大蛇と怪異 No.2 鈴と蛇
〖魔法世界列島大陸〗・崩壊した『星読の谷』
遥か古の時に滅んだ土地の崖そこに二人の男が立たずんでいた。
「今日も〖白龍〗の封印は何も問題はありませんな。外道殿」
「〖僧侶〗殿のお力あっての事かと‥‥‥‥そんな事よりも。本日の褒美を頂きたく‥‥‥‥‥」
「おおぉ!忘れておりました。申し訳無い‥‥‥‥さぁさぁ!本日は西国の生きた若い遊女をお持ち‥‥‥‥」
魔法世界とは別世界から放たれた。『封解の大太刀』が次元を引き裂き現れる。
ズズズズ‥‥‥‥シュンッ!
ズバァァンン!!!
「何だ?いったい‥‥‥‥」スパンッ!
「はい?‥‥‥何かありま‥‥‥‥‥」スパ‥‥‥ンッ!
二人の男のうち。一人の外道は首から上の頭が宙に浮き。もう一人の男は辛うじて斬激を避けたかと思われたが、利き腕である右腕が切断されるのだった。
「がぁ?‥‥‥‥‥」
「おや?外道殿‥‥‥‥‥おやおや?‥‥‥‥絶命されましたか‥‥‥‥‥ほうほう。そして、節操の利き腕は見事に切断され。塵へと返りますかな。そして、そして、あの大太刀の最後の支局の場は‥‥‥‥〖白龍〗が眠る〖星読の社〗を壊しましたか‥‥‥‥いやいや、これは不味い事に」
(何が不味いのです?闇の坊主)
「おやおや、言ったそばから封印を解きますかな?〖白龍〗殿‥‥‥‥これは些か不味い、不味い」
(逃がすと思いますか?‥‥‥‥‥この私、〖月詠〗が‥‥‥‥貴様の様な悪意の塊を!逃げられると思っているのですか?『帝』の遣いよ‥‥‥‥‥〖白喰〗)
ゴオオォォンン!!!
星読の地の時が〖月詠〗の神の力により止まる。
「おやおや、これはいけませぬな‥‥‥‥‥これでは‥‥‥‥節操の‥‥‥‥時が‥‥‥‥‥止ま‥‥‥‥‥」
(『黒龍』・八岐大蛇が私を解放したのですか?何故?いや、今は御礼をいっておきます。大蛇‥‥‥〖雪姫〗)
「‥‥‥‥はい。〖月詠〗様」
(私は暫く力を蓄える為に姿を隠します‥‥‥‥貴方は〖青龍〗様を探しなさい)
「はい‥‥‥〖月詠〗様‥‥‥‥」
スゥーー‥‥‥‥。
(〖黒龍〗が手を差し伸べてくれるとは‥‥‥ですがこれで現存の〖七原龍〗は〖鳴神〗〖八岐大蛇〗〖月詠〗〖天照〗の四神。〖青龍〗と〖○○〗は居場所が割れず。〖樹海〗は封印されたまま‥‥‥‥時が来るのを待ちましょう。再び集まりし、その時に備えてこの地で力を付けながら‥‥‥‥‥)シュンッ!
シュンッ!
ビュオオオオオ!!!
〖月詠〗が消えると共に〖星読の谷〗に雪が降り始め。それは瞬く間に吹雪へと天候を変える。
「がぁ?‥‥‥‥(雪で節操の身体が埋もれ‥‥‥‥‥る)‥‥‥‥‥‥」
目覚めた〖白龍〗は一人の死人の身体と共に消え。時が止まりし坊主は〖星読の谷底〗で身動きが取れず新雪の中で踠けず、生きたまま埋もれていくのであった。
▽▽▽▽▽
地球・〖神無月神社〗
「‥‥‥‥何?何も切られていない。何だ?何だ?何も切られていないぞ?〖黒龍〗。お前、さてはただの脅しで彦を辛かったの?ハハハ!!面白い!面白いぞ!神の龍蛇よっ!ハハハ」
「フゥゥ!!!有り余っていた魔力をようやく発散できたな‥‥‥‥これで以後は彼方から勝手に此方へと渡る事は禁じられた。〖天上の理〗の横槍も無しとは。今回の事は奴等も望まなかったという事か‥‥‥‥新しき主よ!〖神殺しの力〗だけで何処まで読み取れた?そして、何処まで知っている?」
〖大蛇〗は〖怪異〗・鈴彦姫が自身の目の前にいるのも気にすること無く。俺の方へと顔を向けて話しかけてきた。
「‥‥‥‥〖帝都〗のあれに深傷を負わせたのか?‥‥‥‥そして、北の〖白龍〗も消えたみたいだぞ」
「よしよし。新しき主の〖神殺しの力〗は未だ劣っていないようだな‥‥‥話を続けよ」
「蓬莱様と青龍には〖召還の玉〗をいちをは渡してある。それと和国が危なくなったら喚んでくれともな」
「ほーう。新しき主は、ある程度の事は察していたか‥‥‥‥それに〖青龍〗に通じているとは、それはそれはありがたい。そして、長年行方を眩ましていた奴も見つけた。今、帰るべきか‥‥‥‥」
「ハハハ!何を喋っているんだ?隙だらけだ。黒龍!!『鈴怨』」
シャラン!シャラン!シャラン!シャラン!
