輝星決戦・〖星は煌々たる主を思い、土は地上の民を思い願う〗No.11 星のアルカナ
数刻前の『雷霆結界・曼陀羅』内部
「聖星魔法・『赤青白の輝・恒星』」
「智天聖棍・『智天光・連撃』」
雷雲の隙間から三色の流星が降ってくる。
その流星の雨を撃ち落とす為、俺は夜空に向かって聖魔法の光弾をひたすら打ち続けた。
「これでも駄目とはな。だが、偽りの少年の底は見え始めたか‥‥‥‥‥貴様、いい加減に天使一人のだけの力を借りて闘うのは諦めたらどうだ?朝が開けさえすれば貴様達を捕らえようと何万もの『ロマ・テレシア』な信徒が押し寄せてくるのだぞ」
「それは『星の賢者』としての発言か?それとも大アルカナ『星』としての一言か?どっちだ?シリウスさん」
「‥‥‥‥‥‥済まないが後者だ」
「そうか、それは残念だよ。シリウス」
「先程までの事については感謝している。神代から引きずり続けた謎や悩みも解けた」
「なら、ルシファーみたいに『ラグナログ(神々の黄昏)』から抜けるという選択も一つの答えじゃないのか?」
「‥‥‥‥‥私にそんな選択など無い。あの子を‥‥‥‥‥【教皇】様を見捨てる選択など、私には無いのだ。偽りの少年‥‥‥‥‥聖星魔法はやはり効かないか‥‥‥‥‥ならば」
『雷霆結界・曼陀羅』の魔力の気配が変わる。それだけじゃない、シリウスの魔力残滓の気配も全く別のものへと変化していく。
「‥‥‥‥‥来るか?『星』の力。これで‥‥‥‥‥四度目位か?大アルカナを相手取るのは‥‥‥‥‥」
「隠している手があるならさっさと使え。さもなくば、この力をもって、この闘いは終わるぞ‥‥‥‥『大アルカナ』発動。正位置は〖時間〗と〖希望〗」
「時間と希望?それはいったい何の?」
「ますば動きの停止を‥‥‥‥‥〖白色矮星〗」
「くっ!白い閃光?!目が見えな‥‥‥‥‥」
「続いて偽りの少年に赤き希望を‥‥‥‥‥〖赤色巨星〗」
白き光が俺の全身を覆ったと思った途端、周りの景色が瞬時に白色から赤色へと切り替わる。
「なっ?!身動きが?!」
「ご主人様?‥‥‥‥つっ!神代魔法(光)『天使の臨界』」
「遅い‥‥‥‥‥‥〖全天明恒星〗」
俺の身体は何故か動けなかった。白色と赤色の発光により、本当に一瞬だが、身動きが全て封じられた。
それを悟ったウリエルは一時的に自身の神煌具化を時、俺の前に現れる。
「間に合って下さい!!『光地楯・懺悔の天使』!!!」
小規模に圧縮された恒星がその内に秘めた力を『雷霆結界・曼陀羅』内部で爆発させる。
「ウリエル!!!くそっ!下が『ヘル・デア』の都市だから大規模な攻撃はしてこないと思って油断していた。ウリエル!大丈夫か?」
「は、はい、ご主人様‥‥‥‥‥何とか防げました。ですが‥‥‥‥‥‥いきなりの神煌具化の解除と『星』の攻撃を全力で防いだ為‥‥‥‥‥今、闘えるだけの魔力はもう」
ウリエルの全身は所々に火傷と切り傷があった。
俺の筈かな判断ミスで危うく彼女が死んでしまうところだった‥‥‥‥‥‥俺は馬鹿だ。
「こんな怪我をして‥‥‥‥‥‥本当に君が無事なら良かった。あぁ、俺の守る為に怪我させてしまって済まない、ウリエル‥‥‥‥‥蘇生魔法『生命・伝来』」
俺はウリエルに蘇生魔法をかけ、彼女の傷を治していく。
‥‥‥‥‥‥『死神』や『隠者』の時も感じてはいたが、大アルカナという力は魔法理論のへったくれもない出鱈目な力だ。以前の『死神』に至っては神である〖大蛇〗をあと一歩の所まで追い詰めていたしな。
「‥‥‥‥‥‥‥お前ら、『ラグナログ(神々の黄昏)』てっ奴等は皆が皆、そんな出鱈目な力を持っているのか?」
「答える義理はもう無い。それにさっきの攻撃は貴様が力の出し惜しみをしたのが原因だろう?その為に大天使・ウリエルを危うく殺しかけるとは、『契約者』失格なのではないか?」
