紅焔決戦・〖片翼の火人は雷火に吠える〗No.8 創設者達は語り合う
お互いの初手は互角だった。
神明の力を得ているスヴァローグの口から放たれた〖魔力〗の火炎は、真っ直ぐに俺へと向かって来た。
そんな火炎の攻撃を〖雷牙の大太刀〗で切り着ける。まるで獣の雄叫びの様な音速の雷撃を片翼の男に放った。
「相殺したか‥‥‥‥セツナよ。お前と最初に会ってからこの五年超の年月が過ぎ去ろうとしているが、お前は余り強くなって無いのだな。いや、むしろそれが当然か?お前は〖―女神―の呪い〗を受け。身体が初期の頃に戻っているんだものな」
「‥‥‥‥そうか魔法世界で俺がここに来た正しい時間経過は五年‥‥‥‥いやもう少しで六年位経つのか。スヴァローグ。教えてくれてありがとうよ。元相棒殿」
「我にとっては随分と昔の話だ。セツナ‥‥‥‥‥時は経ち過ぎたのだ。今では因縁ある敵通し、『ラグナログ(神々の黄昏』の〖主格〗である『教皇』様を倒し、傷も完全に癒えぬままこの魔法世界へと舞い戻り我と相対するな。五年、六年の時が経ち‥‥‥我は身体と心を成長させた」
「逆に俺は五年、六年前のあの来たばかりの頃の身体に元に戻ってしまった‥‥‥‥」
「その差は合わせて11年月分だっ!我は大人へと成長を遂げ」
「俺は子供に戻った」
「ギャオォォ!!!そして、以前の闘いの傷も癒えぬか?‥‥‥‥我が大アルカナNo.19の片割れだとだと思い過信したか?勝てると?だからこんな場所へと向き飛ばし、一対一の闘いに持ち込んだのか?セツナよ!」
「ちげえよ‥‥‥お前とは誰にも邪魔されないで二人っきりで話し合いたかっただけだ‥‥‥‥スヴァローグとの闘いだって本当はしたくなかった。俺はただ、今のお前が何を考えて、何をしようとしてるのかそれが知りたかっただけなんだよ。スヴァローグ」
「‥‥‥‥我の考え?そんな事、昔から何一つ変わらぬ。我はフレイヤ地方を支配し、我が恩人深き『代理人』にこの地を捧げる事が最大の望み。そして、その為には我は力を付けなければならぬ。お前が知る新なる力を奪い、そして、邪魔なお前を排除する為に我は行動するのだ。セツナ」
「変わったな。お前‥‥‥‥‥昔はもっと組織の為に、解放の為にと言っていたお前が、何でそんな力に溺れる様な思考に」
「貴様が我等のギルドから居なくなり、数年後に聴こえてきた話がある。〖救国の担い手〗〖聖白の勇者〗〖ガリアの騎士〗〖魔術院の異端〗〖魔道具のナルカミ〗。そんな言葉を毎日の様に魔法新聞で読む様になった‥‥‥‥‥〖火炎と落雷〗を抜けてから実に華麗な人生を謳歌していたのだな。貴様は‥‥‥‥我等が大変な時期に助けにも来ずにっ!」
‥‥‥‥‥華麗な人生ねぇ。何処がだよ。ガラン先生に捕まってから血反吐を吐く様な魔法の訓練。その時期が終わればガリア帝国の奴隷‥‥‥‥そんな人生の何処が華麗なんだろうか?
それにスヴァローグが言う大変な時期って何の事だ?
「大変な時期‥‥‥‥とはどういう事だ?スヴァローグ」
「‥‥‥‥あれ程の事件を知らないだと?ガリア帝国と魔王領の戦争が終結したつい最近の出来事なんだぞ?それをお前は知らないのか?魔法新聞にも大々的に掲載されていたんだぞ!貴様」
ガリア帝国と魔王領の戦争が終結?‥‥‥‥あぁ、多分、その時期は俺とエスフィールが地球に飛ばされていた時期だった頃か。
そんな時期に魔法世界側の事件についてしているだろうと言われても分かるわけが無い。
つうか、あの頃は魔法世界に戻る算段すらついていない時期だった筈だ。
「タイミングが悪かったんだ。俺はスヴァローグが言うギルドの事件についてその時は、知る術がなかったんだ‥‥‥‥」
「タイミングが悪かっただと?我が妹があれ程、苦しんでいた時期にか?」
ん?妹?‥‥‥‥妹ってあの俺がギルドを抜ける寸前にスヴァローグがどっからか連れてきた女の子の事だよな?それで少しの間ギルドで過ごさしていた様な?