大小様々な大量の鈴の音色が〖神無月神社〗に鳴り響く。その鈴、全てが大蛇へと向かう。
「ジャラジャラジャラジャラ、五月蝿き事よ。〖怪異〗ごときが何を奏でるか?‥‥‥‥鈴の役目。御調は聴いた。貴様の役目は既に終わっておるのだ。三下!神話魔法・〖八回生蛇縄〗」
黒蛇の帳から八匹の黒い蛇が其処らかしこを這い回り、鈴彦姫の鈴へと絡み付き、動きを完全に封じ込めた。
「何だそれは?お前の攻撃は彦には通じぬ筈だろう?」
「それは貴様のただの思い込みだ。此処で屠るのは簡単だが‥‥‥‥利用され、何も知らないままわれに殺される貴様を不憫に思う‥‥‥‥」
「利用?不憫?何を面妖な事を言う?彦は自身で考え、力を付ける為にあの上質な魔力を喰らうのだ」
「天迷々‥‥‥‥あ‥‥‥‥‥‥しの‥‥‥‥」
〖八岐大蛇〗は小さい声で何かを唱え始めた。
「何だ?‥‥‥‥何を唱えているんだ?〖大蛇〗の奴」
「‥‥‥‥ねぇ、神成君‥‥‥‥境内の近くに建ってる‥‥‥‥因幡の碑石が黒く光ってるんだけど‥‥‥何かしら?あれ‥‥‥‥」
「因幡の碑石?」
「鳥‥‥‥と‥‥‥‥為‥‥‥‥す‥‥‥‥あいも変わらずのずる賢さ‥‥‥‥我が人の側面の血が許さぬとよ‥‥‥‥因幡の‥‥‥‥」
(?!‥‥‥‥チッ)ザッ!
因幡の碑石から何か白物が俺達の方へと向かって来る。
「何だ?何か出てきたぞっ!」
「いやいや、何、普通にリアクションしてるのよ!今の私達は魔力が使えない。ただの一般人で‥‥‥‥」
「よもや?人質にでも取るつもりだったか?〖因幡の白兎〗よ‥‥‥‥我が新しき主に近寄るな!不義の兎よっ!『蛇言の言・這え』」
シャラン!!ドゴオオオン!!
「がああぁぁ?!何だ?彦の身体が重く?」
(うわあぁぁ!!!身体があぁぁ!!!)
「‥‥‥‥‥貴様はあの小賢しい兎に誑かされていたのだ」
「ガギィ?誑か?‥‥‥され?」
「貴様は鈴の〖怪異〗‥‥‥‥鈴とは本来、奏で邪気を祓う道具だ‥‥‥‥何があった?何をされた?‥‥‥‥‥我は悪性の神だがな。今は此方の天の〖神人〗として貴様の前に立とう‥‥‥‥‥鈴彦姫の報せの〖奏で鈴音〗に‥‥‥‥貴様の安らぎと、鈴の報せの徳を讃える‥‥‥‥感謝を。神話魔法・『暴風の解切』」
シャラン!!‥‥‥シャ‥‥‥スンッ!‥‥‥‥パキンッ!
「ハハハ‥‥‥‥何をする?‥‥‥‥‥彦の鈴が‥‥‥‥報せの‥‥‥‥天照様‥‥‥‥‥にあげる為の‥‥‥‥ウズメが作った‥‥‥‥報せの‥‥‥‥鈴を‥‥‥‥あの人に‥‥‥‥‥渡して下さい‥‥‥‥」
シャラン‥‥‥‥‥。
「言の葉はしかと聞いた‥‥‥‥暫く待て‥‥‥さすればその願い。からなずやこの黒龍・〖八岐大蛇〗が叶えてやろ‥‥‥‥女神・アメノウズメよ‥‥‥‥」
思いは鈴と鳴り、黒龍へと託される‥‥‥‥‥。
大蛇と怪異
終。