「ぐっ!それは‥‥‥‥‥‥その通りだ。俺はお前を倒した後の【教皇】との闘いの為に、必要最低限の力しか使わないと決めていた」
「‥‥‥‥‥ご主人様」
「‥‥‥‥‥‥‥そうか、別にそれで舐められたとは思わない。それ程、までに【教皇】様を警戒している証拠なのだろう?だから、私との闘いでは必要最低限の戦力で闘う‥‥‥‥‥‥‥‥‥実に腹立つ話だ。大アルカナは『シリウス』を正位置に‥‥‥‥‥‥‥‥全力を出し切る前に焼き焦げよ‥‥‥‥‥‥『焼き焦がすもの達よ(シリウス・クラウディウス)』」
「な?ご主人様‥‥‥‥‥‥あれは?焼き焦げた隕石ですか?」
「‥‥‥‥‥‥‥最低限の戦力とは言って怒らせたのは済まないと思ったが‥‥‥‥‥怒りに任せてそんなモノをここに落とす気かよ!!シリウス!!!」
「あぁ、これもアルカナの衝動。受け入れろ。偽りの少年」
ウリエルが遥か夜空を見上げ驚愕な顔を浮かべる。
いや、俺も同じ顔をしているのだろう。
巨体な赤色に焼き焦げた隕石がヘスティア地方の満天の夜空からゆっくりと落ちて来るのだ。
「‥‥‥‥‥‥くそっ!足りない戦力はあの地下に幽閉されている彼と契約して補おうと思ってたんだが‥‥‥‥‥間に合わなかった」
「彼?ですか?それは?てっ!ご主人様?」
ウリエルが不安そうな顔で俺に質問する。そんな彼女の身体を俺は抱き抱えた。
「済まない。ウリエル、俺の考えが甘かった。本来なら地下の彼等に一時的な契約者になってもらって、一緒に決起してもらう算段だったんだが、無理だった」
「決起ですか?」
「あぁ、ラファエルとアヤネに説き伏せてもらって、仲間になって一緒に闘ってもらう予定だったんだが間に合わなかった。此処は君だけでも安全な所に逃が‥‥‥‥‥‥」
「グルルル‥‥‥‥‥‥いや、間に合わせていたぞ!契約者」
「は?誰の声だ?何でこんな上空から声が?」
俺は獰猛な鳴き声がした方向を見る‥‥‥‥‥‥
「グルルル‥‥‥‥‥御初だな。神獣・ケット・シーだ!以後、お見知り置きを、開放の大恩はこの力をもって代えそう」
俺とウリエルの目の前には、艶の良い茶色の猫が立っていた。
「愛らしい?」
「ネコ様ですか?」
「‥‥‥‥‥‥まぁ良い、今はあの隕石をどうにかしよう」
「させると思うか?獰猛なケット・シーが!大アルカナ‥‥‥‥」
シリウスがケット・シーを攻撃しようと大アルカナを唱えるが‥‥‥‥
「させねえよ!おらぁ!!!」
「‥‥‥‥‥良くも幽閉してくれたな!!!ゴラアアア!!」
「がぁ?何処から現れた?!!」
ドゴオオオンン!!!
突然、現れた霊獣と幻獣の二体によって攻撃され、シリウスの身体は結界の壁へと衝突した。
「な?幻獣に霊獣まで?」
「グルルル。それだけではないぞ。あの巨体な隕石を撃ち落とす者‥‥‥‥も開放され、動きだしたのだ」
『ヘル・デアル』大館・外部
「あのあの様な大きな隕石‥‥‥‥‥本当に撃ち落とせるのですか?」
「あぁ、なんとかなる‥‥‥‥‥成る程。この『契約者』の魔力はなかなかのモノなのだ?ラファエル」
「えぇ、一級品よ!それよりもあの巨大隕石を早く!」
「分かっている!‥‥‥‥神明魔法‥‥‥‥‥標的は夜空に‥‥‥‥‥神明・回帰‥‥‥‥『オリオン・ウルアンナ』」
一閃の光が『ヘル・デア』の地上から放たれた。
その光は『ヘル・デア』を破壊しようと堕ちてくる隕石へと当たった。すると隕石の内側が凄まじい勢いで崩壊を初め、光の粒子となって消えていくのだった。
「ご主人様‥‥‥‥‥隕石が消えていきます」
「‥‥‥‥‥あぁ、どうやら間に合ったみたいだな。ウリエルまだ動けるか?」
「は、はい!魔力はもうありませんが、なんとか‥‥‥‥いけます!」
「なら‥‥‥‥‥行こうか、シリウスの所へ‥‥‥‥‥アイツとの闘いを終わらせて、この『ヘル・デア』を開放しよう」
「はい、ご主人様」
「グルルル!我輩も居るのを忘れるなよ。契約者よ、グルルル」




