」
「会長だと?何の名前だ?‥‥‥‥だが、おっさん呼びよりはまだ良い。今度から、俺の事はおっさんではなく会長と呼べ小僧」
「‥‥‥‥呼んで良いのかよ。分かりました。アダマス会長」
「うむ、それで良い」
だが、それが良い!!みたいなフレーズで言うなよ!アダマス王がますます、カ●ジの兵●会長に見えてくるな。
「気分も良くなった‥‥‥‥忘れていたが、ストール家の小僧。貴様も下へ行け、偽りの息子を名乗った罪は皆が許しても、俺が許さん」
「はギャ?‥‥‥へ?下っへ?何処に?」
「地下の底。〖テイーアーイ〗だ。そこで死ぬまで過ごせ。サラバだ!ストール家の恥じよ‥‥‥」
「ヘギャア?い、嫌だっ!や、止め‥‥‥嫌だぁぁ!!!」シュルルル‥‥‥‥
アダマス・ストール・スミスは叫びながら、底無し穴へと落ちて行った。
「閉じよ〖崩落〗!!全ての罪人は下へと落としたか‥‥‥罪の選定は地下の〖ゴルレオ〗に任せるとしよう。次の議題に入るか‥‥‥‥〖ガリア帝国〗と〖レッドローズ〗の戦争だが‥‥‥」
アダマス王の一言で〖紅玉の間〗新たな石床が造られていく。そして、スミスの事などもう忘れたかの様に、次の議題へと進むのだった。
「どう動きますか?王よ‥‥‥」
「あぁ、それを決めたいのだが‥‥‥先ずはフノス王と‥‥‥‥エルに会いに行かねばならん‥‥‥‥小僧‥‥‥いや〖担い手〗殿は転移魔法を使えるのだったな」
「ん?あぁ、使えるぞおっさ‥‥‥会長」
「ならば、俺を首都〖フノスエル〗まで連れて行ってくれ」
「えぇぇ‥‥‥‥嫌だ」
俺は即座に応えた。
「貴様‥‥‥‥報酬として〖バレスノルの宝玉〗をやる」
「了解しました。直ぐに行きましょう。アダマス会長!」
俺は即座に応え、即座にフノス国へとアダマス王を連れて転移した。
フノス国・首都〖フノスエル〗
「アダマスは大丈夫だろうか?‥‥‥‥」
「ナルカミさん達を信じるしかありませんよ。フノス様」
「いや、それはそうなんですがね‥‥‥彼は私の親友なんですよ。ダリウス君」
シュンッ!
「会いに来てやったぞ!!エル!!!」
「は?オリハが何故、ここに?」
「おぉ、流石、フレイヤ地方‥‥転移魔法の座標が本当に安定するな‥‥‥」
「〖担い手〗殿の転移魔法で来てやったんだ!喜べ!親友!ハハハ!!」
アダマス王はそう言いながら、フノス王の肩をバシバシ!!叩く。フノス王はそれを喰らって滅茶苦茶痛そうにしている。
「この容赦ない叩き方は間違いない。オリハなのか?病気はもう良いのか?」
「おうとも!そこの〖担い手〗殿の仲間のルア法王殿のおかげで良く分からんが治ったらしい。それよりもエルよ。我が国との国境に配置した〖オッタル〗の剣士達はまだ駐屯しているのか?」
「〖オッタル〗の剣士かい?‥‥‥入るよ。君の国が宣戦布告をいきなりしてきたからね。警戒態勢を敷かざるおえなかったんだ」
「‥‥‥そうか。ならばそのまま北上させて、アダマス国内に滞在させておけ。俺はアダマス国に戻って軍を二つに編成次第、〖レッドガーデン〗と奪われた先祖の地〖エメラルド高原〗へと軍を進め、エメラルド高原を奪還する!!」
「は?何だ?それ、おっさん!」
俺はいきなりの事で驚愕する。
「は?オリハ、君はいきなり何を突拍子も無い事を言い出すんだい?」
