貴石の城と偽りの王子 No.6 忘れられた天鳥の王
五年9ヶ月前の神集九煌歴◯◯◯◯年
フレイヤ地方『赤霧の隠し谷』火炎と落雷のアジト
(つうか、今更なんだが、この場所、案外広いよな?スヴァローグ)
(む?何だ?いきなりそんな質問をして?)
(いや‥‥‥‥だってさ、赤竜達の巣窟かと思ったら、廃村やら変な遺跡やらまだ使えそうな城まであっただろう?‥‥‥だから、ここには昔、何かの国でもあったのかと思ってな)
(国か‥‥‥そうだな。そんな国がかつてはあったのかもな‥‥‥‥‥セツナよ)
(スヴァローグ?何だ?俺、何か不味い事でも言ったか?)
(‥‥‥‥いや、言って無いさ‥‥‥‥かつてはここを火炎の民が居たと言われている)
(火炎の民?)
(あぁ、その東の地は代々、フレイヤ地方の国々を無償で助けてくれる『アダマス』国が保有していた〖エメラルド高原〗がある。そして、その北に行くと『レッドローズ』国がかつて保有した〖レッドガーデン〗が広がっているのだ)
(それは知っているよ。この禁則地と言われる『赤霧の隠し谷』〖エメラルド高原〗〖レッドガーデン〗の全てを〖ガリア帝国〗に奪われたんだろう?フレイヤ地方の人達は‥‥‥‥)
(そうだ‥‥‥奴等はアテナ地方の土地の半分を保持しているくせに、それでは飽き足らず大戦のどさくさにまぎれて、フレイヤ地方の土地を‥‥‥‥我々の土地を奪っていったのだ)
(アテナ地方だけでも大陸一の国土を誇ってるのにな!欲張りな国だよな)
(そうなのだ。だから取り返せなくてはいけないのだ。我々が奪われた故郷だけでもな。我はそれを幼少期から願い続けているのだ)
(‥‥‥‥叶うと良いな。その願い‥‥‥‥)
(そうだな‥‥‥‥む?)
(どうした?スヴァローグ)
(いや、彼処の遺跡の様なものから光が見えてな)
(光?‥‥‥‥お宝か?‥‥‥お宝なら売ってギルドの資金にしよう!確かめに行ってみようぜ!スヴァローグ)
(‥‥‥‥‥我は暗い場所は苦手だから行かぬ。炎人は明るい場所を好むのだ)
(お前って時々、女の子みたいな感じになるよな。全然、可愛くない筋骨隆々の体格なのにさ)
(‥‥‥‥褒めているのか?セツナ)
(誰も褒めてねえよ!‥‥‥もういいや、暫くそこで待っていてくれ。中を確認したらすぐ戻るからさ)
(ウム!)
俺はそう告げると恐る恐る、洞窟の中へと入って行った。
〖白天の祠〗
(‥‥‥‥案外、中は広いな‥‥‥)
バサバサバサバサ!!
(ピヨピヨ!ピヨピヨ!)
(うわぁ!!!何だ?って何かの鳥の雛か?)
(ピヨピヨ!ピヨピヨ!!久しぶりに起きたの!)
(‥‥‥‥喋る‥‥‥雛?)
(ピヨピヨ!!フレイヤ様も居ないし、このままじゃ消えちゃうの)
(おぉ、そうか。可哀想にな‥‥‥じゃあな。強く生きろよ‥‥‥)
(ピヨピヨ!!逃げるな!卑怯者!!)
(何だと?貴様?!今、なんと言った?)
(ピ、ピヨピヨ!!助けて下さい!ヌシ様と言ったの‥‥‥)
(ヌシ様?‥‥‥‥悪くないな。確か、スヴァローグから借りパクした赤竜の飼育様魔道具があったよな。これだけの広さがあれば暮らせそうか?)
(ピヨピヨ!ウンウン!中、凄く広い!それに僕は大人に成長すれば大きさも自由自在なの)
(自由自在?‥‥‥どういう事だ?‥‥‥‥いや、今は良いかそんな話‥‥‥他に餌は‥‥‥)
(ヌシ様の濃くて質の良い魔力を月に何回かくれれば足りるよ!ピヨピヨ!)