‥‥‥‥何だ?その子が原因で何かとんでもない事件があったって事なのか?‥‥‥‥ていうか、そもそもスヴァローグの本当の妹は確か‥‥‥‥‥彼処に入るんじゃないのか?‥‥‥‥‥じゃあ、今、スヴァローグが話している妹って誰の事なんだ?
「‥‥‥‥知らなかったのは謝る。だが、今回の剣の里の襲撃を許せるわけじゃない。どのみちお前は『ラグナログ(神々の黄昏)』の一員の一人。七聖―女神―〖アテナ〗の眷属として倒すべき敵として認識させてもらう」
「‥‥‥‥不要な問答は入らぬと?我が妹がどれ程。貴様を慕っていたか忘れたのか?そもそも、我やギルドの者達をおいて出ていく貴様など許されるべきでは無いのだ‥‥‥‥‥‥妹、フレイや『代理人』の為にもお前から力の全てを奪い。『ラグナログ(神々の黄昏)』の障害を取り除く」
「‥‥‥‥‥‥一度。その妹とやらに会わないと駄目な様だな。スヴァローグ。今のお前は何か変だ?つうか?お前、本当に大アルカナなのか?」
「何を言っている?我はれっきとした『太陽』の‥‥‥‥片割れ。〖スヴァローグ・イグニッション〗だぞ」
「片割れ‥‥‥‥‥ではあるのか‥‥‥‥スヴァローグ。お前はここで確実に止めて封印しよう。その後の事はその怪しい妹にでも聞いてやるよ‥‥‥‥色々とな」
「傷も癒えていない、我との年月の差が10年以上あるお前に、今の我を倒せるとでも?セツナ」
「倒すんじゃない。封印するんだよ。お馬鹿」
‥‥‥‥だんだん怪しくなってきたな。何だ?スヴァローグの大馬鹿は何をさせられているんだ?
何時もなら『ラグナログ(神々の黄昏)』と敵対したのなら、容赦なく倒すが‥‥‥今回は少しキナ臭い。だが、今は目の前の火人を止めないと駄目か。
「〖雷牙〗‥‥‥‥‥」
「ガギギギギ‥‥‥‥」
「そうか、休みたいか‥‥‥‥済まん〖雷牙〗。こんな場所に連れた来てしまって‥‥‥‥ゆっくり休んで〖海〗に備えてくれ」
「ゴアアアア!!」
俺はそう言うと〖雷牙の大太刀〗を魔法の袋(黄金の宝物庫)へと閉まい込んだ。
「どうした?まさか素手で我と闘おうとでもいうのか?‥‥‥‥〖拳迅流〗でも極めたのか?」
「アホ、あんな化物流派、極められるわけ無いだろう。武器変えだよ。武器変えっ!‥‥‥‥俺は神煌具に無理をさせるのはもう止めたんでな」
「無理をさせない?武器を使い壊して何が悪いというんだ?」
「全て悪いわ‥‥‥‥それに〖雷牙〗はこの場所じゃあ相性が悪いんでな‥‥‥‥やるぞ。ヒルディス達」
「フゴーッ!」「「ニャーニャー!!」」
「‥‥‥‥何だ?鎌‥‥‥鎖に‥‥‥寸胴‥‥‥何だそれは?」
「これか?これはなぁ、形状を紅く染まる鋼鉄の様に姿を変え数多の者を魅了し、あらゆる神々が掠めたという言われる女神の宝。『七の秘宝』が一つ〖炎の首飾りブ(リーシンガメン)〗だっ!‥‥‥‥少し魔改造したがな」
「『七の秘宝』?‥‥‥‥‥そんな物を何故、お前が?」
「‥‥‥‥‥かき集めたんだよ。こういう状況の時のためになっ!いくぞ!!ヒルディス、ベイグル、トリエグルッ!目の前のアホの目を覚まさせるぞっ!」
「「「グルロオオオオォォォ!!!」」」
‥‥‥‥‥‥新たな秘宝が動き出す。