「これは好機だエル。レッドローズやガリア帝国の奴等は俺がまだ寝込んで入ると思っている。油断しているガリア共をレッドローズの嬢王と共に、このフレイヤ地方から追い出すチャンスなんだ!」
「チャンスと言ってもね。それで大量の死者や魔力残滓が発生すれば、裏で暗躍している〖太陽〗にむざむざと生け贄に使われるだけだろう?」
「そうさせない為に〖担い手〗がいるんだ。アンバーの調べで分かったが、この小僧はベヒーモス様とセクウィ様を使役している‥‥‥後は分かるな?」
「‥‥‥‥フレイヤ様の願いのままにかい?」
「そうだ。小僧‥‥‥いや、〖担い手〗よ。図々しい願いだが、我々に協力してもらえないか?」
「いや、いきなり、言われてもな‥‥‥‥別にあんな頭の可笑しなガリア帝国がどうなろうと知ったこっちゃ無いし。俺はエスフィールを捜索しやすい様に〖同盟〗と捜索許可を貰えればそれだけで良いしな」
「〖同盟〗だと?‥‥‥あぁ、さっき〖紅玉の間〗で言っていた事か‥‥‥ならば今回のガリア帝国に行う奇襲に参てくれれば、アダマス国は無条件で〖同盟〗に力を貸そう」
「何だと?」
「それだけではない、このエルも同意させるし、〖レッドローズ〗は長年に渡り、我が国が支援してきた。俺が同盟に加われと言えば従わざる終えまい。どうだ?〖救国の担い手〗‥‥‥‥いや、ガリア帝国の〖勇者〗殿よ」
「‥‥‥‥あんた。最初から俺の正体に気づいてたのかよ」
「ガリア帝国からの不当過ぎる扱いもな。お前は‥‥‥‥相当、酷い扱いをされていたのだろう?ならば、今回の奇襲に参加して恨みを晴らす絶好の機会だと思わないのか?小僧」
「アダマス王。脳筋かと思ったら、案外、狡猾なのな。あんた」
「良く言われるな。それに〖オッタル〗〖アリババ〗〖アダマス〗〖エメラルド高原〗〖レッドガーデン〗で発生する〖魔力残滓〗はお前が好きに使えば良い」
「好きに使う?」
「とぼけるなよ。小僧、貴様は持っているな?高次元の者を喚ぶ為の触媒を‥‥‥」
「触媒を持っているですか?それはいったい?」
「‥‥‥‥‥」
「それも複数もだ。エル‥‥‥‥小僧、〖太陽〗にむざむざ使われる前に全て使えよ。そうすればお前のこのフレイヤ地方での願いを俺ができる範囲なら全て叶えてやると確約する」
「確約ときたか‥‥‥‥流石、名君と言われる現アダマス王か‥‥‥‥」
「決まりだな。エル!〖オッタル〗から自分の護衛を呼んでおけよ。この城にいる〖魔法使い〗と〖騎士〗も連れていくからな」
「相変わらずの傍若無人さだね。オリハは‥‥‥‥分かったよ。〖雷剣〗と〖風剣〗を新しい護衛に呼ぶから連れて行って良いよ‥‥‥‥その代わり絶対に奪還しなよ。初代アダマス王が産まれた地〖エメラルド高原〗をさっ!」
「言われなくてもそうするさ。親友よ‥‥‥」
アダマスはそう言うとフノス王と右手で固い握手を交わしたのだった。親友同士だから多くを語らなくても伝わる事があるのだろう‥‥‥‥しかし、これで決まってしまったのだ。
五大列国のうちの〖ガリア帝国〗〖レッドガーデン〗〖アダマス〗の三つの大国がぶつかり合う。〖三列大戦〗の開幕である。
そして、その大戦中の間に、俺は黒幕である〖太陽〗撃破と高次元召喚の阻止を行わなければならない事が決まったのだった。