輝星決戦・〖星は煌々たる主を思い、土は地上の民を思い願う〗No.9 三種の恒星
「此処へ来た貴様の真の目的は分かった‥‥‥‥分かったが貴様程度の魔力総量と神煌具に頼りきりの力量では、あの者達は見向きもせんぞ」
「‥‥‥‥‥今の状態じゃな。だがな、契約者になって貰うなんて幾らでも方法があるんだよ!『智光・徳行』」
『聖楯・智天聖棍』の先端が光。その光は棒状の柱形となり幾つも放たれる。そして、シリウスを押し潰さんと彼の眼前目掛けて落ちて行くが‥‥‥‥
「先程は取り乱したが‥‥‥軌道は単純。聖星魔法『赤の輝・犬星』」
ズズズズズズズズ‥‥‥‥
雷雲立ち込める上空の夜空から赤色の小さな流星が降ってくる。その流星はシリウスの周囲の光の柱形にぶつかって行く、そして、一瞬だけ光ると『聖楯・智天聖棍』から放たれた光の柱形を消してしまった。
「何だ?その技‥‥‥‥‥『聖楯・智天聖棍』の攻撃を相殺したのか?いや、一緒になって消えた様に見えた?」
「『ラグナログ(神々の黄昏)』での序列が低いからといって弱いとは限らないのだ、偽りの少年。それを補う力が備えてこその大アルカナ‥‥‥‥‥いや、そもそも、私は序列の拘りは薄い。こんな夜天の星空輝く夜にわざわざ侵入してくれた事、感謝する。聖星魔法『青の輝・犬星』」
シリウスはそう告げると新たな魔法を詠唱した。
すると再び上空から小さな流星が飛来し、俺の方へと向かって落ちてくる。
「赤色の流星の次は青色の流星?シリウス‥‥‥‥『地球』のシリウス座の和名は確か『犬座』だったか?‥‥‥‥‥‥ヘスティア地方独自の魔法系統は『星』だったか?ウリエル」
「え、えぇ、そうですが!そんな事よりも、ご主人様!あの攻撃を防がなくては『ヘル・デア』の方々に被害が出てしまいます」
「ん?あぁ、それはもう対策済みだよ。転移魔法『『座礁転移』』」
落下してくる青色の流星の前に転移魔方陣が表れ、青色の流星を呑み込んで消えていく。そして、シリウスの真上に転移魔方陣が表れその中から消えた筈の流星が姿を表した。
「また、転移魔法か!偽りの少年。芸が無いとはこの事だな!!貴様。聖星魔法『白の輝・犬星』」
三回目の詠唱。その詠唱後、夜空から一閃の白い光がシリウス目掛けて一直線に降ってくる。
一回目、二回目の流星とは異なり、最速で落ちてくる白い流星。その流星はシリウスの真上に展開された転移魔方陣と赤色の流星へとぶつかり合い相殺されてしまった。
「シリウス‥‥‥‥いや、シリウスさん」
「何だ?偽りの少年」
「その聖星魔法は何処で覚えたんだ?」
シリウスは俺が質問した途端、顔を歪めた。
「‥‥‥‥‥何だ?突然、今は闘いの最中だぞ。偽り」
「列島大陸の北には『星読』って言われる民族が居るんだ」
「‥‥‥‥‥‥‥‥何故、貴様がそんな事を知っている?あんな、魔法世界の極東の『民族』をしている?」
反応した?やっぱり多少なりとも関係があるのか?‥‥‥‥‥このエウロペ大陸のことわざに列島大陸や『地球』のことわぞが時偶使われている事がある。何故か?それは多分、『地球』か列島大陸に住んでいた人達が此方の大陸にやって来て、それを伝えたからではないだろうか?
