神成と神無月は話し合う No.2 恐怖と嫉妬
私は神無月 恵。武道の名門である神無月家の一人娘だ。
〖聖抜祭〗の準備期間中、神成君によって魔法と言うものを知った。
その後は彼から魔法について色々と教わり、自分自身では気づけなかった彼に対するほのかな恋心も自覚し始め、アヤネと共に結構過激なアプローチ何かもしていたっけ?‥‥‥‥‥そう。あの時はまだ、彼の全てを知らないまま盲信の様な恋心に浸っていたのだ。
〖聖抜祭〗の開催中、私は神成君に連れられて異世界・魔法世界へと行くことになった。
体育倉庫で転移門を見た時は心が踊ったのを今でも鮮明に覚えている。
私の知らない世界。剣と魔法と妖精のファンタジーが待ち受けいるのだと、その時はワクワクしながら期待に胸を踊らせていた。
魔法世界の過酷過ぎる実態を知るまでの間の短い間だけだったけどね。
いざ、異世界に着いたら、いきなり夜叉巫女ちゃんと剣聖とかいう人が闘い始めるし。神成君はそれを見て冷静に見ていて‥‥‥‥数日後の夜の砂漠では盗賊の集団で悪人とはいえ、人を躊躇なく●めるし‥‥‥‥全てが終わった後、彼はそれを余り引きずっている様子も無く。私は彼の事がすごく恐くなってしまった。
正直、地球に居る時の彼と魔法世界に居る時の彼では全くの別人に見えてる。
いや、人というのは環境やその場の状況で性格も変わるとは思うのだけど。彼はそもそも、人を傷付けたという動揺も罪の意識もまるで感じられなかったわ。
昔から何を考えているか分からない。得体の知れない雰囲気が神成君にはあった。それが彼の魅力なのかもしれないのだろうけど。
あの時はただ彼の事を恐怖していた。私も彼に嫌われる様な事をすれば殺されるじゃないかと、心の奥底では考えていたからだ。
その恐怖は旅が進む事に大きくなっていった。
砂漠での魔獣をいとも容易く殺す強力な魔法。オアシスでは大量の傷付いた人達を治す活躍。ヘル・デアでの信徒の人達への躊躇がない攻撃。ロマ・テレシア進行戦では、人や建物なんかに一切考慮しない激しい戦闘‥‥‥‥次元が違うのよ。付いて行けない‥‥‥‥アヤネなんかは彼に盲信しているから、まだ気が付いて無いけど私は気付いた‥‥‥‥神成 刹那は恐ろしい存在だ。
貴方が恐いの‥‥‥‥一人で何でもできるし、最後には一人で全てを解決しようとするし、それができる力もある‥‥‥それに比べて私は基本的な魔法しか使えない足手まとい。負けず嫌いな私の心は彼を見ているだけで心がズタズタにされてしまう。
そんな気持ちが大きく膨れ上がったのはオアシスでの戦いの終わり頃位だったと思う。
私が知らなかった彼の昔からの知り合いや仲間。
私が知らなかった彼の魔法。
私が知らなかった彼の心の別側面。
彼だけが知り得る知識と持ち得る物全てが、私の目には黄金の宝石の様に見えてしまった。
羨ましい‥‥‥‥何で貴方何かがそれを独占しているのよ!と心の中で強く抱いていた。
まるで何かの物語の主役の様な彼に〖恐怖〗と〖嫉妬〗を向ける。
それが私達の旅の終盤辺りには態度にも出てきていた位にだ。
彼も薄々は感じ取っていたのかもしれない。
最初、寄せていた恋心はいつの間にか別の感情に変化して、私が彼に抱く感情を変えてしまったのかもしれない。
そんな情緒の変化訪れた時にふと現れたのが魔法世界にある国。ガリア帝国の王子のセシルス王子だった。
彼はヘル・デアで捕まっていて神成君によって解放されたらしい‥‥‥‥ここでも神成君。私はただ成り行きを見守っていただけのモブでしかなかった。
そんな彼は私に話しかけ、フィアンセにするとかいきなり言ってきて私はドン引きしたわ。
でもそれは最初だけだった。彼は‥‥‥‥セシルス王子は情緒不安定だった私の近くにずっと付き添い近くに居てくれた。
仲間を救う事で頭がいっぱいの神成君と違って‥‥‥‥‥。セシルスは私を見ていてくれた。私と同じモブとして一緒に過ごしてくれたのだ。
最後には私にウエディングドレスを着させて、私と挙式を挙げようと馬鹿な事を計画してたけど。それもセシルスの魅力の一つだと思った。
セシルス王子のお陰で私の心は大分持ち直す事ができた。彼の‥‥‥彼女の本当の姿を最後知る事になるまでの間は‥‥‥彼女は本当は男装をしていた女の子だった。
それに気付いたのは地球に帰る直前で‥‥‥私はまんまとセシルスに心が傾きそうになっていたのだ。まさか男装の女の子にほのかな恋心を向ける事になるなんて誰が予想つくのよ。
神無月神社から数キロ離れた森にある洋館
〖神無月の館〗
「シュウゥ~、だから。あの神成の方を男の娘に帰るのですか~?ケイ様~」
「そうよ‥‥‥‥えっと白蛇の‥‥‥‥」
「シュウゥ~、白で良いですよ~、シュウゥ~、白はケイ様の守りて兼相談相手ですからね~、シュウゥ~」
「相談相手?何よそれ?」
「〖八岐大蛇〗様はああ見えて人を大事にするお方なのです~、ですから、あの方は心が不安定なケイ様を心配して白をケイ様に付かせたんのですよ~」
「酔っぱらいさんが‥‥‥‥‥私の心配を?」
「シュウゥ~、〖八岐大蛇〗様は酒が絡まなければ七原龍でもっとも人に寄り添ってくれる神様なのです~、あのお方はケイ様の事も確りと見ておりましたよ~、シュウゥ~」
「‥‥‥‥‥そうなんだ。あの酔っぱらいさんは私を心配して見てくれていたんだ‥‥‥‥そう」
「シュウゥ~、ですのでケイ様。これから始め様としている奇行をどうかお止め下さい~、白が恥ずかしくなりますので~」
「‥‥‥‥‥‥駄目よ。それに彼だけが何のペナルティが無いなんて不公平だわ‥‥‥‥アヤネと私を百合の園に送って自分は来年から可憐さんと生徒会ライフを満喫するですって?‥‥‥‥許さないを。魔法世界では、ずっと恐かったけど。さっきの〖怪異〗とかいうので分かったわ」
「シュウゥ~?何をですか?」
「彼はこっちの世界ではただの人に戻るのよ。白」
「‥‥‥‥シュウゥ~‥‥‥いえ、それは違ってですねぇ~‥‥‥」
「ヨシッと‥‥‥これで女装させる準備もできたし‥‥‥隣の部屋で眠っている神成君に男の娘になってもらおうかしら‥‥‥‥そして、この恐怖と嫉妬心ともおさらばするんだからっ!」
「シュウゥ~、ケイ様が話を聞いてくれません~‥‥‥‥どうしましょう。〖八岐大蛇〗様~」
不安定な感情は変な方向へと突き進む‥‥‥‥。