(ほう。魔力で成長するって事は神代時代位の霊獣か何かみたいだな。君)
(‥‥‥‥‥‥うん。そうピヨ‥‥‥‥)
(何だ?最初の沈黙は?‥‥‥まぁ、良いや。とりあえず魔法で仮契約はしといてやるから好きなだけ俺の魔力を食して成長してくれよ。鳥雛君?で良いのか?)
(ピヨピヨ!ありがとう!ヌシ様!!)シュンッ!
(‥‥‥何か怪しい所は色々とあったが‥‥‥‥まぁ、良いか)
そうして、俺は変な鳥雛と接触して飼うことになったのだった。
(おっ!やっと帰ってきたか。どうだ?何か珍しい物でも見つけたか?)
(んー‥‥‥‥いや、特に何も無かったな。強いていえば万能薬の元になる〖コウリョウ茸〗が沢山生えてたくらいだな)
(何?コウリョウ茸だと?それを売れば大金持ちになれるではないか!)
(そう思って全部積んできた。フノスかレッドローズ辺りの闇市に流して売り捌こうぜ。スヴァローグ)
(うむ!そして、新たな支部を造る資金にでも活用しよう)
(だな!)
▽▽▽▽▽
神成 刹那・勇者時代
フレイヤ地方・ガリア領
(‥‥‥‥完全に飼育様魔道具の中に放し飼いにしていたせいで、居たのを忘れていていたが‥‥‥‥デカく成長し過ぎだろう。どうすれば良いんだ?!こりゃあ!!)
(ピュラララララララ!!!!!!久しぶり!!ヌシ様!!!僕、こんなに大きくなったよ!!!魔道具の中も快適だし、ヌシ様は凄い優しい飼い主様だね。ピュラララララララ!!!!)
(ハ‥‥ハハ、そりゃあ、良かったよ‥‥‥)
(セクウィと言う子です。暫くの間、よろしくお願いいたします)
ある女性の声が俺の脳内に響く。
(セクウィ?それが僕のお名前?‥‥‥セクウィ!ありがとう!ヌシ様。僕に名前を付けてくれて。ピュラララララララ!!!)
(へ?俺、今、何か言ったか?‥‥‥‥頭の中に何か聴こえてきたような?‥‥‥‥いや、まぁ、いいか。こんなにデカくても魔法の袋の中に入れとけばどうにかなるだろう‥‥‥これからもよろしくな。セクウィ)
(よろしく!よろしくだよっ!ヌシ様!!ヒュルアアアアアアア!!!!)
▽▽▽▽▽
「それが俺とセクウィの感動的な出会いだったんだ」
「‥‥‥そのお話の何処に感動な所があるですか?ただの天然と天然の漫才にしか思えませんでしたが?‥‥‥‥それとこの状況で私のお尻を撫でるのは止めて下さい。神成 刹那」
「誰が天然だよ‥‥‥‥エスフィールは俺に触られると喜んでたぞ。可憐ちゃん。張り倒されてたけどな」
「私もこんな空の上でなければ、張り倒したいです。つっ?!!それよりも‥‥‥‥そ、そろそろ撫でるの止めて下さい‥‥‥神成 刹那!」
バチーンッ!
「痛?!‥‥‥‥あぁ、そうだな。今はアダマス王との闘いの途中だしなって言っても‥‥‥そろそろ終わりそうか?あっちの闘いは‥‥‥‥」
〖天空の箱〗
「ヒュルアアアアアアア!!!(白天の両翼)」
「ウィ!!!〖聖典の銀楽〗」
「くそっ!!!何故、俺の技が消える?鋼鐵魔法〖琥珀〗」
「相性が悪いの‥‥‥‥〖魔力〗じゃ〖神秘〗に勝てない‥‥‥‥貴方は〖魔力〗を極めただけ。それだと勝てないの」
「ピュルルルルルルルル!!!!!」
「相性だと?何を言っているんだ?この小さき娘は‥‥‥‥」
「私は〖神秘〗と〖魔力〗が使えるの。だから、有利に闘えりゅ‥‥‥そろそろ、終わらせりゅから‥‥‥‥覚悟して‥‥‥」
現〖ロマ〗が躍動する。