「神代から現代に時代が移り変わる際、魔法世界『アリーナ』の幻想大陸を含む、七大大陸の言語やルールは創造神により、各大陸を代表する神々に委ねられたのは知っているか?」
「それは誰もが知っている事だ。その神達の恩恵により、各大陸は一大陸につき一つの言語を習得すればその大陸で生活で暮らせる様にと神々が決められたのだ。それが『世界の理』の判断だった。その恩恵のお陰でこのエウロペ大陸では〖七聖語〗さえ、習得できれば、多種族や魔種を問わずに意志疎通が行える様に神々が決められたのだ」
「じゃあ、此処からが本当の質問だ。シリウスさん。その神々がこのエウロペ大陸に済む人達に与えた〖七聖語〗の中に『地球』のことわざや列島大陸の言語が時偶、含まれているんだ?それにアンタが使っている聖星魔法の詠唱には何で『星読』の詠唱が交ざっているんだ?それだけじゃない、『星』の魔法は確か、列島大陸独自の魔法体系じゃないのか?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
「沈黙したな‥‥‥‥‥‥‥そういえば、昔、魔術院にいた時、こんな文献を読んだな。〖遥か極東より来たりし流浪の星達は、我等が大陸の極西へと至らん。その星達賢く、七聖の一神を助け、認められん。神は喜び、その地の一つを与え住ませる〗」
「‥‥‥‥‥‥‥続けろ」
「あぁ、〖その星達は歓喜し、七聖を崇め、列島より学びし知、力、言語を各地に教え。学びを広めん。だか、七聖の一神はそれを許さず、星達から同胞、場所、命を奪い滅ぼす〗」
「‥‥‥‥‥‥‥あぁ、そうだまだ続くのですね。ヘスティア様」
「ヘスティア様だと?お前ら敵対してるんじゃ‥‥‥‥」
「黙れ!その続きを述べろ」
「はぁ?何、キレてんだ!アンタ」
「良いからやれ!その文献の話を終えるまで私に攻撃する事は許さない!これは貴様と私の『契約』である」
「なっ!何を勝手な事言ってんだ!‥‥‥?!なっ!『世界の理』との契約が成立してる?‥‥‥‥はぁ?こんなアホな理由で?意味が分か‥‥‥」
「分からなくて良い。良いから続けろ。『上』の者も久しぶりに聞きたいのだろう。『ロマの語り』を」
「‥‥‥‥‥‥『ロマの語り』だと?意味が‥‥‥」
ズキンッ!
「クソッ!何でこんな些細な事で『世界の理』が‥‥‥‥‥」
「早くしろ!偽りの少年」
「‥‥‥‥たくっ!分かったよ!〖七聖のまた、一人、星達に助けを受けた一神は怒る。『死の大地』の神の蛮行を、星達は青年と子供の二人、彼等の片方は異界の者であり、彼は自身の知を多の者に教え、与えた他方に感謝され、星の賢者とも呼ばれるようになった〗」
「‥‥‥‥‥‥‥‥あぁ、そんな時もあったな。クィリヌス」
「‥‥‥‥‥‥‥まだかよ。〖一神を覗いた残りの六神は星の賢者に謝罪し、星達から与えたられた知と文化を後世まで引き継ぐと固く誓い、彼と子供に不老の一端を授け、自由を与えたのだ。そして、蛮行おかした一神は遠き、北の大地へと追いやられ。長き悠久の時へと押し込まれん〗」
「‥‥‥‥‥そうだ。●●は今もあの地で苦しませた」
「〖その後、彼と子供は六神と話し合い、姿を消したのだった〗‥‥‥‥‥これで終わりだ。シリウスさん」
「あぁ、見事な語り部だったぞ。偽りの少年。創造神も久方に聞く語りに耳を傾けたのだろうな」
「何でこんな事で創造神が‥‥‥‥‥‥‥‥よしっ!身体も動くな」
「‥‥‥‥‥‥‥‥まぁ、今更隠しても意味が無いがな。私がその星の賢者だ。今更の少年よ」
「だろうな。アンタの反応を見てればなんとなく分かるよ。あーっ!顎がガクガクする‥‥‥‥アンタの場合は地球からの〖転生〗か?」
「いや違う。〖転移〗だ‥‥‥‥‥来たのは神代初期の頃か」
「〖転移〗だって?‥‥‥‥(俺と一緒か?)‥‥‥‥転移する前に生きてた時代は分かるか?その顔だと日本じゃないよな?」
「私が居た時代はネロ陛下の暗黒の時代にだな‥‥‥‥」
「ネロ?歴代ローマ皇帝の『ネロ』か?」
「おぉ、貴様はネロ陛下をしているのか?今、どうなされている!お元気なのか?」
「うおっ!いきなり近づいくるな!」
敵である筈のシリウスは嬉しそうな顔を浮かべ、俺へと近づいて来る。
あ俺は咄嗟に武器を構え、距離を取る。
「そんな事より、ネロ陛下はどうしているのだ!答えろ!偽りの少年よ!」
コ、コイツ。段々、図々しくなってきてないか?これでも本当に『ラグナログ(神々の黄昏)』の一員なのか?
「俺が生きてる時代にはもう亡くなってるよ」
「何?亡くなっているだと?‥‥‥‥‥そんな」
「‥‥‥‥‥色々あったみたいだけど。地球の世界の歴史に大きく名を刻んだ凄い人だったのは覚えてるよ」
「‥‥‥何?‥‥‥‥‥そうかネロ陛下は後世に名を残せたのか‥‥‥‥そうか。それは良かった。汚名返上できたのですね。ネロ陛下」
ヤバイ方のだけどな‥‥‥‥‥知らぬが仏だな。黙とくか。いや、それよりも、この際だ。気になったもう一つの事も聞いておくか。
「シリウスさん」
「何だ?私は今、干渉に浸っているんだが」
「そう、それだよ!それ!干渉に浸るたか、汚名返上とか、日本のことわざだろう?何でローマの時代からこっちに『転移』して来たアンタがそんなことわざ知ってるんだ?」
「ん?ことわざだと?」
「こっちはネロ陛下について教えてやったんだ。アンタも俺の質問に対して答えるべきだと思うんだけど?」
「あ、あぁ、これは‥‥‥‥‥列島大陸に居た時、一緒に転移して来た『ヨル』という日本人に教わってだな‥‥‥‥‥むっ‥‥‥‥どうやら、この事については他言無用の様だな。列島大陸の『星国』の呪印により、これ以上の事は話せないようだぞ。偽りの少年」
「‥‥‥‥‥‥‥そうか、なら良い」
『ヨル』?‥‥‥‥日本人?‥‥‥‥それに『星国』の呪印‥‥‥‥‥以前、あった蓬莱様は言っていた。和国は今、大変だと‥‥‥‥‥それと何か関係があるのか?
「‥‥‥‥‥‥偽りの少年。私の我儘に耳を傾けてくれた事を感謝する‥‥‥‥‥これを受け取れ」
シリウスはそう言うと俺に何かを投げつけた。それを俺は右手でキャッチする。
「ん?星形の‥‥‥‥魔法石か?」
「闘いが終わる前に渡しておく、それは語り部を達成した事への褒だ‥‥‥‥‥‥この場での私の運命は〖星占〗で占ったがどっちに転ぶか不確かだったのだ。だから、勝敗が決まる前に渡しておこう」
「‥‥‥‥‥『死神』がくれた物と似ているな」
「死して尚、というやつだ。貴様は残り‥‥‥‥『恋人』『悪魔』『隠者』の三つを保有しているのか」
「保有?三つ?アルカナの事か?」
「だが、言うことは効くまい。ブレインズは優しい男だから分かる。私は‥‥‥‥今は『星の賢者』の側として、接しているから渡せるか‥‥‥‥‥●●●●●の【教皇】は黒く染まっている」
「黒く染まっている?あの男がか?」
「『節制』のルシファーや『星』の私はは上手く隠れてやり過ごしいるがな。【教皇】様は違うのだ。あれは最早、歠まれ始めている。アルカナNo.9『隠者』の暴走の様にな」
「『隠者』?ベルフェゴールとジャックの事か?」
「‥‥‥‥‥‥それ以上は教えられん。貴様の語り部とネロ陛下の後世についての教えに対する〖対価〗として、此処までは渡し、教えを与えたまで‥‥‥‥‥さぁ、再開しよう。偽りの少年。七聖―女神―と我等が『ラグナログ(神々の黄昏)』の戦争を!」
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